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第1部 本

ビジネス・経営

マネジメントの文明史(武藤泰明)

『マネジメントの文明史 ピラミッド建設からGAFAまで』2020/10/24
武藤 泰明 (著)


(感想)
 人を動かし目的を達成するマネジメントの仕組みはいつ誕生したのか? 古代エジプト、産業革命からアメリカ企業の繁栄、現代まで5000年にわたるマネジメントの進化を語っている本です。
「第I部:会社以前」は、古代エジプトのピラミッド建設から、アテネなどの都市国家群、ハンザ同盟、十字軍を経てルネサンス期の商業都市ヴェネツィアまで。
「第II部:大航海時代と会社の誕生」では、コロンブス、マゼラン、東インド会社を経て会社の誕生の軌跡を追い、英国がインドに植民地を築いた謎を解き明かします。
「第III部:英国――産業革命の成立・発展・衰退」では、なぜ英国で産業革命が成立したのか、成功したはずなのにドイツやアメリカと違って後世に生き残った会社はなぜないのかを考察しています。
「第IV部:ドイツ――大企業と重工業の誕生」では、先発の英国を凌駕し大企業と重工業を生み出したドイツに迫ります。同族企業が多く、本社は分散し、多くの巨大科学工業の発祥は染料工場であるなど意外な素顔が明らかになります。
「第V部:米国――マネジメントと経営者の創出」の主役はフォード、デュポン、GMなど今でも有名な企業。意外なことに米国企業はイノベーションに強い訳ではなく、共通性部品、事業部制、フランチャイズ制などの知恵で大きくなっていったことが明らかになります。
 そして現代の「第VI部:個人によるイノベーションと非営利組織の時代」では、米国大企業の黄昏と非営利組織の時代の到来が描かれます。
 ……ということで、古代から5000年にわたるマネジメントの進化を概観していくのですが、歴史的に見て「どのマネジメント」が正解かという「理想」を教えてくれるというよりは、この時代にはこういう経緯で、このような方法や組織が出来上がった、ということを解説してくれる本だったように感じました。もっとも、経営にとって「重要なのは、一つひとつ違う、他の企業とは違う自分の会社が、環境にうまく適応していくこと」なので、「普遍的な正解(理想)のマネジメント」なんてものは、そもそもないのでしょう。
 個人的に興味深く感じたのは、「第21章 英国は衰退しなかった」の、「(前略)産業革命に成功し製造業がいち早く発展した英国の富は、実は製造業ではなく、貿易・金融保険・投資によって生み出されていたのです。」という話。そうだったんだ……。
 そして「第24章 ドイツ企業と制度の特徴」の、「重要なのは、ビジネスが過去とは非連続のもので、規模が大きく複雑になると、熟練や経験が通用しにくくなり、教育によって獲得した知見が必要になるという点です。」……確かに、そうですよね。ドイツは「国として研究開発に力をいれた」こともあり、後発なのに英国を凌駕していったようです(他の要因もたくさんあるようですが……)。
 また会社組織や債券などにつながるものは、古代にすでに萌芽があったようで、ヴェネツィアではなんと12世紀から船の所有権を分割していたり、公債を発行して資金調達したりしていたそうです。船が大型化していくと、一人では費用やリスクを賄いきれないので、分割所有(資本と経営の分離)が始まったのだとか。
 ピラミッド建設の時代から現代のGAFAまでの『マネジメントの文明史』を概観してくれる本でした。マネジメントや組織(分業)がどのように始まったかに興味がある方は、ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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