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第1部 本
自己啓発・その他
廻り道の進化(ワグナー)
『廻り道の進化: 生命の問題解決にみる創造性のルール』2024/12/3
アンドレアス・ワグナー (著), 和田 洋 (翻訳)
(感想)
アルゴリズム、生命、ヒトの心、社会にまで通ずる深遠な共通性がある……数理進化研究の第一人者のワグナーさんが、理論生物学的な視点から、生物進化の創造的側面を解き明かしている本で、主な内容は次の通りです。
プロローグ
第1章 進化の地形図
第2章 分子生物学革命
第3章 地獄を経験することの重要性
第4章 遺伝的適応度地形での瞬間移動
第5章 ダイヤモンドと雪の結晶
第6章 創造マシン
第7章 心の中のダーウィン
第8章 彷徨う者すべてが迷うわけではない
第9章 子どもから文明まで
エピローグ メタファーを超えて
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「訳者まえがき」には、次のように書いてありました。
・「本書では、「創造性」は困難な問題を解決することと定義される。」
・「(前略)自然選択=競争だけでは、困難な問題を解決することはできない。時には坂を下り「廻り道」をする勇気も必要だ。
この深遠な洞察は、我々の社会への提言で締めくくられる。「多様性」「自律性」「失敗を受け入れる寛容性」。これらの重要性には多くの人がすでに気づいている。しかし、なぜそれが大切なのか、創造性に通底する深遠な共通性が教えてくれる。」
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そして「訳者あとがき」には……
「(前略)適応度地形を視覚的に印象づけながら、進化の創造性において、自然選択とは別の力が働くことを述べたのが本書である。自然選択により、適応度を上げるような変化だけをしていると適応度の小高い丘に捕まってしまい、身動きがとれなくなる。しかし、我々を取り巻く生命は、小高い丘を乗り越えて、もっと高いピークに上っているように見える。だからこそ我々は生命に魅了される。そうであれば、生命の進化には、丘を下るような仕組みが備わっているに違いない。」
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そして本書の「プロローグ」には……
・「(前略)良いものを残し、悪いものを捨てるということが、自然選択の基本である。(中略)常に坂を上ろうとする自然選択は、ピークが1つしかない地形の中では優れた戦略である。しかし、ピークが2つ、数個、数百個、あるいは数え切れないほどあるような複雑な地形では、自然選択は不完全であるばかりか、大失敗するかもしれない。(中略)自然選択は、今の策よりも劣る策をえらぶことができない。つまり坂を一歩も下りることができないのだ。そして、エベレストの頂上のはるか手前のピークで立ち往生してしまう。」
・「(前略)遺伝的浮動は、進化にとって同じくらい重要である。さらに「遺伝物質の交換」という別のメカニズムによって、進化する生物は適応度地形の中で大きな跳躍をし、最高点のピークに向かう途中の谷を越える。」
……自然選択だけでなく、遺伝的浮動や遺伝物質の交換などのような、ある意味「廻り道」もすることで、生命は着実に進化してきたようです。
そして「第9章 子どもから文明まで」では、競争にさらし続ける教育現場、失敗の許されない環境では、低いピークから逃れられないことを指摘した上で、個性を生かし、失敗を許して低いピークから一度下ることができ、多様な考えを蓄え、様々な考えが交歓する社会こそ、高いピークに到達できる創造的な社会であると言っています。
次の言葉が心に残りました。
・「現在の超競争的な教育システムの最大の問題は、失敗に対して罰則を課し、標準化されたテストを極端に重視することである。」
・「超競争的な教育モデルには、適応度地形が唱える原則、すなわち、ピークに達するには、選択と判断が棚上げされた自由な探索の時間が必要だと言う視点が欠如している。」
・「(前略)多様性を重んじ、失敗を許容し、個人の自律性を保護する。それが創造的社会への道だ。」
そして最後の「エピローグ メタファーを超えて」では……
「すでに私たちは、自然選択に従うロボットで山を登るという戦略だけでは、困難な問題を解決できないことを理解している。複雑な適応度地形を征服するには、自律的な探検家が必要である。DNAの突然変異を起こした生物であれ、人間の開拓者であれ、さまざまな方向に向かって多様な解決策を生み出す。遠く離れたピークへの到達には、遺伝物質の交換や遠隔のものに関連性を見つけるようなメカニズムが必要なのだ。そして、遊びや遺伝子浮動のような、適応度地形の多くの谷を下り、劣った解決策を通過して、それを足がかりにして、より良いものへ向かうメカニズムも必要である。(中略)
カギはバランスだ。厳しい選択と失敗への寛容さ、厳格さと遊び心、収束思考と発散思考、権威と自律性、マインドフルネスと心の迷走、教育の深さと広さ、小さな一歩と大きな跳躍、ダーウィニズム1.0に比べれば、この洞察は革新的といえるだろう。」
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『廻り道の進化: 生命の問題解決にみる創造性のルール』……自然選択は常により適応的な方向への原動力ではありますが、さらに上の最適解を目指す探索過程では、時に適応的でないプロセスを経由する必要があることを教えてくれる本でした。
進化のたどってきた道筋を知ることで、創造性や問題解決力を高めるためのヒントが得られることに気づかされ、とても参考になりました。みなさんも、ぜひ読んでみてください☆
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『廻り道の進化』