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第1部 本

医学&薬学

人体最強の臓器 皮膚のふしぎ(椛島健治)

『人体最強の臓器 皮膚のふしぎ 最新科学でわかった万能性 (ブルーバックス)』2022/12/15
椛島 健治 (著)


(感想)
 人体最強の臓器と呼ばれる皮膚の謎に、最新の科学的知見を元に迫っている本で、内容は次の通りです。
はじめに
第1章 そもそも皮膚とはなにか?
第2章 皮膚がなければ、人は死ぬ
―生体防御器官としての皮膚
第3章 なぜ「かゆく」なるのか? 感覚器官としての皮膚
第4章 動物の皮膚とヒトの皮膚
―生き物が変われば皮膚も変わる
第5章 皮膚の病気を考える
―どんな病気があるのか?
第6章 アトピー性皮膚炎の科学
―現代人を悩ます皮膚の難病
第7章 皮膚は衰える
―皮膚の老化とアンチエイジング
第8章 未来の皮膚医療はどう変わる?
番外編 研究者になるための体験的・人生ガイド
   *
「はじめに」には次のように書いてありました。
「皮膚はさまざまな能力を併せ持った「スーパー臓器」です。有害な化学物質や病原体の侵入を防ぐ防御装置であるとともに、人体最大の免疫器官であり、無数のセンサーが埋め込まれた感覚器官でもあります。」
「皮膚はまさに「免疫応答の最前線」です。皮膚の最も外側になる表皮組織には、ランゲルハンス細胞と呼ばれる免疫細胞が存在しており、表皮全体のじつに2~5%を占めています。ランゲルハンス細胞は、外部から侵入する細菌やウイルス、化学物質などの抗原を枝状の突起で取り込むと、リンパ節に移動し、T細胞に抗原提示して、これを感作します。そして、感作されたT細胞は、リンパ節から血中を介して皮膚に移動して、同じ抗原に出会うとサイトカインを放出し、体内に侵入した異物を殺傷したり炎症などを引き起こすことで、これを排除します。このように皮膚では、外来の病原体や異物との闘いが日夜繰り広げられているのです。」
  *
 そして「第1章 そもそも皮膚とはなにか?」では、皮膚は最大の臓器で、皮膚の総重量がなんと体重の約16%もあるなど、驚きの事実・機能をたくさん知ることが出来ました。
皮膚は外から内に向かって表皮・真皮・皮下組織になっていて、表皮の最も外側の角層は核が消失した死んだ細胞でできているとか、真皮の中には血管やリンパ管、免疫細胞などのさまざまな細胞が存在して多彩な役割をはたすとか、皮膚についての概要も説明されています。
 そして、次の「第2章 皮膚がなければ、人は死ぬ」では、次のようなことが……
「実は、私たち人間は皮膚なくして生きながらえることはできません。(中略)皮膚が失われると、たちまち私たちのからだから水分が失われて、からだを維持する生理的な機能が損なわれ、短時間で死にいたります。」
「皮膚の最外層をなす角層の防御能力は絶大で、外来抗原(アレルゲン)や細菌・真菌・ウイルスをブロックする際に約90%の役割をはたすとされています。また、皮脂腺より分泌される皮脂の40%を占める中性脂肪(トリグリセリド)は、皮膚の表面に棲み着いている常在菌の産生する酵素によって脂肪酸とグリセリンに分解されます。この脂肪酸は弱酸性で細菌やウイルスにダメージを与えるため、皮膚に付着する病原体への最初のバリアとなります。」
「表皮には、角層などの物理的な防御機構を突破した異物を捕らえて、適切な免疫応答を誘導するランゲルハンス細胞が分布しています。真皮や皮下組織には、樹状細胞、マクロファージ、T細胞、B細胞、肥満細胞(マスト細胞)、好酸球、好中球、血管、リンパ管など、免疫応答にかかわるおなじみの「役者」たちがズラリとそろっています。」
 ……皮膚はただの膜ではなく、多くの免疫機構で私たちの身体を守ってくれているんですね!
 そして個人的に最も興味津々だったのは、「第7章 皮膚は衰える」。
皮膚の老化の原因は、加齢による老化+光老化(紫外線を原因とする皮膚老化)なので、「日焼け止めを賢く使う」ことが大切だそうです。
 ふんふん、それで皮膚を老化させないためには、何か運動するとか、栄養とか睡眠とか……日ごろの努力で何とかなるのかなーという内容も期待したのですが……残念ながら、それはあまりありませんでした。代わりに、次のような美容整形的解説がありました。
 美容医学では「ヒアルロン酸」注射やボトックスなどが使われているそうですが、「生体内に注入したヒアルロン酸は、6か月たつとかなり分解・吸収されてしまうので、肌のハリを維持するためには約6か月で追加注入が必要」とか、「眉間や目じりのしわ取りに使われているボトックス(ボツリヌス毒素療法)は、重大な副作用はないが、筋肉を麻痺させてしわを目立たなくするという方法なので、豊かな表情が失われる」とか……なるほど、そうなんだ……。
 そして「第8章 未来の皮膚医療はどう変わる?」では、次の「iPS細胞由来の自家培養表皮」に期待してしまいました。
「従来の「自家培養表皮」は表皮組織しかありませんので、発毛や発汗、皮脂の分泌はできません。しかしiPS細胞由来の皮膚は、発毛や発汗を含む、皮膚のすべての機能が維持できるので、実用化されれば、さらに応用範囲が広がります。
 もとの細胞が持っている情報がうまく初期化できれば、加齢などによって蓄積された異常を解消することも可能なので、若いときのように発毛能力のある皮膚やハリのある肌を再生できる可能性もあります。」
 ……うわー、そんなことが本当にできるようになると良いですね☆
 さらに「番外編 研究者になるための体験的・人生ガイド」では、椛島さん自身の研究者としての歩みと創薬開発も紹介してくれているので、これから免疫学や皮膚医学を学ぼうと考えている方にとって、とても参考になると思います。
『人体最強の臓器 皮膚のふしぎ』、皮膚について、最新研究も含めて総合的に解説してくれる本でした。とても勉強になるので、みなさんも、ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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