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第1部 本
科学
図解入門よくわかる最新 次世代電池の基本と仕組み(齋藤勝裕)
『図解入門よくわかる最新 次世代電池の基本と仕組み』2024/6/27
齋藤勝裕 (著), 小宮紳一 (著)
(感想)
日本発のペロブスカイト太陽電池をはじめ、全固体電池、半固体電池、リチウム金属電池、ナトリウムイオン電池、バイポーラ型電池、レドックス・フロー電池など、世界各国で開発競争が激化しているリチウムイオン電池の次にくる「次世代電池」について図解してくれる本です。
次世代電池を解説してくれる本ですが、第1章には「化学電池の原理と仕組み」があるので、電池がどんなものかについての復習もできます。
「金属の溶解では、溶液中に放出された金属原子は陽イオンとなります。このとき放出された電子を電線を通じて外界に流れ出させる装置が電池なのです。」
……「イオン」や「イオン化傾向」が電池の肝なんですね。
また乾電池のように充電が出来ないものを一次電池。充電を繰り返すことが出来るものを二次電池といいます。これは「可逆反応」の可否が肝になります。
そして次世代電池として注目を集めているのが、「全固体電池」。これは、電解質(イオンの通り道。通常は液体を使う)を固体に変えてしまうものです。
あれ? 乾電池は全固体電池じゃないの? と思った方がいるかもしれませんが、乾電池は一見固体に見えますが、実は電解質に水溶液を用いているので、固体電池ではないそうです。
また太陽電池はすべて固体の電池ですが、太陽電池のことを全固体電池とは言わないのだとか。
「現在、一般に「全固体電池」というのは、「新しいタイプのリチウムイオン二次電池」のことを」いいます。新しいタイプというのは、これまでのリチウムイオン二次電池と違って電解質が液体でなく、固体であるということです。つまり電池内に液体がなく、正極と負極の間に固体の「電解質セパレータ層(従来のセパレータとは異なり、固体電解質がセパレータの役割も果たします)」のみがある電池のことをいうのです。」
……そうだったんだ。
この全固体電池には、形式による分類では「バルク型」と「薄膜型」があり、固体電解質の種類による分類では「セラミックス型」と「硫化物型」があるようです。
全固体電池には、電極と電解質の界面抵抗が大きいという短所がありますが、高い安全性、作動温度範囲が広い、エネルギー密度が高い、劣化しにくいなどの素晴らしい長所があって、次世代電池として期待されているようです。
これまであまり聞いたことがなかったのですが、とても有望に思えたのが、「半固体電池」。これは、リチウムイオン二次電池の電解質を完全に固体化するのではなく、液体と固体の中間にとどめようという電池で、「ゲルポリマー型」、「クレイ(粘土)型」、「液体添加型」があるそうです。
実は全固体電池では、充放電にともなう活物質の体積変化により、固体電解質と活物質の間に隙間が発生してしまい、特性低下を引き起こす問題があるそうです。「液体添加型半固体電池」は、それに対応するため、柔軟性のない固体電解質に流動性のある液体材料やゲルポリマーを少量添加し、生じてしまった隙間を埋めてしまおうという考え方の電池だそうで……「柔軟と言うかその場しのぎ的な考え方です」と書いてありましたが……この方が実用的なのでは? と思ってしまいました(笑)。
さらに太陽電池に関する詳しい解説も、とても勉強になりました。
「太陽電池は、太陽の放つ可視光線(波長が400~800nm)のエネルギーを電気エネルギーに変換する装置です。」
そしてその構造は、なんと4層の板状のものを重ねただけ! しかも最上下の2枚は電極なので、太陽電池本体はn型半導体とp型半導体の2枚だけなのだとか。太陽電池では「半導体」が肝となるようです。
この太陽電池の製造には、「両半導体の電子が、原子レベルで接していなければならない」ほどの高い精度が必要になるだけでなく、超高純度のシリコンが必要になるそうです。超高純度のシリコンにするためには、莫大な電力を使って通常のシリコンから電気分解で酸素を除くことが必要で、しかも単結晶でなければならない……そんな凄い技術が使われていたんですね……。太陽電池の性能(価格)にばらつきが大きいのは、どの程度の精度で作ってあるかが違うからなのでしょう。
太陽電池も次世代のものを目指して、さまざまな工夫がなされているようで、「多接合型太陽電池(タンデム型太陽電池)」、「化合物半導体太陽電池」、「量子ドット太陽電池」、「有機薄膜太陽電池」、「有機色素増感太陽電池」などが紹介されていました。
最も有望に感じたのが、日本発の「ペロブスカイト太陽電池」! ちなみに「ペロブスカイトは結晶構造の一種」だそうです。
・「ペロブスカイト化合物の多くはほとんど電気伝導性を示しませんが、ヨウ化スズ系は不純物ドーピング(添加)によって光電動性を示すことが知られています。」
・「ペロブスカイト型は薄いガラスやプラスチックの基板上に液体を塗り、焼いて作ります。液体を塗るのは印刷技術を使うため従来の太陽電池の半額で製造できます。」
……などと書いてありました。
しかも「性能的には、光があれば必ず発電する」そうで、シリコン型太陽電池がほとんど発電できない曇りの日でも、部屋の照明でも発電できるそうです。また、両方から光を当てることができるのでシースルー型にもできるし、特定の洗剤を使って洗えば全部洗い流せるので、リサイクルが容易という利点もあるのだとか。
ただし、まだ「湿気に弱い」、「熱に弱い(150度が限界)」、「環境によくない鉛を使っている」などの解決すべき課題も残っているようですが……今後に大いに期待したいです!
『図解入門よくわかる最新 次世代電池の基本と仕組み』……次世代電池はもちろん、電池全般について総合的に解説してくれる本で、とても勉強になりました。みなさんも、ぜひ読んでみてください☆
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