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第1部 本

生物・進化

化石のきほん(泉賢太郎)

『化石のきほん: 最古の生命はいつ生まれた? 古生物はなぜ絶滅した? 進化を読み解く化石の話』2023/4/10
泉 賢太郎 (著), 菊谷 詩子 (イラスト)


(感想)
 化石はどのようにできるのか、生命はどのような進化をとげたのか、化石から何が分かるのか……化石を通して生命の歴史や地球環境の変動について、イラストを使って分かりやすく解説してくれる本で、内容は次の通りです。
Chapter1 ようこそ化石の世界へ
Chapter2 地層と化石
Chapter3 化石とたどる生命の歴史
Chapter4 化石から読み解く地球環境
Chapter5 めざせ古生物学者
   *
「Chapter1 ようこそ化石の世界へ」では、化石について基本的なことを知ることができます。例えば化石とは……
「化石とは、古生物の遺骸やその活動の痕跡が地層の中に残されたものを指します。化石は大きく2種類に区分され、恐竜やアンモナイトなど古生物そのものの痕跡を体化石、足跡や巣穴、糞など古生物の活動の痕跡を生痕化石と呼びます。習慣的には、1万年より古いものを化石と呼ぶことが多いようです。」
 続く「Chapter2 地層と化石」では、地層について次のように解説されていました。
「地層とは、広範囲に分布する堆積岩からなる岩体のことをいいます。堆積岩とは、主に砂や泥、火山灰の粒子から構成される岩石です。これらの粒子や生物の遺骸などが水や風によって運ばれると(=運搬作用)、やがて陸上(川底や湖底も陸上に含まれます)や海底など様々な場面に降り積もっていきます(=堆積作用)。そして堆積作用によって集積した粒子が、さらに時間をかけて固結していくと堆積岩となります。」

 そして化石からは、地質年代の特定や地層が形成された環境、さらにその生物の生態が推定できるそうです。
 また地層の年代値は、次のように、火山灰層などの中に含まれるジルコンで測定可能なのだとか。
「ジルコンができた当初には鉛が存在しないので、ジルコンに含まれる鉛はすべてウランの放射壊変によって生成されたと考えることができます。したがって、ジルコンに含まれる鉛の量を測定し、ウランから鉛への変化速度を考慮することによって、ジルコンが生成されてからの経過時間がわかるのです。(中略)こうして、火山灰層が今から何年前に形成されたのかを推定できるというわけです。」
 次の「Chapter3 化石とたどる生命の歴史」には、地球最古の生命の痕跡(約39億5000万年前の炭質物)や、真核生物における最古の化石(21億年前)などの解説や、生物の多様化や複雑化が一気に進んだカンブリア爆発などについての解説がありました。
「カンブリア紀の農耕革命」については、知らなかったので興味津々で読んでしまいました。「農耕革命」いうので、カンブリア紀で稲作が?と驚いてしまいましたが、農業が始まったわけではなく、単純に「農耕で地面を鍬で掘るように地面に潜る生物が現れた」ことを「農耕革命」と言っているようでした(なんだか誤解を招く表現のような気もしますが……)。次のように書いてありました。
「生命の複雑化と多様化に加えて、カンブリアの海では、もう一つ重要な現象が起こりました。それは、カンブリア紀の農耕革命と呼ばれる進化現象です。これには、ある生物が海底堆積物の中に「潜る」という行動が大きく関係しています。」
「(前略)カンブリア紀になると、堆積物中に深く潜り込むような行動をとる動物が急激に増えてきたと考えられています。実際に、カンブリア紀の地層からは生物が潜り込んだことを示す巣穴化石が多く見つかるようになります。
それでは、このような「潜る」という行動の獲得と「農耕革命」という名称は、どのように関係しているのでしょうか? カンブリア紀に入って、海底堆積物中に深く潜る動物が増えたため、海水中に溶け込んでいる酸素が堆積物の奥深くまで供給されるようになりました。こうして、代謝時に多くの酸素を必要とするような大型の動物でも、堆積物深部に潜って生息できるようになったのです。
 すなわち、動物が堆積物中に潜り込んで攪拌することで酸素がますます供給され、結果として深く潜って生息する動物が増えていったと考えることができます。それはまるで、人類が鉄具(鍬)を用いて地面を掘り起こすことで地中深くまで肥料が供給され、作物の生産量を増すことに成功した「農耕」の歴史によく似ています。それが「農耕革命」というネーミングの由来です。」
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 ……巣穴化石からも、いろいろなことが推定できるんですね。
 さらに「Chapter4 化石から読み解く地球環境」では、「現在の地球が約46億歳であるという学説の根拠は、放射壊変という現象を利用した放射年代測定によるもの」とか、「有孔虫が殻を作るときに取り込むカルシウムとマグネシウムの比率が温度によって変化することを利用して、過去の海水温が推定できる」など、化石から地球の過去のさまざまな環境が推定できることが書いてありました。過去の地球上に超大陸パンゲアが存在していたことを示す証拠の一つも、化石記録だそうです。
 そして最後の「Chapter5 めざせ古生物学者」では、古生物学者の仕事などを知ることができました。
 化石について、イラストで分かりやすく総合的に知ることができる「古生物学の入門書」でした。興味がある方は、ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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