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第1部 本

科学

日本の気候変動5000万年史(佐野貴司)

『日本の気候変動5000万年史 四季のある気候はいかにして誕生したのか (ブルーバックス)』2022/9/15
佐野 貴司 (著), 矢部 淳 (著), 齋藤 めぐみ (著)


(感想)
 5000万年前からの地球全体の気候変動、日本列島の地質学的な変化と気候の変化を関連づけて明らかにしてくれる本で、内容は次の通りです。
第1章 超温暖期とその後の寒冷化 日本列島以前の気候
第2章 モンスーン時代の到来 梅雨の始まり
第3章 日本列島誕生と気候への影響
第4章 地球温暖化アナロジーの時代
第5章 第四紀氷河時代の日本
第6章 日本特有の気候の成立
第7章 日本特有の気候成立と人類の時代
   *
 日本の気候は、5000万年前の超温暖期から3000万年前の寒冷化、2300万年前のモンスーン開始による梅雨の誕生、エルニーニョ多発の時代、260万年前の氷期など、さまざまな変化を経験してきました。そうしたなかで日本は列島を形成し、日本特有の温暖湿潤で美しい四季をもつ気候となってきたのです。
 ……日本の気候の変動っぷりに、本当に驚かされました。考えてみれば、もともと日本列島は5000万年前には大陸の一部だったのに、約4000万年前に大陸から分かれ始めて、現在の位置になったのは約1500万年前……変化しないはずはないのです。
 とりわけ勉強になったのは、「第2章 モンスーン時代の到来 梅雨の始まり」と、「第3章 日本列島誕生と気候への影響」。
 まず「第2章 モンスーン時代の到来 梅雨の始まり」に関しては、章の終わりに「まとめ」が書いてあったので、以下にそれを紹介します。
・2300万年前に、夏季モンスーンの開始によって、日本をふくむ東アジアに梅雨がもたらされるようになる。
・モンスーン開始の原因は、インド亜大陸のユーラシア大陸への衝突によるヒマラヤ山脈とチベット高原の誕生による
・インド亜大陸の衝突は、ボルネオ島を移動させ、パプアニューギニア沖に暖水プールを形成。黒潮と対馬暖流の誕生につながった。
・インド亜大陸の衝突は、日本列島を東方向へ押して、日本海の誕生を誘発した。
   *
 ……インド亜大陸のユーラシア大陸への衝突(!)が、モンスーンを作り、アジアや世界の気候に大きく影響したんですね!
 そして「第3章 日本列島誕生と気候への影響」の「まとめ」は……
・リフティングによる日本海の誕生によって、日本列島は2つの暖流に取り囲まれ、温暖で湿潤な気候となった。
・漸新世(3390万年前~2303万年前)には、四季も誕生
・中期中新世最温暖期(1600万年前)には、日本列島が熱帯化していた可能性も
・約1300万年前以降には、徐々に寒冷化
・C4植物の繁栄が二酸化炭素を減少させ、寒冷化を促進
・火山活動による山地形成が日本海側に多雪気候、太平洋側に冬季の乾燥をもたらす
・フォッサマグナの形成による寒冷化の抑制
   *
 なお、「リフティング」とは、「地下深くから上昇してきた熱い物質が大地を突き上げ、水平方向に引き裂く現象」だそうです。
 ここでは「フォッサマグナの形成による寒冷化の抑制」の次の説明が、すごく興味津々でした。
「もしも、フォッサマグナが形成されていなかったら、日本列島の中央には、列島を分断する海峡が存在したことになります。そうなると、日本周辺の海流は、現在とは大きくことなったはずです。現在の日本海には、南から対馬暖流が流入して北上しています。そして大部分は対馬海峡を通って太平洋へ抜けています。この暖流は日本海沿岸を温暖で湿潤な気候に保っている要因の一つです。そして、冬に日本海沿岸へ多くの雪をもたらす要素の一つでもあります。
 もし“フォッサマグナ海峡”が存在していたら、対馬暖流の一部は、ここを通って太平洋へ抜けていたはずです。すると、新潟から青森にかけての日本海沿岸への対馬暖流の影響は少なくなり、いまよりも冷涼な気候となっていたかもしれません。
 さらに冬には東アジア冬季モンスーンが、フォッサマグナ海峡を通り抜けて南方へ吹き抜けていたことでしょう。すると、関東と東海地方の冬はもっと厳しい寒さとなっていたと思われます。」
 ……ああ! 確かに……フォッサマグナがなかったら、そこは海峡だったんですよね! すると気候も変わってしまっていたんだ……。
 こんな感じで、『日本の気候変動5000万年史 四季のある気候はいかにして誕生したのか』をじっくり解説してくれます。すごく複雑な内容なのですが、各章のはじめと最後に簡潔な「まとめ」があったり、図表で解説してくれたりと、とても親切な構成になっているので、理解しやすかったように感じました。
 そして本書の終わりには、「未来の日本の気候」についても書いてありました。
 温室効果ガスの排出規制をしないと、温暖化が夏季モンスーンの強化やエルニーニョの定常化(ゲリラ豪雨、冷夏)を誘発する可能性があり、西暦2100年までに、両極の氷床が融けて、日本列島の海岸線が後退する(平野が失われる地域がでてくる)可能性があるそうです。さらに西暦2300年には、関東から九州にかけて亜熱帯から熱帯気候に、北海道でも暖温帯の気候になる(日本に四季がなくなる)可能性があるのだとか……。
 ……うわー、大変だ……でも過去にも日本の気候が今より温暖だったこともあるので……未来人もなんとか適応していけるのではないでしょうか……それでももちろん、温室効果ガスの排出は、できるだけしないよう心掛けたいと思います。
『日本の気候変動5000万年史 四季のある気候はいかにして誕生したのか』……日本の気候変動はもちろん、列島の形の変遷もイラストで見ることができて、すごく読み応えがありました。みなさんも、ぜひ読んでみてください。お勧めです☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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