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第1部 本

自己啓発・その他

すこしでも確実に社会に役立つ選択をする(ベイザーマン)

『BETTER, NOT PERFECT すこしでも確実に社会に役立つ選択をする』2022/12/14
マックス・H・ベイザーマン (著), 池村 千秋 (翻訳)


(感想)
 認知バイアスの世界的権威のベイザーマンさんが考える、善意が確実に「善」を生むための意思決定ガイダンスです。
「はじめに」には、本書の概要と目的が次のように書いてありました。
「地球上のすべての生きとし生けるもののために、できるだけ多くの価値を生み出し、最大の善を実現すること――それこそが倫理的な行動だと、私は考えている。その点で本書における「倫理」の定義は、功利主義者の考え方に近い。」
 本書は「持続可能な最大の善」を実現するための具体的な手順を示してくれています。
「第1章 完璧ではなく、「よりよく」を目指す」には、「功利主義的道徳観の基本的要素」が、次のようにまとめられていました。
1)すべての生きとし生けるもののために、できる限り多くの価値を生み出す。
2)善を実現するべく、効果的に行動する。
3)みずからの富の多寡や社会における地位に関係なく、道徳上の意思決定を行う。
4)すべての人の利害を平等に重んじる。
   *
 ……これらは特に何の問題もないように見えますが、功利主義にこだわりすぎると問題が起きることがあるようです。例えば、有名な「トロッコ問題(暴走トロッコの先にいる5人を助けるために、1人しかいない方へレバーを切り替えて暴走トロッコによる犠牲者の人数を減らすべきか)」という難しい問題だけでなく、「5人の重症患者問題(5人の重症患者を救うために、1人の健康な人を殺して臓器を移植すべきか)」などを考えれば分かるように、「より多くの人の幸福」だけを目指すことが最良とは言えないケースがたくさんあるからです。
 ベイザーマンさんは次のように言っています。
「(前略)最大限の善を生み出すことを目指すという功利主義の原則を基本的に支持しつつ、正義、権利、自由、自立に関する懸念に対処するために、具体的な状況に応じて原則を修正すればいいと考えている。」
 ……まったくその通りだと思います。
「第2章 もっている知性を無駄にしない」では、さまざまな認知バイアスの解説の後、適切な選択肢の選び方として、次の手順が紹介されていました。
1)問題を定義する
2)重んじる基準をいくつか選ぶ
3)それぞれの基準の重みを決める
4)いくつかの案を用意する
5)ひとつひとつの基準に照らして、それぞれの案に評価をくだす
6)そのうえで、最善の選択肢を選び出す
   *
 複数の選択肢を同時に検討する方が、論理的に思考でき、バイアスの影響を弱め、より功利主義的意思決定が行える……次のようにも書いてありました。
「効率を考えれば、日々の意思決定のほとんどでは、今後も手っ取り早い直感的思考に従えばいい。しかし、時間を捻出できる場合は、重要な意思決定に関してより熟慮に基づいた思考モードを実践することによって、より多くの価値を生み出せるのだ。」
 そして「第3章 賢明なトレードオフの選択」では、次のように語っています。
「重要な意思決定をおこなうときは(自分以外の人に影響が及ぶ場合はとりわけ)、さまざまな評価基準の間で賢明なトレードオフの判断をおこなうことにより、大きな価値を生み出せる。」
「ほかの人たちや社会全体のことを考える場合は、より大きな集団のために価値を生み出すこと、ほかの人たちと協力すること、もっと多くの人たちのことを考えることに重きを置かなくてはならない。」
 さらに「第4章 腐敗と不正のカラクリを知る」では……
「(前略)道徳的権威がそこなわれた場合、そのダメージは最初の非倫理的行為の範囲だけにとどまらない。問題の人物や組織、制度への信頼が失われる結果、社会全体にとっての価値が失われてしまうのだ。」
「(前略)見過ごされがちだが、アメリカでは、法を破るのではなく、法をねじ曲げるという形での腐敗に道を開く政治システムが出来上がっていると言っても過言ではない。」
 そして「第5章 気づく力」では……
「ほかの人の違法行為や非倫理的行為に気づかなかったり、そのような行為が横行しやすい環境をつくったりする人は、価値を破壊していることになる。世界には、ほかの人を傷つけても意に介さない邪悪な人間もいる。多くの場合、そうした人たちがそのような行動を続けられるのは、明確な証拠があるのに、周囲の人たちが問題を目にとめないからだ。」
「第7章 無駄づかい ――浪費の洗い出し」では……
「政治家や市民は目先の短期的な「勝利」にばかり目を向け、地域コミュニティが負担する機会コスト(学校や病院に回せたはずの予算が失われることの弊害)や長期的なコスト(公的債務)をしばしば無視しているからだ。」
「第8章 時間――資産として考え直す」では……
「大半の人は、限られたお金の使い道を考えることには多くの時間を費やすが、時間の使い道を考えることにはあまり時間を費やさない。私の経験から言うと、自分の時間の使い方について「監査」をおこなうことはきわめて有益だ。」
 そして「第10章 ほかの人を通じて価値を生み出す」では……
「(前略)完璧を目指すのではなく、よりよい行動を目標に掲げれば、活動が長続きしやすい。自分にできる範囲のことをおこない、有意義で楽しい人生を続けつつ、自分にできることを増やしていこうと考えればいい。具体的には、ほとんどの人は、自分が生み出せる価値を毎年増やすことを目指すことになるだろう。」
   *
『BETTER, NOT PERFECT すこしでも確実に社会に役立つ選択をする』……行動を起こすためのヒントをたくさん教えてもらえる本でした。とても参考になったので、みなさんも、ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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