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第1部 本

数学・統計・物理

とんでもなく役に立つ数学(西成活裕)

『とんでもなく役に立つ数学 (角川ソフィア文庫)』2014/12/25
西成 活裕 (著)


(感想)
 数学が、私たちの社会にとって、いかに「とんでもなく役に立つ」能力を持っているかを教えてくれる本です。
 この本は、2010年の春に、東大の教授の西成さんが、「数学嫌いを吹き飛ばす」ことを目的に、都内の高校一年生への4日間の特別授業をしたときの様子をベースに書籍化したものだそうです。
 子どもの頃、算数(数学)が苦手だった私にとって、タイトルに「数学」とついているだけで、読むのにプレッシャーを感じてしまいますが(そのくせ、いまだに「苦手克服」を目指しているので、頑張って読んでしまうのですが(笑))、なんと「1章 いつも胸ポケットに、難問を」では、数学の話ではなく、体育や国語(?)のような話から始まるので、かなりホッとして先を読み進められました。ここで西成さんは、次のように言っています。
「(前略)スポーツをある程度やっていくと、必ず壁があらわれてくるけれど、それを乗り越えるには精神力が必要だよね。数学って、その感じと近い。最初は楽しいかもしれないけれど、必ずつらいところがある。問題が解けなくて、「ああ、つらい、もうこれ以上は計算できない……」と詰まるときは、スポーツで「もう駄目だ」と感じるときと一緒。それを乗り越えられるかどうかは、教えられるものじゃなくて、体育会系のど根性があるかどうか。そこでグッと差がつきます。だから、スポーツをやっている人は、その力をうまく数学につなげると一気に伸びる。」
 ……東大教授の西成さんでも「数学がつらい」と感じることがあったんだ! 数学にはコンプレックスのある私にとって、数学が出来る人=数学に辛さを感じない人=神のような特殊な人という偏見(?)があったのですが、なんだかほっとさせられました。もちろん「つらい」時のレベルが大違いなのでしょうけど)。
 その後は、「論理」のトレーニングとして、「お腹がすいた」「かわいい犬を見た」などの短い文章をいかに「納得いく形でつなぎ合わせるか」を行います……なんだか国語の授業みたいでしたが、このような「ふたつの概念をどれだけ論理的に精密につなげられるか」は、数学力の向上に最も効くのだそうです。
 その後の「2章 数式から呼吸が聞こえる」以降になると、微分や三角関数の話が続出(汗)。この授業を受けているのは高校1年生たちなので、微分も三角関数もまだちゃんと習っていないのに……。それでも、数学が苦手な人もいるはずの高校生たち、かなりの理解力を示しています(相当、優秀な生徒たちのようでした)。ここからの数学の話は、数式などのすべてを理解するのは難しそうに思いましたが、「微分」「積分」「三角関数」などが、どのように実際の生活に役に立つかが、少し分かったような気がします(以下に一部を抜粋して紹介します)。
「時間をゆっくり動かし、ほんのちょっとの変化を取り出して、それを気長に細かく分け、変化に関係している要因を割り出すのが微分、そして、その、ほんのちょっとの変化、前のコマと次のコマとの差を、気長に積み重ねていくのが積分です。スローモーションでのコマ送り(微分)を集めて通常再生(積分)していけば、現実の変化をきちんと表すことができます。アニメーションのイメージを持ってください。こうして、一気に将来を見通すことができる。」
「サイン、コサインなどの三角関数は、現象を捉える際、頻繁に登場します。音波、電磁波、光などの波は、ぜんぶ三角関数で表せる。三角関数は「フラフラ」、上下左右に揺れるイメージを持っていると、だんだん使える道具になっていきます。」
「もう一つ、覚えておくと便利な関数が「指数関数」です。急激に変化する自然現象は、指数関数で表現できる。」
 ……子どもの頃、微分や積分、三角関数などは「実生活の役に立たない」と思っていましたが……大学生や社会人になったら、意外なほど「使う・見る」機会があって、もっと勉強しておけばよかったと反省させられました(汗)。
 そして「数学」はすごく「難しい」学問だと思っていたのですが、まったく逆の側面があることにも、大人になってから気づきました。
 社会は「複雑系」で出来ているので、数式で表すことは出来ません。そのせいもあって、「数学は実生活に役に立たない」と言わる部分もあるのだと思います。でも、「複雑系」の一部には、ある一定の傾向を示すものもあります。その部分を抽象化して簡略に表してみるために、「数学はとんでもなく役に立つ」のです。
 たとえばオシロスコープにあらわれてくる電波の波の形、三角関数以外で表現してみろと言われたら、絶対に出来ないと思いませんか? でも三角関数をつかえば、近似値をうまく表現できるのです。(そうか……三角関数、もっと勉強するべきだった……)
 この本を読むと、課題を考えるときに「数学がどう使えるか」のコツが、(ほんの少しだけ)理解できるような気がしました。
 苦手だけど、数学をなんとか克服したいと思っている方は、ぜひ読んでみてください。お勧めです☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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