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第1部 本

工作(紙以外)

「もの」はどのようにつくられているのか? 改訂版(Lefteri)

『「もの」はどのようにつくられているのか? 改訂版 ―プロダクトデザインのプロセス事典 (Make:Japan Books)』2024/12/3
Chris Lefteri (著), 田中 浩也 (監修), 水原 文 (翻訳)


(感想)
 さまざまな大量生産の方法を、豊富な図解と写真で解説してくれる本です。
 紹介される技法は、吹きガラスなどの伝統的な技術から、射出成形などの大量生産の基礎となった技術、さらにCNC切削加工やステレオリソグラフィ(光造形)などのデジタルファブリケーション技術まで、約130にもわたります。
 各項目では、代表的なプロダクト、必要な投資、加工速度、精度、そして持続可能性などが紹介され、リファレンスのように使用することも可能です(なお改訂版では、接合の章、最新のデジタルファブリケーションの手法の追加、解説図の追加や改良などが行われています)。
「序文」には次のように書いてありました。
「本書は、分かりやすい図解と、プロセスの結果である代表的なプロダクトの紹介を通じて、「加工」や「成型」についての網羅的な説明を届けてくれる最良の教科書である。」
 ……まさにその通りの本で、例えば「電子ビーム切断(EBM)」と「レーザー切断」の項目では、それぞれ……
・電子ビーム切断:「(前略)EBMは、高エネルギーの電子ビームをレンズによって収束させ、非常に高スピード(高速の50~80%)で部材の特定の領域へ照射することによって、材料を熱して溶解させ、蒸着させることによって行われる。」
・レーザー切断:「(前略)光線を高度に収束させることによって1平方センチメートルあたり数百万ワットのパワーを生み出し、これによってその経路に存在する材料を溶かすことによって加工を行う。」
 ……とありました。レーザー切断に比べて電子ビーム切断は高精度ですが、真空容器が必要だという短所があるようです。
 ここで紹介したのは、この加工方法のごく一部で、実際には各加工方法に2~3ページの説明(写真やイラスト)があります。
 大量生産には、いろんな加工法があるんだなーと驚きながら、興味津々で読み進められました。製品の写真や加工法のイラストがあるので、分かりやすいと思います。
 この本をじっくり読み込むと、身近な製品がどんな方法で作られているのかを推測できるようになって、ウィンドウショッピングで新しい楽しみ方ができるかも……もっとも約130も加工方法があるので、とても覚えきれそうにありませんが……(苦笑)。
 とてもわくわくさせられたのが、改訂版で追加されたという「7 多様なデジタル・ファブリケーション」の各項目。
 私たちにもなじみ深い「インクジェット印刷」には、新しい使い方があるようで、例えば、「CMYKインクの代わりに食用となる液体を使い、デンプンから作られた食べられる紙に印刷したものを使った食材」さえも印刷(?)できるそうです(笑)。さらに驚きだったのが……
「この技術の最も風変わりな応用例の一つは、世界中の科学者たちのさまざまなチームが開発している、「改造された」インクジェットプリンターを使った生体組織の作成だろう。このプロセスは、隣同士に置かれた細胞は融合するという昔から知られた知識に基づいて、熱可逆性ゲルを細胞の足場のように使って生体組織を作り上げる。」
 ……えええー! 生体組織まで印刷できるとは……3Dプリンターで生体組織が印刷(?)できることは知っていましたが、インクジェットプリンターでも出来るんですね……。
 また「ステレオリソグラフィ(SLA)」では……
「(前略)部材は、CADファイルによって駆動されるレーザーが感光性樹脂の槽の中をスキャンして、部材の層を積み上げて行くことによって製造される。」
 そして「微小金型の電気鋳造」では、重さがわずか数ミリグラムで数ミクロンの厚さしかないディテールを持つ部材を作り上げることが出来るそうです。
 さらに「3Dニッティング」では、CADデータを使って複雑な形状が単一のプロセスで編み上げられ、複数の生地を縫い合わせる手間もなく、継ぎ目なく一体となった衣服や製品ができ上がるのだとか。
 ……すごく未来感のある加工技術を、たくさん知ることが出来ました☆
 これらの加工技術の他にも、「8 仕上げテクニック」では……
<装飾的>
昇華型印刷、真空蒸着、フロック加工、酸エッチング、レーザー彫刻、スクリーン印刷、電解研磨、タンポ印刷、スエード皮膜、箔押し、オーバーモールディング、サンドブラスト加工
<機能的>
i-SDシステム、加飾成形(フィルムインサート成形)、自己修復性皮膜、撥水性皮膜、セラミック皮膜、粉体塗装、リン酸塩皮膜処理、溶射、表面硬化、高温塗装、厚膜蒸着、保護皮膜、ショットピーニング、プラズマアーク溶射、亜鉛めっき、バリ取り、化学研磨(別名:電解研磨)、蒸気メタライジング、デカール印刷、ピクリング(酸洗い)、付着防止皮膜(有機)、付着防止皮膜(無機)
<装飾的・機能的>
クロムめっき、陽極酸化処理、収縮包装、ディップコーティング、釉薬がけ、ほうろうがけ
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 ……などなど、多くの仕上げテクニックの概要も知ることが出来て、これらもとても参考になりました。
『「もの」はどのようにつくられているのか? 改訂版 ―プロダクトデザインのプロセス事典』……まさにタイトル通りの事典で、ここで紹介した他にも「接合の手法」の概要解説や用語解説、索引もあり、プロダクトデザイナーや、プロダクトデザインを学ぶ学生、そしてメーカーで働く人にとって、とても参考になる記事が満載だと思います。
 素人工作レベルではない凄い加工技術だらけですが……工作好きにはとても楽しい本でした。興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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『「もの」はどのようにつくられているのか? 改訂版』