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第1部 本

天文・宇宙・時空

宇宙望遠鏡と驚異の大宇宙(鈴木喜生)

『宇宙望遠鏡と驚異の大宇宙』2023/5/8
鈴木 喜生 (著), 縣 秀彦 (監修)


(感想)
 史上初の天文観測衛星から、2040年代までに計画されている宇宙望遠鏡まで、計77機以上を網羅してフルカラーの写真やイラストで詳しく紹介してくれる本で、「恒星の進化」や「宇宙の謎」、「宇宙望遠鏡の基本」についても写真やイラストで分かりやすく解説してくれます。内容は次の通りです。
Chapter 1 ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡、ファーストスターを探す
Chapter 2 宇宙と恒星の超基本
Chapter 3 ハッブル宇宙望遠鏡、人類がはじめて見た宇宙
Chapter 4 宇宙望遠鏡の軌跡 1961-1999
Chapter 5 宇宙望遠鏡の超基本
Chapter 6 宇宙望遠鏡の軌跡 2000-2040s
Chapter 7 宇宙望遠鏡ミッションリスト 1961-2040s

「Chapter 1 ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡、ファーストスターを探す」では、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(以下JWST)が撮影した、超絶に美しい遠い宇宙の写真をたくさん見ることができるだけでなく、JWSTの機能や目的なども詳しく紹介されていました。
JWSTは過去最高の性能を持つ宇宙望遠鏡(赤外線宇宙望遠鏡)で、反射鏡の口径は6.5mと大きく、その画像解像度は、なんと40km先の1セント硬貨、または550km先のサッカーボールを識別できるほど高いそうです……凄いですね!
 その目的は「ファーストスター」を探すこと。今から約138億年まえにビッグバンが発生。ビッグバンから1~2億5000万年が経過したころ、やっと「ファーストスター」が誕生したと推察されているそうで、次のように書いてありました。
「約136億年の昔、136億光年の遠方で発せられた最初の光は、約136億光年かけて地球に向けて飛び続け、いまやっと地球に到達しています。ただし、その間に宇宙は膨張し続けているため、その空間を飛び続けた光の波長も引き伸ばされ、現在の地球周辺では赤外線として観測できるはずです。この赤外線の光こそがJWSTのターゲットなのです。」
 ……なるほど。そしてJWSTは、遠方の星が発したかすかな光(赤外線)を精度高くキャッチするために熱を徹底的に排除しなければならないので、巨大なサンシールドをいつも太陽、地球、月の方向へ向けているそうです。
 またその投入箇所も、次のようにハッブルよりずっと遠くです。
「ハッブルは、地球を周回する軌道上にありますが、JWSTは地球周回軌道ではなく、太陽と地球の重力が生み出す「ラグランジュ点L2」という特殊な領域へ投入されています。(中略)観測に邪魔な赤外線を放射する太陽、地球、月から遠ざかり、寒くて暗い宇宙空間を漂うことで、JWSTは星々が放つ微かな光をキャッチするのです。」
 ……JWSTは素晴らしい宇宙の画像をどんどん届けてくれるので、今後の活躍にも期待したいと思います。
 そして「Chapter 3 ハッブル宇宙望遠鏡、人類がはじめて見た宇宙」では、JWSTの前に、数々の偉業をなしとげてくれたハッブル宇宙望遠鏡を詳しく知ることが出来ました。そのごく一部を紹介すると次のような感じ。
「(前略)1990年4月に打ち上げられて以降、設計寿命である15年をはるかに超えて運用され、人類がかつて見たことのないさまざまな宇宙を撮影し、その謎の解明に貢献してきました。幾度となく機材トラブルに見舞われましたが、スペースシャトルのクルーによる船外活動などによって修理され、2023年時点において、いまも宇宙を観測し続けています。」
「ハッブルは、天体望遠鏡がそのまま宇宙に浮かんでいるような形状をしています。その望遠鏡はリッチー・クレチアン式と呼ばれるタイプの反射望遠鏡であり、集められた光は主鏡の中央後部で1点に集まります。」
 ……宇宙に浮かぶ天体望遠鏡……なんかロマンを感じますね! しかも何度も修理されていて……このような活動も、私たち人類の宇宙に関する知見・経験をどんどん増やしてくれています。今後も出来る限り長く活動して欲しいと願っています。
 また本書で一番驚いたのが、これまで驚くほど多くの宇宙望遠鏡が打ち上げられているということ! 本書では次の宇宙望遠鏡が、写真やイラストも使って紹介されていました。
●1960年代
エクスプローラー11号/エアロビー150・ロッシ&ジャコーニ/ヴェラ1-6号/OAO 2/OAO 3
●1970年代
SAS-A「 ウフル」/SAS-B/ANS/COS-B/HEAO-1/IUE/HEAO-2/はくちょう/HEAO-3
●1980年代
ひのとり/IRAS/てんま/EXOSAT/ぎんが/ヒッパルコス/COBE「コービー」/グラナート
●1990年代
ハッブル宇宙望遠鏡/ROSAT/アストロ1/コンプトンガンマ線観測衛星/ようこう/EUVEあすか//SFU/アストロ 2/ISO/ロッシXTE/ベッポサックス/はるか/AMS-01SWAS/WIRE/FUSE/チャンドラ/XMMニュートン
●2000年代
HETE 2WMAP/インテグラル/GALEX/スピッツァー/スウィフト・ニール・ゲーレルス・スウィフト/すざく/あかり/ひので/COROT/フェルミガンマ線ケプラー/ハーシェル/プランク/WISE・NEO WISE
●2010年代
AMS-02/NuSTAR/ひさき/ガイア/LISAパスファインダー/ひとみ/NICER/TESS/スペクトルRG/CHEOPS
●2020年代以降
ジェイムズ・ウェッブ/IXPE/NASAサウンディングロケット・ミッション/ユークリッド/XRISM/巡天/SPHEREx/PLATO/ナンシー・グレース・ローマン/NEOサーベイヤー/アテナ/LISA/HWO
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 ……日本も驚くほどたくさんの宇宙望遠鏡をあげていたんですね!
 この中でちょっと面白いと思ったものは……
●1960年代
・エクスプローラー11号(世界ではじめてガンマ線望遠鏡を搭載)
●1970年代
・はくちょう(日本初の天文観測衛星(X線天文衛星))
●1980年代
・EXOSAT(史上はじめてデジタル・コンピュータを搭載:地上局からプログラムを変更できるという画期的な機能があった)
●1990年代
・アストロ1(コロンビア号に搭載された天文台ユニット)
・SFU(日本の実験モジュール(赤外線望遠鏡も搭載)。軌道上で無人実験、10か月後にシャトルが回収)
・はるか(はるかと地上の大型電波望遠鏡をリンクさせることによって地球直径の3倍のアンテナを仮想創出)
●2000年代
・スピッツァー(太陽系外惑星や、もっとも遠い銀河を発見)
・すざく(銀河団の衝突による衝撃波を史上はじめて確認)
・プランク(宇宙の年齢が138億年であることを確認)
●2010年代
・AMS-02(ISSに設置され宇宙放射線を観測)
・ひさき(世界初の惑星観測用宇宙望遠鏡)
●2020年代以降
・NASAサウンディングロケット・ミッション(弾道飛行で高度330kmへ、宇宙からのX線を観測)
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 そしてこの後の「ユークリッド」以降は、これから打ち上げられる予定のものだそうです。その中では、中国の「巡天」が気になりました。これは中国の宇宙ステーション『天空』とドッキング可能だそうです。
 さて、これら多数の宇宙望遠鏡は、可視光線だけでなく、ガンマ線やX線、赤外線など違う電磁波による観測を行っていますが、このようにさまざまな電磁波で観測すると次のようなことが分かるそうです。
「(前略)星々が放つ光を波長ごとに分けることで、その天体がどんな波長の光を出しているのか、さらには、その天体がどんな物質からできているのか、などのほか、その天体の表面温度と視線速度(私たちから見たときの奥行の移動速度)などもわかります。」
 ……宇宙望遠鏡が、今後も宇宙の秘密をどんどん解き明かしてくれることを期待したいと思います。
 宇宙望遠鏡を総合的に紹介してくれる図鑑のような本で、とても参考になりました。宇宙望遠鏡の軌跡だけでなく、「宇宙望遠鏡の基本」、「恒星の進化」や「宇宙の謎」なども詳しく教えてもらえます。
 そして何と言っても、宇宙の写真がとても美しいのです! 眺めているだけでも癒されます……。宇宙や科学が好きな方は、ぜひ読んで(眺めて)みてください☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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