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第1部 本
生物・進化
海の変な生き物が教えてくれたこと(清水浩史)
『海の変な生き物が教えてくれたこと (光文社新書)』2024/12/18
清水 浩史 (著)
(感想)
「地味で一癖ある」「厄介者」なのになぜか惹かれる10の海の生き物を厳選、その滋味深い魅力をカラー写真とともに存分に紹介してくれる本で、主な内容は次の通りです。
はじめに
第1章 モテなくても構わない
我が物顔で生きる――ゴマモンガラ
嘲笑されても動じない――オコゼ
第2章 仲睦まじい悦びと悲しみ
閉じられた空間の夢と現実――カイロウドウケツ
穴を追い求める生き方――カクレウオ
第3章 「会社員」として生きるには
肩の力を抜いて生きる――コバンザメ
まじめに、賢明に生きる――ホンソメワケベラ
第4章 偏見をはね除ける
長くて美しい、厄介な棘――ガンガゼ
花のような肛門のような――イシワケイソギンチャク
第5章 スカスカの愛おしさ
逃げも隠れもしない――カイメン
裏側は不思議な姿――カブトガニ
おわりに
*
冒頭は表紙の魚、ゴマモンガラ。「餡子をぱんぱんに詰め込んだ「たい焼き」のような風貌の魚」で、次のように書いてありました。
・「(前略)ゴマモンガラという魚は、醜さを隠さない。
すべてをさらけ出して生きているように思える。ブサイクにも映る不気味な外見、旺盛な食欲、気性の荒さ、攻撃性、落ち着きのなさ……と、嫌われそうな要素を何ら恥じることなく、包み隠さず生きている。まるで理性をすべて脱ぎ去って、情感だけで生きているように映る。しかし恥じらうことを知らない潔さが、却って美しく感じるから不思議だ」
・「ダイビングやシュノーケリングの愛好者は、ゴマモンガラを「厄介者」として認識していることが多い。水中では余程のことがない限り、たとえサメであってもヒトが襲われることはない。なのにゴマモンガラだけは、不用意に近づくと襲ってくる。いや、そこそこ距離を空けているつもりでも、下手をすると襲ってくる。ゴマモンガラは人を恐れず、オラオラと威嚇してくるのだ。」
*
……ゴマモンガラは、生物だろうが石だろうが何にでも噛みつく激しい気性の魚のようで、水族館の水槽には、ゴマモンガラ以外は何も入れられないようです……うーん、そういう生き方はちょっと寂しいような……でも「それがいい」んでしょう。
続いて、醜いというよりは「ほとんど海底の岩のようにしか見えない」オコゼ。この魚には背びれに強烈な毒があるようです。オニダルマオコゼ一匹の持つ毒性は、大人四人分の致死量にもなり、さばくときには、毒のある背ビレをとり除いた後も、皮の表面からも毒性分が滲み出るので、水で洗い流し続けないと手が腫れてしまうほどなのだとか! でも実は希少な高級魚で、食べると美味しい(上品で淡白な味わい)ようです。
そして他の魚にくっついて生活する「ちゃっかりした魚」のコバンザメ。なんとこのコバンザメを使った漁があるそうです。まずコバンザメの尾の付け根に、長い紐の先をくくりつけておいて、漁師は船に乗って獲物に近づき、紐付きコバンザメをそっと舟から放って泳がせます。するとコバンザメが吸盤で獲物にくっつくので、漁師はコバンザメに結んだ紐を少しずつ手繰り寄せて、獲物を釣り上げるのだとか! この漁は、コバンザメと漁師の間に信頼関係がないと成立しないそうです(笑)。そしてコバンザメは、意外に美味(ハマチのような味)なのだとか。
またスポンジのようなカイメンは、寿命が長いそうです。それだけでなく……
「(前略)カイメンは細胞レベルにまで粉々にしても、すりつぶしても死なないという。やがて細胞が再集合し、またカイメンの姿に戻るという驚異の再生力を持っている。」
「驚くのは、寿命の長さだけではない。
カイメンは六億年以上も前から地球に生息し、地球最古の動物(多細胞動物)はカイメンだとも考えられている。」
……そうだったんだ……。
さらにカブトガニは冬眠するそうです。海で冬眠する生き物がいるなんて初耳でした。
「日本でカブトガニが生息しているのは、瀬戸内海と九州北部の沿岸だ。(中略)
しかも冷血動物であるカブトガニは海水温が下がると、沖合の海底で冬眠するという。水温が高くなる初夏から動き出すようで、カブトガニが活動している時期は限られている。一年の活動は三から六カ月ほどと考えられ、残りの時期は餌も食べずに休眠しているという。」
……「生きている化石」と呼ばれるカブトガニは、不思議な生態をしているんですね……。
『海の変な生き物が教えてくれたこと』……「海と島の達人」が選び抜いた愛すべき10種(ゴマモンガラ/オコゼ/カイロウドウケツ/カクレウオ/コバンザメ/ホンソメワケベラ/ガンガゼ/イシワケイソギンチャク/カイメン/カブトガニ……)をオールカラーで紹介してくれる本で、水族館の水槽をじっくり眺めているような不思議な楽しさが味わえました。生物が好きな方は、ぜひ読んで(眺めて)みてください☆
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『海の変な生き物が教えてくれたこと』