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第1部 本
防犯防災&アウトドア
防災
地震・津波によるメタン湧出とジオハザード(榎本祐嗣)
『地震・津波によるメタン湧出とジオハザード』2023/11/2
榎本 祐嗣 (著, 編集), 株式会社トヨタコンポン研究所 (監修)
(感想)
江戸時代から現在までに起きた大地震や津波をメタンガスに注目して見直し、メタン湧出によるハザードリスクを知らせることで、よりよい防災・減災につなげようと注意喚起している本です。
なお日本の歴史地震に関する資料としては、次のものを利用しています。
・『新収日本地震史料』(東京大学地震研究所、1981-1985)
・『地震に伴ふ発光現象の研究及び資料』(武者、1932)
・『日本被害地震総覧599-2012』(宇佐美ほか、2013)
地震によって解放されるエネルギーは強大で、社会やインフラを一瞬にして破壊し、甚大な被害をもたらします。エネルギーの形態には、力学エネルギーの他に、熱・化学・核・電磁気・光エネルギーがありますが、過去の地震では、発光や電磁気異常の他、火災害も引き起こされてきました。歴史的な地震に関しても、地中からの火焔、海中からの火柱、地震発光・津波発光などの諸現象が記録されていますが、これらに「メタン」が関与している実体が見えてきたそうです。
世界の石油・天然ガスの分布図と世界の地震マップを比較すると、強い関連があるように見え、次のように書いてありました。
「(前略)石油・天然ガスの由来に関しては、太古の生物死骸が海底や湖底に堆積し、地殻変動を受けて適度の圧力と温度の下で分解して生成された、とする有機起源説が主流である。その証拠とされているのが、石油の中に生物によってのみ合成される環状構造のポルフィリン系化合物(バイオマーカー)が多く含まれているということだ。一方、ゴールドは星間物質に大量に含まれる炭化水素こそが起源であるとした。有機起源説の有力な証拠に対しては、無機起源の原油や天然ガスが深部から上昇する過程でバイオマーカー物質を取り込んだ可能性を指摘している。彼は大きな地震が発生すると地震断層内の割れ目を通じて、地表に向かうメタンの通り道ができ、ガスの湧き出し、火炎、地震発光が起きることも述べている。」
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とても驚いたのが、2011年東北地方太平洋沖地震で撮影された「白く泡立って岸に寄せて来る津波」の白い泡の正体は、海底に胚胎するメタンではないかという話。次のように書いてありました。
「メタンを胚胎するヘドロには有機物に含まれるタンパク質などの物質が泡膜に混じり海面活性剤のような作用をする。このため割れにくい泡が形成される。このメタン泡がガレキ集合体の下面や隙間に滞留すると大気に触れる表面積が減るため、海水に濡れて難燃物となっていたガレキは、メタン泡を抱え込んだ引火しやすい可燃物のガレキに変貌する。」
この地震では、海岸に押し寄せる黒い津波と白い津波が撮影されていますが、それは「砂交じりのヘドロを巻き上げた黒い津波」と、「ヘドロに胚胎するメタンを巻き上げた大量の白い泡」だろうと言うのです。しかも……
「沿岸海底からヘドロとともに巻き上がったメタン泡が津波風に乗って沿岸に達する。泡の衝突/破壊・ミスト発生やガレキ摩擦帯電により発生した静電気エネルギーがメタンを着火・燃焼させたことが起因し、さらに他の可燃物に引火して大規模火災に至った」
……と推定しているようで、「火」がなくても燃えることがあるようです……。
そこで気になるのは、「日本でも豊富なメタンハイドレート層が南海トラフに沿って拡がっている。」ことで……
「南海トラフ巨大地震のXデーはいずれやって来る。この自然災害の難局を乗り越えて日本近海に賦存する豊富なメタンハイドレートの資源回収を、資源小国日本の未来図の中に描きたいものだ。」
……と書いてありました。
「第4章 地下から火炎噴出と火災 -歴史地震史料からたどる-」の章扉には……
「天然ガス表面徴候(上ガス)と呼ばれる現象は、その地下にガス鉱床が存在する証拠になる。資源として採取できればこのうえないのだが、賦存量が少なく採掘しても経済的に見合わないとか、地盤沈下する懸念があって採掘が禁止されると、地下にとどまる天然資源はジオハザードにつながるやっかいモノとなる。」
……とありましたが、例えば善光寺地震が起きたときには、長野市の北で石油ガスが湧きだし、噴出した天然ガスに火がついて一帯は“新地獄”と呼ばれたそうです。
さらに、それ以上に気がかりだったのが、安政江戸地震や大正関東大震災でも、天然ガスによる火災が起きていたと推定されていたこと! 実は、最近の研究で、東京湾の海底の浅い地層にメタンが大量に賦存していることが音波調査やガスの採取・分析から明らかになっているそうで……
・「南関東ガス田は千葉県を中心に茨城県、埼玉県、東京都、神奈川県の地域に広がっていて、その面積は約4300km2、埋蔵量は7360億m3に及ぶと推定されている。かつては東京で天然ガスの生産も行われていた。」
・「東京都内における天然ガスの採取は、地下水汲み上げ(揚水)が地盤沈下を招いたことから、それを避けるため1972年12月末をもって全面的に停止となった。そして1988年6月には、一部海上を含む東京都の平野部全域が鉱区禁止地域に指定され現在に至っている(東京都地質調査業協会技術委員会、2014)。現在は千葉県の茂原地区を中心とする九十九里浜沿岸部が、国内最大の天然ガス生産地である。」
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……ということも書いてありました。
「天然ガス火災を防ぐ根本的な対策は、メタンを常時観測する中で異常湧出域を見つけて、地下ガスを抜くことであろう。いま都心は地盤沈下を懸念してガス採取が禁じられているが、潅水をくみ上げることなく地盤沈下を押さえガスのみを抜くことは現在の技術で十分可能ではなかろうか。」
……だそうですが、東京の場合は高層ビルが林立しているので、たとえ「ガスのみを抜く」だけでも地盤への影響が心配です。その一方で、もしも関東で大震災が起きたら、地下の天然ガスはどうなるんだろう? ということも心配でなりません。
『地震・津波によるメタン湧出とジオハザード』……かなり気がかりな情報満載の本でした。あまりにもスケールが大きい問題で、どうしたらいいのか分かりませんが、今後の防災計画には、「天然ガス」問題も追加すべきではないかと考えさせられました。防災に興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
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『地震・津波によるメタン湧出とジオハザード』