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第1部 本

生物・進化

生物の絶滅と進化の謎に迫る(小林武彦)

『GEOペディア 最新 生物の絶滅と進化の謎に迫る』2023/7/25
小林武彦 (監修)


(感想)
 生物の絶滅と進化の謎に迫っているGEOペディアの本で、主な内容は次の通りです。
Chapter 1 生命って何だ?
(生物の定義、進化のプログラム~運のいいものが生き残る!、地球上に生息している生物種と数、生物と無生物の境界線、【COLUMN】 地球生命の進化の歴史)
Chapter 2 生命の始まり
(生命の材料は宇宙からも来た、【COLUMN】 地球以外にもある生命存在の可能性、生命史の最初の一歩「RNAワールド」、【COLUMN】 遺伝子からタンパク質へ~遺伝情報を実行する「セントラルドグマ」、タンパク質の合成工場「リボソーム」、DNAは遺伝子の本体――紙と設計図の関係、【COLUMN】 モーガンは「三点交雑」で染色体上の遺伝子の位置を推定した、DNAの二重らせん構造の発見とヒトゲノム全解読、ミトコンドリアは共生体、【COLUMN】 われわれの中の単細胞「卵と精子」)
Chapter 3 絶滅と進化
(ダーウィンの進化論、フィンチの遺伝子、種とは何か、大量絶滅が教える生物の「絶滅=死」の意味、第1回目 オルドビス紀末の大量絶滅、【COLUMN】 カンブリア紀の奇妙な生き物たち、第2回目 デボン紀後期の大量絶滅、第3回目 ペルム紀末の大量絶滅、第4回目 三畳紀末の大量絶滅、第5回目 白亜紀末の大量絶滅、【COLUMN】 空にも進出した主竜類の子孫、なぜ恐竜は絶滅し、哺乳類は生き残ったのか、恐竜は鳥類として生き残った!、進化は「運のいいもの」が生き残った結果、【COLUMN】日本発の恐竜たち)
Chapter 4 なぜ、生物は生き残れたのか?
(「食うか食われるか」の世界、宿主との「運命共同体」を選択した細菌(バクテリア)、酸素は生物には有害な物質だった!、共生する「腸内細菌」たち、寄生するという選択
・他の生き物へ寄生する「寄生虫」、新たな生存環境を求めて①(腎臓と骨を生み出し、川に適応した魚たち)、新たな生存環境を求めて②(劣勢の魚による偉大な一歩)、新たな生存環境を求めて③(資源の乏しい深海に生息する)、新たな生存環境を求めて④(クジラの先祖はカバだった!)【COLUMN】歌うクジラと海のカナリア、小卵多産戦略で生き残る、イワシが群れる理由とは?、擬態して生き残る、【COLUMN】擬態の達人、毒を持って生き残る、【COLUMN】日本で注意しなければいけないのは?、不思議で多様な生殖能力の獲得、【COLUMN】食べられても生き残るウナギの稚魚、【COLUMN】生物は学習するのか?)
Chapter 5 多様性はなぜ必要か
(始まっている? 6回目の大量絶滅期、【COLUMN】海面上昇によって大きく変わる世界の海岸線、深刻な森林破壊、干潟の消失、急増している絶滅危惧種、【COLUMN】ホッキョクグマは2100年までにほぼ絶滅する?、絶滅のドミノ倒しとボトルネック効果、【COLUMN】 ボトルネック効果・生物種絶滅のキーワード、人類が滅ぼした動物たち(代表的な絶滅種【世界編】)、【COLUMN】危惧される南米大陸の大量絶滅、代表的な絶滅種【日本編】、【COLUMN】 マンモスは人類が滅ぼしたのか?)
Chapter 6 ウイルスとの共存
(新型コロナウイルスからの警告、COVID-19の変異株は強毒化したのか?、感染症と人類の戦い、人獣共通の感染症もある、メッセンジャーRNAワクチンとは?、【COLUMN】mRNAワクチン製造に日本企業が貢献、ウイルスと共存してヒトは進化した、【COLUMN】胎盤を持たないカモノハシ、【COLUMN】ヒトゲノムの完全解読に成功)
Chapter 7 生物はなぜ死ぬのか
(生物のいろいろな死に方、不可逆的な細胞の老化、DNA複製のメカニズム、【COLUMN】免疫や細胞の老化が、がん化のリスクを抑えている、長寿「ハダカデバネズミ」の生き方、性別を決めるY遺伝子が危ない!、ヒトはコンピュータと共存できるのか?、未来に生き残る生物は)

 生物誕生からAIまで……生物の変遷を最新科学の知見をもとに辿っていく本で、知識の総整理・再復習ができて、とても読み応えがありました。フルカラーでイラストや写真が豊富に使われているだけでなく、解説がとても明快で分かりやすかったと思います。
 少なくとも5度発生している地球生命の危機(大量絶滅)は、「絶滅を境に生物相が変化し、新たな主役が登場する。このように大量絶滅は、生物にターンオーバー(新旧交代)を促し、進化・多様性をもたらす起爆装置」となりました。
 またミトコンドリアとの共生については……
「生命誕生以来、20億年もの長きにわたって地球の生命は、単細胞である細菌しかいなかった。そんな細菌が生き残るためには、酸素からエネルギーを効率的に生み出すミトコンドリアと共生し、酸素に満ちた新たな環境に適応する必要があった。
 一方、共生体のミトコンドリアやシアノバクテリアにとっては、自ら餌を求めて動き回る必要もなく、また、敵に襲われることのない安全な場所を提供してくれる宿主とは、お互いに利益を与え合う関係になった。」
 ……などの解説があります。
 とても面白かったのは、「Chapter 4 なぜ、生物は生き残れたのか?」の「新たな生存環境を求めて①(腎臓と骨を生み出し、川に適応した魚たち)」から「新たな生存環境を求めて②(劣勢の魚による偉大な一歩)」。「原始的な魚が川へ進出するために体の仕組みを変えたように、水中に生息していた肉鰭類が陸へ上がるためには、様々な形態的変化が必要だった。」ということで、劣勢の魚たちは、逃げるために、エラ呼吸から肺呼吸への転換、重力に耐える骨格の発達などを起こしたことで「陸上生物の先駆者」となり、両生類や爬虫類、恐竜や鳥類、哺乳類へと進化したという話が、とても面白くて説得力も感じました。
 また驚かされたのが、次のミジンコの生殖戦略。
「(前略)ミジンコは、普段は単体生殖によって卵をつくり、自分と同じクローンであるメスだけの遺伝子を持った子をどんどん産む。
 ところが、個体数の増加や餌の不足、水温の変化、日照時間など生息環境が悪化すると、オスを生むようになり、オスとメスの間で有性生殖を行うのである。
 この悪条件下で誕生した受精卵は耐久卵と呼ばれ、すぐに孵化することはない。乾燥などにも耐えることができ、長い年月が経っても環境がよくなれば孵化することができるのである。ミジンコは環境の変化に応じて巧みな生殖方法を取ることで、種を維持していく戦略を取っているのだ。」
 ……あの小さなミジンコは、ものすごい能力を持っていたんですね……びっくり。
 そしてとても勉強になったのが、「Chapter 6 ウイルスとの共存」。
 例えば「コウモリはなぜウイルスに感染しないのか?」については……
「(前略)コウモリのゲノムを解析すると、自然免疫に関わるI型インターフェロンやナチュラルキラー細胞受容体などの遺伝子を他の動物より多く持っていることがわかった。そのため、コウモリは感染しても発症はしない。しかしその隙間を縫って、生き残ったウイルスが、コウモリの唾液や糞・尿などから、コウモリほど強い免疫を持たない生物に移り、危険な感染症を引き起こしていると考えられている。」
 そして「mRNAワクチンがはたらくメカニズム」については……
「(前略)mRNAはコロナウイルスのいわゆる設計図である。mRNAワクチンの目的は、その表面にある突起物(スパイクタンパク質)を攻撃するための抗体をつくり出すことだが、ウイルス全体を使いたくない。そこで、スパイクタンパク質の設計図部分だけを取り出して、人工的にmRNAを作成するのである。しかしmRNAは非常に壊れやすいため、脂質の膜でコーティングする。これを接種することにより、人体の細胞の中にmRNAが取り込まれて、設計図の情報を基に細胞の中でスパイクタンパク質がつくられるのだ。
 ちなみに、取り込まれたmRNAは体内で分解されるので、ヒトの遺伝子に組み込まれることはまずない。
 スパイクタンパク質が体内でつくられると、体の中で免疫が発動し、抗体が生成され、コロナウイルスが侵入してきたときすみやかに攻撃態勢が整えられる。これを液性免疫という。また、キラーT細胞が直接ウイルスを撃退する細胞免疫も発動するのだ。」
 ……などの解説がありました。ここで紹介したのはごくごく一部ですが、ワクチンについてもイラストを活用して詳細に説明してくれています。
 さらに老化がなぜ起こるかなど、生物の進化だけでなく、我々の健康にも役立ちそうな情報もたくさんありました。
 とても勉強になる『GEOペディア 最新 生物の絶滅と進化の謎に迫る』でした。美しいイラストを眺めながら少しずつ読んでいくと、いつの間にか生物について詳しくなれる素晴らしい本だと思います。みなさんも、ぜひ読んでみてください。お勧めです☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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