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第1部 本

工作(紙以外)

世界を変えた建築構造の物語(アグラワル)

『世界を変えた建築構造の物語』2022/9/27
ロマ・アグラワル (著), 牧尾 晴喜 (翻訳)


(感想)
 重力、火災、災害、環境問題……建物はたくさんの物理的な困難に耐えられるよう、長い歴史をかけてそのための技術を蓄積してきました。それらの発見が、どのようにして生まれたのか……建築の構造的発明の歴史を教えてくれる本で、内容は次の通りです。
エンジニアの/としての物語 STORY
建物が支える力 FORCE
炎を防ぐ FIRE
土を建材にする CLAY
鉄を使いこなす METAL
石を作り出す ROCK
空を目指す SKY
地面を飼いならす EARTH
空洞を利用する HOLLOW
水を手に入れる PURE
衛生のために CLEAN
理想の存在 IDOL
最高の橋たち BRIDGE
夢のような構造を実現する DREAM
   *
 人類の建築に大きな影響を与えたのは、古代ローマ人だったようです。その技術は現代にも受け継がれているものが多く、例えば次のようなものが紹介されていました。
・火災による建物の崩壊を防ぐための原則(空気層を設け、耐火材料により部屋・区画・建物を分離すること)
・丈夫なレンガやコンクリートを作った。
・複数の滑車を使ってより重い荷物をもち上げられるようにしただけでなく、滑車をクレーンに組み込んでさらに発展させた。
 …コンクリートのことは有名なので知っていましたが、耐火の原則やクレーンも作っていたんですね! さらに建築の基礎設計までやっていたようです。次のようにも書いてありました。
「古代ローマ人は、より高く建てるために、さらに多くの柱とアーチを積み重ねた。そして大きくて重い建造物が地面に沈み込まないようにするため、初めて基礎の設計について検討し始めた。彼らは、建物の敷地にある土の種類を調べてから、構造を支えるために石とコンクリートで基礎を構築した。」
 ……古代ローマ人、本当に凄い人たちだったんですね……。
 このような建築の歴史が、さまざまなテーマで詳しく語られていきます。ブルネレスキさんがフィレンツェの大聖堂のドームをどのように作ったかとか、「フナクイムシ」を参考にブルネルさんが考案したトンネル用の機械とか、ローブリンクさんたちによるケーソンを使ったブルックリン橋とか……過去の人々が知恵(と体力)を絞ってくれたおかげで、建築技術が進展してきたことを痛感させられました。
 また過去の歴史だけでなく、現在の技術についても少し紹介されていて、それも興味津々でした。その一部を紹介すると、次のような感じ。
「石を作り出す ROCK」からは……
「最近のイノベーションの一つに、乳酸カルシウムの小さなカプセルを含む「自己治癒」コンクリートがある。液状のコンクリートに混ぜられるカプセルは、とてもおもしろい特性を持っている。カプセルの中には、酸素や食物がなくても50年間も生き延びることができるバクテリアの一種(通常は火山に近くの強アルカリ性の湖に生息)が入っている。バクテリアが詰まったカプセルが混ぜられたコンクリートが硬化した後、コンクリートに亀裂が生じると、そこから水が浸透し、水によって活性化されたカプセルからバクテリアが放出される。放出されたバクテリアは、アルカリ性の環境に順応しているため、強アルカリ性のコンクリートの中で死ぬことはない。バクテリアはカプセルを食べて、カルシウムに酸素と二酸化炭素を結合させる。つまり、バクテリアが純粋な石灰岩である方解石を作り出すのだ。この方解石がコンクリートのひび割れを埋めることで、構造体は自らを治癒する。」
   *
 また「夢のような構造を実現する DREAM」からは……
「(前略)リール大学のフィル・パーネルが率いるチームは、道路に埋められた配管の中を移動して欠陥を診断し、浸食や崩壊が起きる前に、まるで白血球のように修理を行うロボットを設計している。インスティテュート・オブ・メイキングのマーク・ミーオドヴニクは、くぼみなどの道路の欠陥を修復するドローン搭載型の3Dプリント技術を開発するチームを率いている。これが現実になれば、修復のために道路を閉鎖する必要はなくなり、費用は削減され、渋滞は緩和されるだろう。道路工事さえ、なくなるかもしれない。」
 この他にも、新しい建造物に神経系(継続的に検知を行う光ファイバーケーブルで、杭、トンネルなどの内部のひずみや温度を測定)を追加する研究なども行われているそうです。
 これらの研究で、建築の安全性やメンテナンス性がより高まっていくことを期待したいと思います。
 とても面白くて勉強にもなる建築の本でした。興味のある方は、ぜひ読んでみてください☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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