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第1部 本
社会
カナダ(山野内勘二)
『カナダ―資源・ハイテク・移民が拓く未来の「準超大国」 (中公新書 2835)』2024/12/23
山野内 勘二 (著)
(感想)
留学・移住先として日本での人気は高いのに、実情はあまり知られていないカナダ。食糧やエネルギー豊かな資源大国、ノーベル賞学者を育んだAIや量子技術の開発国、地球温暖化対策の先進国、そして移民立国など、多様な側面を持つカナダの光と影を紹介してくれる本で、主な内容は次の通りです。
はじめに――知られざる未来の「準超大国」の実力
序 章 カナダ――150年余の歩み
第一章 資源大国の実力―食料からエネルギー、鉱物まで
1 自給率230%を誇る世界の食料庫
2 エネルギー――国家存続の核心
3 重要鉱物―温暖化と地政学の交差点
コラム① 恐竜と石炭と古生物と
第二章 知られざるハイテク先進国―AIから量子まで
1 AI国家戦略
2 量子を制する者が世界を制す
3 最先端技術をビジネスへ
コラム② シルク・ドゥ・ソレイユ
第三章 移民立国の理想と現実
1 移民国家カナダの誕生と発展
2 現在の移民制度の概要
3 「過剰な移民」という世論をめぐって
コラム③ 柔道とカナダ
第四章 地球温暖化対策への挑戦と苦悩
1 トルドー政権の取り組み
2 グリーン・エコノミー最前線
3 地球温暖化対策をめぐる国内の難題
コラム④ ジョニ・ミッチェルの音楽的冒険と予言
第五章 ミドルパワー外交の地平
1 カナダ外交を読み解く3つの視点
2 南の巨象・アメリカ合衆国
3 インド太平洋戦略
コラム⑤ メープル・シロップ
終章 日加関係の「新しい時代」へ
*
「あとがき」には次のように書いてありました。
「本書は、筆者が二〇二二年五月に駐カナダ大使として赴任して以来の実感と体感を綴ったものである。」
……駐カナダ大使として実際にカナダに住み、各州を自らの足で回ったからこそ得られるリアルな実情を語ってくれていて、とても興味津々でした。
「はじめに――知られざる未来の「準超大国」の実力」では、ロシアによるウクライナ侵略で、日本の肥料が危機的状況に陥ったとき(日本は肥料に不可欠な塩化カリの全量を輸入していて、その1/3はロシア・ベラルーシ産だった)、輸入の6割を占めていたカナダから追加輸入できたことで救われたそうです。
またカナダはAIの実力も凄くて、現代AIの革新技術であるディープ・ラーニングを開発したヒントンさん(英国・米国からカナダのトロント大学に移り、その25年後に画像認証の世界大会で優勝)に、カナダが長期的な視点で研究支援を行ったことで、ディープ・ラーニングは花開いたそうです。
さらに……
「(前略)G7メンバーであり、TPP(環太平洋パートナーシップ)協定の原加盟国。NATO(北大西洋条約機構)に属し、最強の情報収集能力を誇る米英系の機密情報ネットワークであるファイブ・アイズの一員でもあるカナダは、日本にとって信頼できるパートナーだ。」
……なるほど、確かに。
「第二章 知られざるハイテク先進国―AIから量子まで」では、ディープ・ラーニングだけでなく、AI半導体については……
「(前略)日本の半導体産業の未来を賭けたラピダスとカナダのスタートアップ企業テンストレントが最先端のAI半導体の開発について連携すると発表したのだ。」
また量子コンピュータについても……
・世界で初めて商業化された量子コンピュータを製造・販売した会社:D-Wave
・ザナドゥ社:光量子コンピュータ
・フォトニック社:光でネットワーク化されたシリコンチップを利用した量子コンピュータの構築
……などが実力を発揮していて、さらに富士通とトロント大学の戦略的連携についても……
「(前略)翌一八年一一月には、新会社「富士通インテリジェンス・テクノロジー(FIT)」をカナダ西海岸のバンクーバーに設立。富士通全体のAI関連ビジネスを統括しグローバルに展開するための事業を開始した。
富士通といえば、AI関連特許公開件数は日本一だ。スーパーコンピュータ「富岳」に参画し、世界最速クラスのコンピューティング技術を持つ。」
……カナダには「カナダ先端研究開発機構(CIFAR)」があり、これは利益があるかどうかわからない未知の領域の探求を支え続けていているそうです。AIのヒントン教授もその支援のおかげで、ディープラーニング技術を進展させることができました。
そして最も驚かされたのが、「第三章 移民立国の理想と現実」。カナダの移民政策にはかつては白人至上主義などの問題がありましたが、六七年に次の「移民のポイント制度の導入」を行うことにしたことで、劇的に変化したようです。
「(前略)これは、移民選別に当たって、カナダの経済成長に寄与できるか否かを判断材料とするものだ。年齢、言語能力、カナダ在住の家族の有無、職種、学歴などを点数化するものだ。(中略)これにより、出身国・地域や民族による移民の選定は完全に終わった。」
……カナダでは四人に一人が外国生まれの移民一世(米国は一四%)、さらに二〇四一年には、移民一世とその子供が総人口の五二.四%を占めると試算されているそうです! 驚きですね!
また「第四章 地球温暖化対策への挑戦と苦悩」によると、意外にも北極に近いカナダは、地球温暖化の影響を強く受けているのだそうです。
「実は、緯度が高いほど、低緯度の地域よりも温暖化のスピードが速いことは、これまでの世界各地の観測から判明している。」
……これは「極域増幅」と呼ばれるもので、気温の上昇により、山火事、洪水、熱波、干ばつなどの極端な現象が増えているそうです。
そして「第五章 ミドルパワー外交の地平」では、カナダは……
「エネルギー自給率一八〇%、食料自給率二三〇%、東西は大西洋と太平洋と、南は同盟国のアメリカ合衆国、北は北極である。天然の要塞に守られた広大な国土は、資源と食料に恵まれている。その意味では、自己完結的に生きていこうと思えば生きていける国である。」
そんなカナダの外交を貫く三つの重要な視点としては……
1)米国:対カナダ直接投資において米国は四四%(続いて英国七%、日本四%)
2)理想:アパルトヘイト外交で見せた「理想の力」
3)移民:ウクライナ侵攻で積極的にウクライナ支援(カナダには約一五〇万人のウクライナ系カナダ人がいる。本国とロシア以外で世界最大のウクライナ・コミュニティーがある)
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……なんと国連軍が作られたのは、カナダのピアソン外相の主導だったようで、カナダは米国の影響を強く受けながらも、理想主義的な外交を貫く力もあるようでした。
そして最後の「終章 日加関係の「新しい時代」へ」には……
・「日本とカナダは、民主主義、法の支配、人権等々の基本的価値を共有し、互いに大切な経済パートナーであり、ともにG7、G20、TPP、APECなどのメンバーだ。」
・「厳しい国際情勢の中、日本が平和と繁栄を維持していくための基本戦略は四つだ。第一に、日本の国力の増進。これには、国防力、経済力、技術力、ソフトパワー等が含まれる。第二に、日米同盟の強化。そして第三に、同志国、友好国との一層の関係強化。第四に、国際的なルールメイキングへの参画だ。
この基本戦略を踏まえれば、困難な時代を生き抜く上で、カナダとの関係強化は必然だ。」
・「(前略)カナダの戦略は、日本の国家安全保障戦略とも整合的だ。特筆すべきは二〇二二年一〇月に日加両外相が共同発表した「自由で開かれたインド太平洋に資する日加アクションプラン」だ。ここには1)法の支配、2)平和維持活動、平和構築および人道支援・災害救援、3)健康安全保障および新型コロナウイルス感染症への対応、4)エネルギー安全保障、5)自由貿易の促進および貿易協定の実施、6)環境および気候変動、の優先六分野での具体的な行動が記述されている。」
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カナダは、「自由・民主主義・人権重視をわが国と共有する外交パートナー」としての存在感を高めています。アメリカのトランプ政権が不透明な動きを続けるなか、日本にとっては、カナダとの友好関係を着実に進めていくことが大事だと感じました。
『カナダ―資源・ハイテク・移民が拓く未来の「準超大国」』……カナダについて総合的に紹介してくれる本で、とても参考になりました。カナダに興味がある方はもちろん、国際社会のことを知りたい方も、ぜひ読んでみてください☆
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