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第1部 本

科学

たった1日でわかる46億年の地球史(ノール)

『たった1日でわかる46億年の地球史』2023/10/5
アンドルー・H・ノール (著), 鈴木和博 (翻訳)


(感想)
 私たちの身の回りにある山や海、動植物、空気や水はいったいいつ、どのように誕生したのか? 地球という奇跡の星の誕生から現在に至るまでを、地質学、自然史学的な視点で詳しく教えてくれる本で、主な内容は次の通りです。
1. 化学と地球 - 地球はどのように生まれたのか
2. 物質と地球 - 地球はどのように形成されたのか
3. 生命と地球 - 地球に広がる生命
4. 酸素と地球 - 呼吸できる空気はどこから来たのか
5. 動物と地球 - 大型化する生命
6. 植物と地球 - 植物と動物の世界
7. 災害と地球 - 絶滅が生命の形を変える
8. 人間と地球 - 地球を変える人類

「1. 化学と地球 - 地球はどのように生まれたのか」は、約46億年前、天の川銀河の「腕」の部分に、水素原子とわずかなガスと氷、そして微細な鉱物が集まった雲があった……というところから始まります。これがしだいに凝縮して星雲に、さらにその中に太陽が出現、そして地球が……という流れに。
 ここでは、「地球の時計」として使われている「ジルコン」について詳しく知ることができました。ジルコンが結晶化するとき、その構造に微量のウランが取り込まれますが、このとき鉛のイオンは大きすぎるため取り込まれないのです。ウラン238の半減期は44億7000万年、ウラン235の半減期は7億1000万年。ジルコンができたとき、そこに鉛は一切入ってなかったので、ジルコンの中から見つかる鉛は、ウランの放射性崩壊によるものということになります。これを測定すると地球の時計が得られるのだとか……そういうことだったんですか。ジルコンの分析から、「地球が生まれたばかりのころに地殻の分化が始まった」ことが分かるそうです。
 また「地球の水の起源」についての話も興味津々でした。地球の水の起源になったものは、水素と重水素の比率が同じはずなのに、地球の水の起源といわれてきた彗星は、この基準に一致しなかったそうです。彗星に由来する水は地球の10%程度で、それ以外の水、大気、炭素は、地球全体を作り出した隕石(主にコンドライト隕石)由来なのだとか。
「2. 物質と地球 - 地球はどのように形成されたのか」では、プレートテクトニクスについて詳しく知ることが出来ました。
プレートテクトニクス説は、数十万年ごとに180度反転してきた地球の磁場が記録されている大西洋の海洋性地殻の磁気構造(縞模様)が、中央海嶺をはさんで対称形になっていることで確認されたのですが、この模様を巻き戻すことで、1億8000万年前くらいまでは、その当時の地球がどうなっていたのかを知ることができるそうです。次のように書いてありました。
「(前略)海底の広がり、つまりプレートテクトニクスの仕組みを理解するうえで、数十万年ごとに反転を繰り返す地球の磁場と岩石の磁気が重要になることはすでに述べた。それだけでなく、この磁気の向きを活用すれば、大陸の動きを追うこともできる。たとえば、ある大陸が赤道近くから北緯30度の地点まで動いたとしよう。すると、途中で吐き出された火山性堆積物に含まれる鉱物の磁気の向きから、その移動経路を突き止めることができる。(中略)30億年以上前に、現在のオーストラリア北西部にあたる場所にあった古代の地形が縦方向に移動していたことを突き止めた。移動の速さは、現在ボストンがヨーロッパから離れているのと同じくらいだった。
 これは、プレートテクトニクスが早い段階から始まっていたことを強力に支持する証拠だ。」
 ……地学の本に、昔は超大陸があったなどの太古の大陸と海洋の状況の想像図があるのは、こういう知見に基づいていたんですね……。
「3. 生命と地球 - 地球に広がる生命」では生命の誕生などが、「4. 酸素と地球 - 呼吸できる空気はどこから来たのか」では、シアノバクテリアなどの光合成で大量の酸素が生成されて、地球環境や生命に大きな影響を与えたことなどが、さらに「5. 動物と地球 - 大型化する生命」、「6. 植物と地球 - 植物と動物の世界」と、地球と生命のダイナミックな変遷が紹介されていきます。
 そして「7. 災害と地球 - 絶滅が生命の形を変える」では、恐竜絶滅で有名な白亜紀末の大量絶滅が巨大隕石の落下で起こったこと、それ以外の何度かの大量絶滅は火山の大噴火や地球寒冷化によるものだったことが説明されます。次のようにも書いてありました。
「(前略)現在の生物の多様性は、集団遺伝子だけでなく、大量絶滅と環境変化のあらゆる要素を反映したものだ。新生代の地球に哺乳類が広がったのは、単に集団遺伝子だけのおかげではなく、恐竜が生き残れなかった白亜紀末の災害を生き延びた哺乳類がいたからでもある。」
 さらに「8. 人間と地球 - 地球を変える人類」では、火を操り、道具を使うようになった人類が、生態系を、さらには地球環境をも変えていることが書かれています。そして、「今後の大きなテーマは地球温暖化」として、次のように書いてありました。
「(前略)確かに、40億年にわたる進化によって作られた自然の世界を尊重しつつ、社会全体の未来も守るというのは、極めて難しいことだ。さらに、何もしない年が積み重なるほど、果たさなければならないことは増え、残された時間も少なくなる。しかし、世界全体でこの問題に取り組めば、安全で健全な世界を後世に残すことができる。」
 ……確かに、そうですね。地球温暖化を少しでも遅らせるために、微力であっても努力したいと思っています。
そして締めくくりには次の文章が……
「今、あなたが立っているのは、40億年にわたって物質と生命が作りあげてきた遺産の上だ。あなたが歩いているのは、かつて三葉虫が生息していた古代の海底だったり、巨大恐竜が歩いていたイチョウの丘だったり、マンモスが支配していた極寒の平原だったりした場所だ。そういった生物たちが支配していた世界を、今は人間が支配している。人間が恐竜と違うのは、過去を理解し、未来を思い描けることだ。人間が受け継いだ世界は人間だけのものではない。人間には責任がある。世界のこれからは、あなたの手に委ねられている。」
 ……確かにその通りだと思います。
 ただ……この文の前には「(前略)かつてアメリカとその同盟国は、極めて有能な人材を集めて爆弾を開発させた。同じようにして、孫の世代によりよい世界を残すこともできるかもしれない。」と書いてあり、これは(核?)爆弾を称賛しているようにも聞こえなくもなくて……なにか「環境保護」とは大いに矛盾しているようにも感じてしまいました……。
 ……それはともかく、全体としては、地球の歴史を通して環境保護の重要性を学べたので、読む価値はあったと思います。
『たった1日でわかる46億年の地球史』……内容が充実しているので、1日で読み切るのはちょっと厳しいような気がしますが、地球の歴史を分かりやすく学べる本でした。みなさんもぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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