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第1部 本

伝記・職業紹介

世界をめぐる動物園・水族館コンサルタントの想定外な日々(田井基文)

『世界をめぐる動物園・水族館コンサルタントの想定外な日々』2023/7/18
田井 基文 (著)


(感想)
 日本でただ一人の動物園・水族館コンサルタントが、その知られざる日常や、世界中で出会った生き物、命を支える人たちについて綴っている本で、冒頭には可愛い動物たちの写真(パンダやケバナウォンバット、ラッコやシャチなど)、飼育員さんと動物の写真など多数のフルカラー写真もあります。主な内容は次の通りです。
第1章 動物園と水族館をめぐる冒険 こんなことをしています
第2章 気がついたら「動物園・水族館コンサルタント」になっていた この仕事にたどり着くまで
第3章 動物園・水族館コンサルタントの仕事は予定通りに進まない 動物園や水族館をつくるときに大事なこと
第4章 舞台裏での奔走劇 生き物を支える人々と裏側の話
第5章 「アンコール」の声がききたくて 動物園・水族館が愛される場所であり続けるために

   *
 まず第1章の「海外からやってきた河童たち」に驚かされました。河童のモデルになった生き物は、なんとカワウソだそうです! え? あんな小さいカワウソが人間と相撲をとれんの? と思ってしまいました。日本でよく知られているのは「コツメカワウソ」という最小のカワウソで、私はこれを連想してしまったのですが、南米には「オオカワウソ」という180cmぐらい大きいものもいるそうです……180cmのカワウソ(絶句)。残念ながら河童のモデルの二ホンカワウソはすでに絶滅していますが、室町時代の辞書『下学集』には、ちゃんと「獺(カワウソ)老いて河童になる」という記述が残っているそうです。
 もちろんこの章の「海外からやってきた河童たち」は河童ではなく、カワウソ。アクアマリンふくしま(福島県)の依頼で、田井さんとそのビジネスパートナーのランゲ博士(ベルリン動物園・水族館の前統括園長)が、独自のネットワークを駆使して世界中の動物園・水族館に相談し、ドイツとオーストリアからカワウソを1頭ずつ譲り受けたそうです。
 このように世界中の動物園・水族館の今の情報を把握しているコンサルタントは、世界中の動物園・植物園をつなぐ「ハブ」のような役割が出来る他、「ほかの動物園ではどうしているのか」「この業界では何が一般的か」などの知識をもとにアドバイスもしているそうです。
 ……それにしても……日本でただ一人の動物園・水族館コンサルタントって、いったいどうしたらなれるの? という感じでしたが……なんと田井さんは大学は法学部で卒業後は広告会社に就職。その後、独立して広告物のプロデュースを開始し、なんやかんやあって上野動物園の看板やポスターを作る仕事を受注したことが、動物園・水族館コンサルタントになることにつながっていったようです。
 でも「動物園・水族館コンサルタントの仕事は予定通りに進まない」ようです。生き物が相手の仕事だから当然なのかもしれません。新設する水族館の展示の目玉としてラッコを展示する予定が、なんとそのラッコの妊娠が判明して展示できなくなることも……その後、無事に出産し、公開もできたそうですが……。
 また仕事は、日本より海外ですることの方が多いそうです(8割は海外なのだとか)。海外での仕事はトラブルもあるようで、その苦労話もありました(涙)。
 そして「第4章 舞台裏での奔走劇 生き物を支える人々と裏側の話」では、次のように、飼育員さんの待遇を心配しています。
「(前略)日本の動物園・水族館は経営面においての基盤が極めて脆弱であることは大きな問題です。」
「動物園・水族館で権限が公平に分配されず、その結果、いい飼育係が育たないことは、動物園・水族館の質の低下を招くことにもつながります。」
 また現在は、野生動物の保護を目的に国際的な取引を規制する「ワシントン条約」や、国内の「鳥獣保護管理法」「動物愛護管理法」もあり、野生から生き物を連れてくるのは基本的に不可能だそうで、動物園や水族館では繁殖に努力しているようです。次のようにも書いてありました。
「(前略)少しでも絶滅の徴候が見えた生き物に対しては、素早く手を打たなければなりません。生き物はあっという間に増える一方で、あっという間に絶滅してしまうのです。
 このような「種の保全」も、動物園や水族館が担う、非常に大切な役割です。」
 ……本当に、そうですね。
 ところでコロナ禍は、動物園や水族館にも経済的な打撃を与えました。これに対して、田井さんたちは、次のような努力をしているそうです。
「コロナ禍で収入を得る手段を失ってしまった動物園・水族館をなんとか助けることができないかと考え、僕が思いついたのがオンライン配信でした。全国の動物園・水族館の生き物たちの様子をオンラインで配信し、視聴料としていただいたお金をその施設に寄付する仕組みです。「KIFUZOO(キフズー)」と名づけたこの取り組みを、2020年の5月からスタートしました。
 休業していても動物園や水族館に完全な“休み”はありません。生き物がそこにいる限り、誰かが世話をしなくてはならないからです。」
 ……動物園・水族館のオンライン配信、素晴らしいと思います。
『世界をめぐる動物園・水族館コンサルタントの想定外な日々』を語ってくれる本でした。これまで1,000以上の施設をめぐった田井さんお勧めの動物園・水族館(日本、海外とも)も掲載されています。動物園・水族館が好きな方は、ぜひ読んでみてください☆

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