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第1部 本
工作(紙以外)
図解入門 最新金属の基本がわかる事典[第3版](田中和明)
『図解入門 最新金属の基本がわかる事典[第3版] (How-nual visual guide book)』2024/10/19
田中和明 (著)
(感想)
金属の性質、加工、生産、表面処理、鉄鋼やアルミニウム、レアメタルといった素材ごとの特徴、さらにナノ構造制御などの最新トピックまで網羅している金属の総合的な入門書です。
「I 金属基礎編」では、金属の性質などについて、詳しい解説がありました。そのごく一部を紹介すると次のような感じ。
・「金属の特徴は、良く延び(延性)、良く拡がり(展性)、熱と電気を良く内部を通し(良導性)、表面が光っている(金属光沢)ことです。これら4つの特徴を持つ元素を金属と分類しています。」
・「金属結合とは、化学結合モデルで考えると、規則正しく並んだ陽イオンの間を、放出された自由電子が動き回り、静電気引力(クーロン力)で結びつけられています。このため、金属から金属原子を取り出すと、陽イオンになります。
電子軌道を考える量子化学モデルで考えると、原子の方向性のもつ電子軌道どうしが干渉し合い、原子核が空間に規則正しく並びます。原子の集団がつくり上げる電子軌道上で動き回る自由電子が原子の集団を結びつけます。これが金属結合です。
いずれのモデルでも、金属の原子核(陽イオン)は、規則正しく並びます。これを結晶構造と呼びます。電子軌道の方向性は、元素の種類や温度が変われば異なります。したがって、結晶構造も、元素の種類が異なったり温度が変化すると異なります。」
・「(前略)金属結合は金属の延性と展性に大きく寄与し、金属結合の仕方による結晶格子構造の差異が、金属どうしでの延性や展性の差を生み出しています。」
・「金属の硬さは、金属の結晶構造と欠陥の入り具合で決まります。金属の種類と、製造方法、温度などが硬さに影響します。」
この後は「金属加工編」、「金属素材編」、「金属製造編」、「金属を取り巻く環境編」と続き、金属について総合的にじっくり学ぶことが出来ます。
また随所にコラムもあり、例えば「柔らかい鉄(科学的視点)」という記事では……
「実は鉄って本当はむちゃくちゃ柔らかいってことがこの数年で分かってきました。(中略)最近、99.9999%の超高純度鉄が精錬できるようになりました。そうした鉄を調べてみると、ものすごく柔らかくて、さびなくて、延展性がある、まるで黄金のような性質になりました。」
……という驚きの事実を知ることができました。
これまでの鉄でも、鉄鉱石から99.999%の純度まで不純物(炭素)をとり除いてあったのに、「さびやすいし硬い」ものだったのです。だからそれが鉄の性質だと思われてきたのに、さらに純度を上げたら違う性質を示した……金属って、本当に不思議なものなんですね……。金属の中で鉄の利用率が圧倒的(全金属生産量の98%は炭素を含んだ鉄である鉄鋼)ということを考えると……この超高純度鉄は、今後、私たちの周囲で使われている金属加工物に、何か大きな変化を起こしてくれるのかもしれません。ちょっと、わくわくしてしまいました。
そして最後の「金属を取り巻く環境編」では、最近の金属技術トピックスとして、摩擦接合、自己修復金属、生体医療金属、ハイエントロピー合金の4つが紹介されていました。
そのうちの「自己修復金属」は……
「金属の配線の周囲に、ナノサイズの金属粒子を分散させた液体やゲルが配置された構造になっています。金属配線が伸びたり曲がったりして断線すると、断線部のみに、配線に印加されている電圧で電界が発生し周囲の金属ナノ粒子が集まります。これが電界トラップ現象です。集まった粒子が断線部を修復します。」
……というものだそうです。これ、すべての配線に使って欲しいほど素晴らしい技術ですね!
また「生体医療金属」では……
「整形外科や歯科医療では、生体内での反応で毒性元素を溶出させないことを主眼に開発が進み、骨の置換ではヤング率が近いチタン材料を中心に研究開発が行われてきました。最近では生体機能置換だけではなく、生体機能再建のための再生医療素材として、生体親和性に優れた金属素材開発が進んでいます。表面修飾や生体吸収性・多孔質金属として、マグネシウム合金の血管拡張ステントへの利用例があります。
骨再生利用分野で、骨配向化アダプティブマテリアルの話題があります。細胞接着は、人工材料と生体との相互作用の起点で、組織再生を支配する最重要因子です。(中略)骨再生医療に金属表面加工技術が不可欠になっています。」
……このような医療技術の向上で、健康寿命が延伸していくことに期待してしまいます☆
『図解入門 最新金属の基本がわかる事典[第3版]』……金属の性質、加工、生産、表面処理など金属について総合的に解説してくれる事典でした。すごくぶ厚い本なので読むのは大変ですが、「事典」なので、一気に読むというよりは必要な部分だけを読むという使い方になるのだと思います。金属の基本を学びたい方は、ぜひ読んで(眺めて)みてください。
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『図解入門 最新金属の基本がわかる事典[第3版]』