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第1部 本

ビジネス・その他

ものづくり興亡記(杉本貴司)

『ものづくり興亡記 名も無き挑戦者たちの光と影』2024/3/5
杉本貴司 (著), 藤本秀文 (著), 湯前宗太郎 (著)


(感想)
 大手企業から露骨なさげすみを受けながらも、したたかに生き抜き、国内トップにまで上り詰めた下克上企業・今治造船。悲願の国際旅客機計画に挑みながらも志半ばで潰えたMRJ。確かな技術力でオンリーワンの座に就いた「変態工場」=日立金属・安来工場がはまった落とし穴。周回遅れの日本の次世代モビリティの中で輝きを放つホンダ「空飛ぶクルマ」……ものづくりの現場を知る取材記者による迫真のノンフィクションで、主な内容は次の通りです(なお、本書は2021年10月から2年近くにわたり日経産業新聞で連載した「ものづくり記」をベースに大幅に加筆したものだそうです)。
第1章 今治造船・本社工場―瀬戸内から世界へ、造船一族の下克上
第2章 三菱重工業・名航―MRJはなぜ飛べなかったのか、空の名門の挫折
第3章 日本製鉄・君津製鉄所―宿敵・中国を育てた伝道師たち、「鉄は国家」のDNA
第4章 シャープ・亀山工場―日の丸家電の栄光と凋落、液晶「オンリーワン」の驕り
第5章 日立金属・安来工場―「ハガネの変態工場」、検査不正はこうして生まれた
第6章 ホンダ・和光研究所①―「異質であれ」、F1の救世主が紡いだ哲学
第7章 ホンダ・和光研究所②―再び空へ、未来のモビリティーを求めて
   *
「第2章 三菱重工業・名航」では、国産旅客機MRJ開発の経緯を詳しく知ることが出来ました。MRJにはワクワクしながら期待していたので、最終的に2020年に終了することが決まったときには、とてもがっかりしてしまいましたが……技術だけでなく、欧米にルールを支配されている「型式証明の取得」が困難だったんですね……。この顛末を知って、なんだか暗い気持ちになってしまいましたが……開発者の方が「これまでの経験を空飛ぶクルマで役立たせる」と言っているようなので、それに期待したいと思います。「空飛ぶクルマ」は、私たちの生活を便利に豊かにしてくれるだけでなく、安全保障上でも、とても役に立ちそうなので……。「第6、7章 ホンダ・和光研究所」によると、ホンダも空飛ぶクルマを作っているようなので、それにも期待しています☆
 また「第5章 日立金属・安来工場」では、日立金属よりも歴史が長い「たたら製鉄」の雲伯鉄鋼合弁会社として誕生した安来工場が、リーマンショックで巨額赤字を計上してしまった日立製作所から、デジタル基盤のルマーダと親和性が悪いことだけでなく検査不正も行ってしまったことを理由に、売却されてしまったことが紹介されていました。
 仲間意識が強く技術力も誇っていた安来工場が不正を行ってしまったことについて、調査委員会がまとめた報告書の次の一文には、考えさせられました。
「その根底には、当社製品がスタンダードであるという意識があり、顧客よりも自分たちの方が製品をよく理解しているという意識があった。自社のものづくりの歴史と、それに伴う技術力の高さに対する自信、製品ブランドに対する高いプライドがあった」
 ……製品の品質に自信があるから、いちいち検査する必要はないと考えて、品質検査に必要な試験を行わずに架空の数字を入力していたようですが……これは、やっぱり許されないことだと思います。
 それでも高い技術力は確かにあるのですから、この反省を活かして今後も頑張っていって欲しいとも願っています。
 そして「第6、7章 ホンダ・和光研究所」では、次の文章が心に残りました。
「常に未来から逆算していずれ必要になる技術を創り上げていくことは、大津に言わせればエンジンの未来を作ってきたホンダの研究所の流儀そのものだ。」
 ……ホンダの和光研究所(本田技術研究所)も、さまざまな荒波に襲われて乗り越えてきたようですが、今後もこのホンダの研究所の流儀で未来を作っていって欲しいと思います。
『ものづくり興亡記 名も無き挑戦者たちの光と影』……日本の中小企業や大企業の「ものづくり」現場の興亡記。どの会社も多くの苦難のなかを、したたかに生き抜いてきているようです(今も、もがいているようですが……)。成功より失敗の話が多かったように感じましたが、むしろ心に残る教訓を学べたと思います。
 また造船業、航空・自動車産業、製鉄業、家電業など、さまざまな業界の実態も垣間見ることが出来て、日本の会社の強みと弱みを感じることも出来ました(各社の社内の様子も興味津々でした)。
 日本の「ものづくり」を未来につなげるために、どうすればいいのか……みなさんも、ぜひ読んでみてください☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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『ものづくり興亡記』