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第1部 本

社会

教養としてのグローバル経済(齊藤誠)

『教養としてのグローバル経済』2021/5/25
齊藤 誠 (著)


(感想)
 グローバル経済の教科書で、グローバル化、ICT、SDGs、ブロックチェーンなどの今さら聞けない用語も、格差、移民などの社会問題も分かりやすく解説してくれます。
『教養としてのグローバル経済』というタイトルですが、実はこの本、「商業高校向けの社会科科目として新たに設けられる「グローバル経済」の教科書の学習指導要領にそって作成したもの」だそうです。
「この教科書は、第1章から第4章までは、章や節のタイトルも、それぞれの内容も、「グローバル経済」の学習指導要領に忠実に従っている。第5章の「コロナ禍と経済のグローバル化」だけは、学習指導要領とは独立に書き下ろしたものであるが、当然ながら、第1章から第4章の議論を踏まえたものになっている。」と書いてありました。内容は次の通りです。
第1章 経済のグローバル化と日本
1─1 グローバル化と国際化
1─2 日本経済の現状
第2章 市場と経済
2─1 市場の役割と課題
2─2 経済成長
2─3 景気循環
2─4 経済政策
第3章 グローバル化の動向・課題
3─1 人材のグローバル化
3─2 財とサービスのグローバル化
3─3 金融と資本のグローバル化
3─4 情報のグローバル化
第4章 企業活動のグローバル化
4─1 企業の海外進出
4─2 グローバル化に伴う企業の社会的責任
4─3 世界との関わり
第5章 コロナ禍と経済のグローバル化
5─1 コロナ禍と経済のグローバル化:いくつかの風景
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 商業高校向けの教科書として書かれた本なので、グローバル経済に関する基礎知識から学べます。「第2章 市場と経済」では、グローバル経済の複雑な仕組みやルールを理解するための前提となる「経済の仕組みの解説」も、イラストなどを活用して分かりやすく教えてもらえるので、高校生だけでなく、経済学が苦手な大人の方にとっても、理解しやすいと思います。
 個人的に特に参考になったのは、「第5章 コロナ禍と経済のグローバル化」。
「コロナ禍で貿易が停滞したことがきっかけとなって、東アジアで新しい貿易体制が築かれつつある」そうです。次のような解説がありました。
「2020年初め、中国の武漢市で新型コロナウイルスの感染爆発が起きるやいなや、中国との貿易に大きく依存している国々は、中国からの輸出品が途絶えたことで国内の経済活動が窮地に陥った。そこで各国政府は、貿易政策において「脱中国」を最重要課題とした。日本政府も、日本企業に対して脱中国戦略を働きかけてきた。
 しかし、そうした脱中国戦略は、なかなかうまくいかなかった。」
 ……マスク不足騒動をはじめ、「コロナ禍」は、日本だけでなく世界中の国々が中国製品(材料)に大きく依存していることを鮮明したのだと思います。「脱中国」は今後もなかなかうまくはいかないと思いますが、やはり少しずつでも「自国の力を取り戻す」努力をしていくべきなのでしょう。
 また「コロナ禍」は、次のような状況も明らかにしたそうです。
「実のところ、コロナ禍は、私たちの社会が環境問題に覚醒するきっかけとなったのかもしれない。中国やインドは、以前から大気汚染がきわめて深刻であった。しかし、感染対策のためにロックダウン(都市封鎖)が両国で実施され、国内の経済活動が停止されるやいなや、大気汚染が一時的に解消したのである。2000年1月から4月上旬までロックダウンを実施した中国にも、3月下旬から10月中旬まで実施したインドにも、多くの都市には青い空が戻ってきた。もちろん、ロックダウンが解除され経済活動が再開されると、大気汚染が再び深刻になった。こうした経験は、大気汚染という環境問題がまさに人間の経済活動によってもたらされていることを世界の人々に見せつけたのである。」
「コロナ禍」終息後は、世界中で、環境問題改善への取り組みが進むといいですね。
 とても勉強になる『教養としてのグローバル経済』でした。高校生の方にはもちろん、大人にとっても、自らの社会・経済の知識を再整理できるという意味で、読む価値が十分あると思います。ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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