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第1部 本

科学

生命の根源を見つめる(東京大学教養学部)

『生命の根源を見つめる (知のフィールドガイド)』2020/5/15
東京大学教養学部 (編集)


(感想)
 東京大学教養学部主催の高校生と大学生を対象とした公開講座「金曜特別講座」を書籍化した本です。主に2017~2019年度に登壇した先生方に、講義内容を寄稿してもらったものだそうで、この本はこのシリーズの第2弾で、自然科学の内容を収録しています。
 主な内容と執筆者は以下の通り。
・天体現象の数値シミュレーション(鈴木建)
・タイムマシンは可能か?:原子時計とウラシマ効果(鳥井寿夫)
・光と分子―分子の形を知る方法、分子の動きを知る方法(長谷川宗良)
・放射線をとことん測ってみる―測定の現場から(小豆川勝見)
・脱力から知る熟練者の身体(工藤和俊)
・からだのつくり方とその利用法(道上達男)
・タンパク質をデザインして産業や医療に応用する(新井宗仁)、他
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 地味な装丁ですごく堅い印象の本ですが(汗)、内容は意外に面白いものもありました。
 特に「いきモノづくりへの挑戦」という講義は、小さな機械を作るMEMS技術に関するものだったのですが、モノづくりの材料として、従来の半導体、プラスチック、金属ではなく、細胞やDNA、タンパク質を使おうという研究で、興味津々で読み進めてしまいました。
 細胞は「べとべとして変形するし、どれひとつとして同じ形をしていない」ので、機械部品には向いていません。だから機械工学的に細胞を扱うために、規格化された機械部品と同じように加工していくことを試みているのです。ここでは、レゴブロックのように組み立てられる部品を作るために、点型と線型と面型の3つのタイプの組織づくりをしていました。すごく面白くて応用力も高そうな研究ですね。もっとも一歩間違うと、何か怖いことにもなりそうな気もしますが……(フランケンシュタイン的な意味で)。
 この「金曜特別講座」は、高校生と大学生を対象に、かれらが論理的思考力という武器を身に着け、あらゆる分野で縦横無尽に駆け巡るためのガイドとなるよう、教養学部の教員たちが学問研究の面白さや重要さをわかりやすく解説してくれているそうなので、一般人にとっても分かりやすい内容のものが多かったように思います(一部、専門家向けとしか思えない内容のものもありましたが……)。
 高校生、大学生が進路選択の参考となる講義を心掛けているようですので、どんな分野に進学しようか迷っている方は、ぜひ読んでみてください。
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 このシリーズには、同じ第2弾で文系向けの『異なる声に耳を澄ませる (知のフィールドガイド)』の他、既刊の第1弾『科学の最前線を歩く (知のフィールドガイド)』(理系)、『分断された時代を生きる (知のフィールドガイド)』(文系)もあります。
 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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