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第1部 本

医学&薬学

疲労とはなにか(近藤一博)

『疲労とはなにか すべてはウイルスが知っていた (ブルーバックス)』2023/12/14
近藤 一博 (著)


(感想)
 疲労研究をリードする近藤さんが、新研究で見えてきた「疲労の驚くべき実像」を明らかにしてくれる本で、主な内容は次の通りです。
序 章 疲労を科学するには
第1章 生理的疲労とはなにか
第2章 慢性疲労症候群 病的疲労の代表格
第3章 うつ病 究極の病的疲労
第4章 新型コロナ後遺症 見えてきた病的疲労の正体
第5章 ついにすべてがつながった
第6章 人類にとって疲労とはなにか
   *
「序 章 疲労を科学するには」によると……
「一般的に使用される用語である「疲労」には2つの意味が含まれています。疲れたという感覚である「疲労感」と、疲労感の原因となる「体の障害や機能低下」です。」
 ……「疲労感」と「体の疲労」は違うもののようです。
「第1章 生理的疲労とはなにか」によると……
「(前略)生理的疲労では、「疲れた」という感覚、すなわち「疲労感」は脳の中で生じます。体内で産生された「炎症性サイトカイン」という物質が脳に入って、脳に働きかけることで生じるのです。」
 ……そして「疲労感」と「疲労」は……
「疲労感……ISR(統合的ストレス応答)によって産生された炎症性サイトカインが脳に伝わって生じる感覚
疲労……ISRを引き起こすeIF2αのリン酸化による細胞の停止や細胞死
 疲労の原因はISRと呼ばれるストレス応答であり、それを引き起こすのがeIF2αのリン酸化ということになるわけです。」
……「疲労感」と「疲労」は科学的に見ても違うものだったんですね! 驚きです。
 また「体の疲労」にも2種類あるようで……
「仕事や運動などで発生し、1日休めば回復するような短期的な疲労を、生理的疲労といいます。
 これに対し、何カ月も続き、少々休んだくらいでは回復しない疲労は、病的疲労と呼ばれます。」
 ……そして「第3章 うつ病 究極の病的疲労」では、うつ病は実は病的疲労であり、その原因は脳内炎症説が最有力とみられること、近藤さんたちは、うつ病を引き起こす原因とみられる「SITH-1」を発見したことなどが解説されていました。
 さらに「第4章 新型コロナ後遺症 見えてきた病的疲労の正体」では、倦怠感、うつ症状、ブレインフォグ(記憶力や集中力の低下)という病的疲労の症状と同じような症状を示す新型コロナ後遺症によって、疲労研究がさらに進んだことが紹介されています。ここでは……
・新型コロナウイルスのS1タンパク質を鼻腔内で発現させたS1マウスが脳内炎症を起こすのは、アセチルコリンが不足し、コリン作動性抗炎症経路(いわば「消化器」)が阻害されるからである。
・脳内炎症のもととなる「火種」は、体内からの炎症性サイトカインである。
 ……などが分かってきたようです。
 そして「第5章 ついにすべてがつながった」によると……
「(前略)疲労について、以下のような姿が明らかになってきました。
1)疲労感の原因は、脳が炎症性サイトカインにさらされることである(これは生理的疲労も病的疲労も同じ)
2)脳が炎症性サイトカインにさらされる原因は次の通りである。
  生理的疲労……末梢組織で産生される炎症性サイトカイン
  病的疲労……脳内の炎症
3)新型コロナ後遺症の脳内炎症の原因は、脳のコリン作動性抗炎症経路の障害である。
   *
 また次のようなことも……
・新型コロナ後遺症の治療薬として臨床治験中のドネペジル(注:商品名は「アリセプト(認知症治療薬)」)が抗うつ薬となる可能性がある。
・生理的疲労と病的疲労を分けるものは脳内炎症が起こっているか否かであり、その違いを生むのはコリン作動性抗炎症のしくみが正常に働いているかどうかである。
・生理的疲労が過度に強くなると、病的疲労に移行することがある。自分がどちらの疲労かは、唾液中のHHV-6(注:ヘルペスウイルス)を測定すればわかる。
   *
『疲労とはなにか すべてはウイルスが知っていた』……普通の人の体内にも潜んでいるヘルペスウイルス(HHV-6)を調べると、病的疲労状態にあるかどうかが分かってきたようで、いろんな意味で驚くほどタイトル通りの本でした。
 疲労が「炎症」によるものなら、「炎症」を軽減する、あるいは予防することもできるのかなー、でも疲労は「体を休めろ」という体からの通知なのだから、炎症だけを薬物などで抑えるのは良くないのでは……などと考えてしまいましたが、「第6章 人類にとって疲労とはなにか」には、ちゃんと次のように書いてありました。
・疲労そのものをなくそうとすることは危険である。SITH-1や、うつをなくそうとすることも得策ではない。
・人類は疲労やうつとうまくつきあっていくしかない。
   *
 ……疲労やうつとは、やっぱり今後も、うまくつきあっていくべきなのでしょう。
『疲労とはなにか すべてはウイルスが知っていた』……疲労の科学的研究最前線について新しい事実をたくさん知ることが出来て、とても興味津々でした。興味のある方は、ぜひ読んでみてください☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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『疲労とはなにか』