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第1部 本

科学

地球外生命を探る(松井孝典)

『地球外生命を探る 生命は何処でどのように生まれたのか』2022/12/17
松井 孝典 (著)


(感想)
 生命の誕生という宇宙最大の謎を、最先端の知見で解き明かそうとしている本で、内容は次の通りです。
はじめに――この宇宙は、生命を生む宇宙である
1章 この宇宙に地球外生命が存在する可能性――地球外生命探査の最前線――
2章 そもそも生命とは何か
3章 生命はどうやって〝生きている状態〟を維持しているのか
4章 生命は、いつ何処でいかにして生まれたのか
5章 ウイルスは生命の祖先なのか
6章 この地球上で、生命はなぜ進化したのか――「地球」と「地球もどきの惑星」の違い
7章 地球と生命の進化の歴史
8章 生命の陸上進出とホモ・サピエンスの誕生
9章 生物進化が起こる惑星の条件
おわりに
   *
「はじめに」には、「地球外生命がいると考えられる」理由について、「炭素、水素、酸素、窒素といった化学元素が用意された宇宙では、地球のような岩石と水の惑星が生まれて、それがある程度以上の大きさであれば火山活動が起こるので、海底に「アルカリ熱水噴出孔」ができる。そういうところでは、生命の材料物質が必ずつくられる」ということが書いてありました。
 そして「4章 生命はいつ何処でいかにして生まれたのか」によると、生命誕生プロセスには、つぎの4段階があるそうです。
1)生命が必須とする小型の有機分子(アミノ酸、ヌクレオチド、リン酸塩など)がつくられて、たまる
2)これら小型分子がつながって大型分子(タンパク質や核酸など)になる
3)大型分子が集まって構造化する
4)区画化された構造内で、大型分子を複製する能力が獲得され、それを次世代に伝えていく仕組みができる。
   *
 そして少なくとも、このうちの3までは、「アルカリ熱水噴出孔」のそばで自然に起こっていくようです。次のようなことが書いてありました。
「アルカリ熱水噴出孔は、水と橄欖石の化学反応によって形成される構造物です。橄欖石は宇宙でとりわけ豊富な鉱物の一つであり、岩石天体には必ず存在します。橄欖岩の蛇紋岩化作用は、宇宙空間でも起こる普遍的な地質現象です。
 岩石と水と二酸化炭素――これらが生命の誕生に必要な材料物質です。湿潤な岩石天体のすべてに準備されているはずです。(中略)
 化学と地質学の法則によって、これらは触媒となる細孔の薄い壁を挟んで、プロトン勾配を持つ温かいアルカリ熱水噴出孔を形成します。すると、無機物から小型の有機物がつくられ、それらがたまってヌクレオチドなどを形成する……という、ここまでに紹介してきたようなことが起こります。ですから、岩石と水、二酸化炭素を持つ惑星では、生命は、すでに生まれているだろうと考えられます。」
 ……なおアルカリ熱水噴出孔では、水が海底から下に沈み込んで橄欖石と反応する際、蛇紋岩化作用によって、水素の豊富な温かいアルカリ液体が発生し上昇しますが、上昇するうちに冷えて海水に溶け込んだ塩と反応し、アルカリ熱水噴出孔という構造物をつくるのだとか。またアルカリ熱水噴出孔は徐々に鉱物を蓄積して大きくなるので、細かい孔が無数に空いている構造物になり、表面積が大きいので、非常にまれにしか起こらない化学反応でも、かなりの頻度で起こりえるそうです。
 そして「プロトン濃度勾配」は、すべての生体反応のもとにありますが、アルカリ熱水噴出孔にも天然のプロトン濃度勾配があって、そこでは、いろいろな化学反応が進み、有機物が作られる(=生命が行っていることと基本的に同じ)のです。有機物を濃縮することもできるので、有機物同士の相互作用を促し、細孔内で開放系の形成を進め、脂肪酸を自然に小袋にすることを可能にする……なるほど「アルカリ熱水噴出孔」は、生命のゆりかごの最有力候補にふさわしいようです。
 そして終章の「9章 生物進化が起こる惑星の条件」には、「海があって、その下に熱水噴出孔のような地質構造がある惑星であれば、おそらく必ず生命を見つけられる(ただし生命進化が起こる惑星は、まれ)」ということが書いてありました。その根拠となる科学的説明がとても具体的に説明されていたので、とても説得力を感じました(笑……単純)。
 太陽系でも、この条件を満たす場所(例えば火星や、木星の衛星エウロパなど)で、生命が見つかるかもしれません。
『地球外生命を探る 生命は何処でどのように生まれたのか』をじっくり考察していて、とても読み応えのある本でした。この本一冊で、地球やその生命進化の歴史をじっくり学ぶことが出来て、とても勉強にもなりました。みなさんも、ぜひ読んでみてください。お勧めです☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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