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第1部 本

社会

日米首脳会談(山口航)

『日米首脳会談-政治指導者たちと同盟の70年 (中公新書 2834)』2024/12/23
山口 航 (著)


(感想)
 米国14人、日本28人の首脳による150回に及ぶ日米首脳会談を追うことで、70年以上にわたる日米関係をじっくり描いている本で、主な内容は次の通りです。
まえがき
序 章  首脳会談とは何か―重層的な拡がり
第1章 「参勤交代」の時代―日米安保体制の成立
1 幕開け―吉田とトルーマン、アイゼンハワー 
2 「日米新時代」と安保改定―岸とアイゼンハワー 
3 「イコール・パートナーシップ」― 池田とケネディ、ジョンソン
4 沖縄返還と「密約」― 佐藤とジョンソン、ニクソン
第2章 首脳会談の定例化―冷戦と負担分担
1 大統領初来日とサミット体制―田中・三木とニクソン、フォード
2 ガイドラインと「同盟関係」―福田・大平・伊東・鈴木とカーター、レーガン
3 「ロン・ヤス」関係―中曽根とレーガン
4 昭和のおわりと冷戦の黄昏―竹下・宇野とレーガン、ブッシュ
第3章 同盟の漂流と再定義―ポスト冷戦と日米摩擦
1 「湾岸戦争のトラウマ」―海部とブッシュ
2 通訳不要の首相―宮澤とブッシュ、クリントン
3 北朝鮮核危機と経済摩擦―細川・村山とクリントン
第4章 蜜月と短期政権―「戦時の同盟」
1 アフガニスタン戦争とイラク戦争―小泉とブッシュ
2 不安定な日本政治―安倍・福田・麻生とブッシュ、オバマ
3 対等性の模索―鳩山・菅・野田とオバマ
第5章 安定政権の登場―自由で開かれた国際秩序を求めて
1 「希望の日米同盟」―安倍とオバマ
2 揺らぐ国際秩序―安倍とトランプ
3 「ハブ」としての日米首脳会談へ―菅・岸田とバイデン
終 章 変化する首脳会談と日米同盟
あとがき
付 録 日米首脳会談一覧(1951~2024年)
   *
「終 章 変化する首脳会談と日米同盟」には、日米首脳会談の歴史的な流れについて、次のように書いてありました。
「(前略)本書がたどってきた日米首脳会談はどうか。その歴史を俯瞰すると、相互に関連する三つの変化が進行していることがわかる。
 第一に、頻度の増加である。(中略)
 第二に、首脳会談の議題の対象が拡がり、その内容が多様化している。
 これは、キャッチ・フレーズの変遷に表れている。冷戦の頃は「イコール・パートナーシップ」や「相互信頼と相互依存」など、日米二カ国の関係を謳った表現が目立った。首脳会談での主な議題は二国間の懸案だったからである。(中略)
 冷戦後には「グローバル・パートナーシップ」が掲げられるようになり、世界的な課題について両国が協力する姿勢を強調するようになる。つまり、両国は互いの言動ばかりを見る関係ではなく、ともに同じ方法を見る関係となっていったのだ。
 第三は、関連するアクターの拡大である。これは内容の多様化と密接に関係する。(中略)
官僚でも、外務省や国務省以外の省庁の関与が増えてきた。」
「他方で、こうした三つの変化が進行していることの弊害も出てきている。日米首脳会談や日米同盟が複雑になり、全貌が見えづらくなっていることだ。」
   *
 ……ここに総括されているように、最初の頃の日米首脳会談は、敗戦国・日本が勝者の米国にいろんな面で頼っていたような印象がありました。
 その一方で、日本政府は戦後すぐから、意外なほどのしぶとさで、懸命に米国と対等になろうとしてきたようにも感じます。なのに、今や経済大国として世界で大きな存在感を示しているはずの日本が、いまだに米国の従属国なのではないのかという自虐的な思いも抱かずにいられません。その点については、この本でも……
「日本の民主党政権は「対等な日米関係」を標榜し、安倍晋三も米国との対等な関係を目指した。対等が叫ばれ続けていること自体が、日米関係が対等ではないと考えられている証左である。日本は米国に従属しているとの言説はつねに一定の支持を得ている。(中略)
 ここで忘れてはならないのは、日米双方ともに不満はありつつも、総体として有用性を見出しているからこそ、同盟が存続していることだ。ともに損をするような同盟は持たない。」
 ……経済大国としてすっかり成長したはずの日本は、今後も、米国との「真に対等な同盟国」を目指し続けていくのでしょう。
 そして近年の日米関係について、「3 「ハブ」としての日米首脳会談へ―菅・岸田とバイデン」では……
「近年、日本は、日米同盟にくわえ、韓国や豪州、インドなどとの協力関係を強化している。これは首脳会談にもあてはまる。先日のバイデン来日でも、日米豪印の首脳会議が開かれている。
 また、二〇二三年八月一八日には昼食会を含め約二時間、キャンプ・デーヴィッドで日米韓首脳会談が開催された。バイデンが同地に外国首脳を招くのも、三首脳が国際会議以外の場で集ったのもこれが初めてである。」
 ……今後の日本にとって、米国が最も大事な「同盟国」であることは間違いないと思いますが、このように米国以外の他国との協力関係を強化していくことも、とても大事だと思います。それは「同盟国」米国にとっても、利益があることではないでしょうか。
 そして本書の「終章」は、次の文章で締めくくられていました。
「たとえ「フィクション」と揶揄されようとも、各レベルで信頼を涵養し、それを広くアピールすることが求められている。すなわち、日米同盟は、日米首脳会談をはじめとして、信頼関係が重層的に積み上げられて構成されているのだ。
 信頼しているから同盟があるのではないし、何の苦労もなく、たまたま信頼関係ができあがっていたのでもない。しばしば信頼を損ないつつも、同盟を維持する努力を示すことで、能動的に信頼関係を築くべく尽力してきたのである。信頼が行動を形成するだけでない。行動が信頼を形作るものだ。
 そうであるからこそ、日米同盟の運営に責任を持つ両国の首脳は、わざとらしかろうがファーストネームで呼び合い、信頼関係を構築しようと奮闘しているのである。
 同盟がある限り、この努力はこれからも続く。」
   *
『日米首脳会談-政治指導者たちと同盟の70年』……日米首脳会談が両国の努力で継続されてきたこと、二国間の関係がじょじょに変化してきたことを、歴史的事実を通して知ることができる本で、とても勉強になりました。みなさんも、ぜひ読んでみてください☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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『日米首脳会談』