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第1部 本
ビジネス・その他
Web3新世紀(馬渕邦美)
『Web3新世紀 デジタル経済圏の新たなフロンティア』2022/7/21
馬渕 邦美 (著, 監修), 絢斗 優 (著), 藤本 真衣 (著)
(感想)
Web3リーダーが描いている未来を紹介してくれる本です。Web3は現在進行形で、しかも変化のスピードが速いので、未来を見通すのはなかなか難しいのが実情ですが、本書は、トップランナー9人のインタビューを通して、「これから何が起きるのか?」を読み解いています。登場する人々は次の方々(StakeTechnologies:渡辺創太さん、Animoca Brands:Yat Siuさん、YGG Guild Games:Gabby Dizonさん、MakerDAO:Kathleen Chuさん、Decentraland:Esteban Ordanoさん、Ethereum Name Service:井上真さん、Minto:水野和寛さん、経済学者:野口悠紀雄さん、弁護士:長瀬威志さん)で、内容は次の通りです。
プロローグ
第1章 概論:Web3は、社会を再定義する
第2章 日本のWeb3スタートアップはグローバルへ向かう
第3章 NFTのもたらす世界観
第4章 ゲームギルドのWeb3エコシステム
第5章 DAOが企業組織のゴールをアップデートする
第6章 メタバースとWeb3がもたらす新経済圏
第7章 グローバルWeb3事業者の成長の軌跡
第8章 日本のIP、Web3へのアプローチ
第9章 DAOが作り出す社会変革
第10章 Web3のガバナンス
エピローグ
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Web3は、現在のWeb2.0の延長上にはなく、別の世界を目指しています。「プロローグ」には、Web3の定義がWeb1.0、2.0とともに簡単にまとめられていました(なおWeb1.0、2.0の部分は省略します)。
・Web3の定義
1)インフラ、デバイス:モバイル、スマホをベースにVR、XR、ウエアラブルデバイスなどを活用(未確定)
2)データ保存、解析技術:ブロックチェーン
3)代表的ユースケース機能:NFT、Defi、P2Pの直接の交流
4)中心となる組織、意思決定:DAO/スマートコントラクト
5)エコシステム:トークン利用、参加者へのインセンティブ
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Web3はまだ試行段階にあるものも多く、はっきり見通せてはいませんが、重要なキーワードになるのは、ブロックチェーンやNFT、DAO、メタバース(VR/AR)などでしょう。
「第1章 概論:Web3は、社会を再定義する」には、「Web3の重要キーワード」として、次の3つがあげられていました。
1)Defi(金融革命)※Defi=スマートコントラクトを活用して非中央集権的に自動的に稼働する金融システム。
2)DAO(組織形態革命)分散型自律組織(プロダクト指向型DAO、目的指向型DAO)
3)NFT(所有革命)※NFTの定義はまだ明確でなく、スマートコントラクトによって所有物のような状態と認識されている。
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とても参考になったのが、「第2章 日本のWeb3スタートアップはグローバルへ向かう」。ここには、Astarというパブリックブロックチェーンを作った渡辺さんのインタビューもあり、次のように書いてありました。
「Astarはトークンの流通と資金調達手法として、法定通貨や暗号通貨でななく、機会費用を担保にした「ロックドロップ」という新しい独特な手法を用いています。ロックドロップとは、ビットコインやイーサリウムなどを持っているユーザーが指定された時間だけ暗号資産を動かせないようロックすることで、その対価として新しいトークンを受け取ることのできる仕組みです。」
そして、とても良いなと感じたのが、次のような「サンドボックス制度」という考え方。
「一気に法制度を変えることは難しくても、新しい試みが可能なサンドボックス制度の活用などにより、その試みのメリットやデメリットを確かめられるといったことも必要でしょう。規制のサンドボックス制度とは、新しい技術やビジネスモデルの社会実装に向け、事業者の申請に基づき、規制官庁の認定を受けた実証を行い、実証により得られた情報やデータを用いて規制の見直しにつなげていく制度です。」
「NFTなどWeb3に関わる事業は国境をまたぐ取引が多く、国内の法規制のみでは対応できないことも多いと考えられます。起業、事業化のスピードアップの面からすると、法規制の確立を先行させるのではなく、特区や規制のサンドボックス的対応で、事業の試行などを優先させ、先に問題点を明確化し、その上で妥当な法規制を確立したり、法規制以外の方法で対応したりするといったアプローチも必要と考えられます。」
……サンドボックス制度はまだ実現されてはいないようですが、「特区や規制のサンドボックス的対応」で実際に試行した上で、法制化を進めていくという手法は、革命的な変化を起こす可能性のあるWeb3にとって、最も合理的で現実的なのではないでしょうか。
また興味津々だったのが、「第6章 メタバースとWeb3がもたらす新経済圏」のDecentraland。次のように書いてありました。
「(前略)Decentralandは、Web3業界で最も歴史が長いとされる、メタバース構想のブロックチェーンプロダクトとして知られています。2015年に誕生し、3DCGとブロックチェーン技術を組み合わせた仮想空間プラットフォームとして進化を遂げています。2017年にICOを実施した際には、開始から数十秒で約26億円を調達したことで大きな話題を呼びました。」
「Decentralandでは、ブロックチェーン技術に基づく独自トークン「MANA」を用いて、土地区画LAND、アバター服、ユーザーネームなどの取引を行うことができます。取引されるLANDなどメタバースで取引されるアイテムは、NFTによってユニークさが担保され、LANDの運用やデジタルアイテムの作成によるマネタイズが可能となり、メタバースにおける独自の経済とエコシステムを構築することができます。」
……Web3は、こんな世界になるんでしょうか? ちょっと楽しそうかも(笑)。でも……なんだか、仮想世界の沙汰も金次第、って気もするなあ……うーん……。
そして最後の「第10章 Web3のガバナンス」も、とても参考になりました。NFTなどの所有権問題や、国際化問題など、解決すべき問題がたくさんありそうです。そのごく一部を紹介すると、次のような感じ。
「NFTはいわばデジタルの「モノ」を取り扱いますので、法律に深く関わります。日本の民法で規定されている所有権は、『この物に対して排他的に支配する権利を持っているのは私だけである』という強力な権利なのですが、形のある物にしか認めていません。NFTはブロックチェーン技術を使うことで、コンテンツに対する何かしらの権利を行使できるという感覚的な所有権を得ることはできますが、それを法律的に裏付ける規定はありません。」
「現在での法規制での課題が示されました。物以外のデジタルに関しては、保有する権利に対する明確な定義がなく、ハッキングにより盗難にあった場合であっても損害賠償請求程度しかできないとのことです。その損害賠償請求自体も、Web3では対象が海外居住者や匿名ベースの人が多く、法執行が困難だと思われます。」
「ブロックチェーンやNFTを利用したゲームは、法規制上の問題のみならず、国際的に児童労働や搾取的な構造を発生させる懸念が指摘されています。」
「Web3は、完全な自律分散化を指向し、そこに特徴もありますが、少なくとも一時的に中央集権的な規制や制度が導入される可能性はあり、その点を含めた事業展開を考慮する必要があります。」
「メタバース以前から、一般的なインターネットを通じたプラットフォームビジネスでは、どの国の法律が適用されるのかという問題があります。特にメタバースだと単なるショッピングで終わらず、およそメタバース上でありとあらゆる取引や権利関係の問題が生じ得ますので、どの国の法律が適用されるのかは、これまでの一般的なプラットフォームビジネス以上に問題になってきます。」
デジタル経済圏の新たなフロンティア、Web3が目指す世界を感じさせてくれる本でした。ただ……専門用語が特に解説もなく出てくるので、初心者向けの本ではないと思います。またWeb3自体が現在進行形で試行中(確立したものではない)状態にあるので、Web3が起こす未来が明確でなく、ちょっとモヤモヤ感もありました……。それでもWeb3の9人のトップランナーのインタビューを通して、その最新状況を知ることが出来る貴重な本だと思います。個人的にITにはそれなりに詳しいつもりだったのですが、知らなかった用語もたくさんあって焦りました(汗)。社会はどんどん動いているんだなー……取り残されないように頑張らないと……。
Web3に興味がある方は、ぜひ読んでみてください。
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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