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第1部 本

生物・進化

博士の愛したジミな昆虫(金子修治)

『博士の愛したジミな昆虫 (岩波ジュニア新書)』2020/4/18
金子 修治 (編集), 鈴木 紀之 (編集), 安田 弘法 (編集)


(感想)
 ジミな虫たちの驚きの生態、植物や他の虫たちとの複雑怪奇なからみ合い……10人の昆虫博士たちが、愛するジミ虫の研究を熱く語ってくれる本で、内容は次の通りです。
第1章 すみわけ、食べわけ、サバイバル!(虫たちの食べ物選び)
第2章 共進化が生んだ「オンリー・ユー」(虫と植物の深いつながり)
第3章 敵か、味方か? 関係はフクザツなのだ(寄生などの虫たちの複雑な関係)
第4章 外来種がやって来た!(ヒアリなどの最近日本にやってきた虫たち)
第5章 多様なムシの集まり、食うか食われるか!(多種多様な虫たちの共存)
   *
 ジミな昆虫たちの生態や生存戦略を詳しく知ることが出来るだけでなく、ジミ虫を愛する研究者たちがどのように大学を選び研究者になったか、どのように研究しているのかなど、虫の研究者の実態も知ることが出来ます。
 例えば「第1章 すみわけ、食べわけ、サバイバル!」の「逃げるが勝ち! のモンシロチョウ(大崎直太)」の話。農学博士の大崎さんが、モンシロチョウとその近縁のチョウはどんな食草を利用しているのか、それをめぐる競争があるのか、あるならば、どのような競争が何故起こるのか? を調べたものです。
 モンシロチョウには、モンシロチョウ、エゾスジグロモンシロチョウ、スジグロモンシロチョウの三種がいるそうです。大崎さんは、それぞれが利用している食卓が、それぞれにとって最もよい選択だと考えていたそうですが、三種のチョウの幼虫をそれぞれ異なる三種すべての食卓で育ててみると、どの食卓でも同じように良く育ったそうです。
 それでさらに調べてみると、エゾ(エゾスジグロモンシロチョウ)は「天敵不在空間」のために食草を選んでいたのが分かりました。エゾの生息環境には、幼虫に産卵するコマユバチという寄生者がいるため、栄養的には不利でも、他の植物に覆われていて天敵から見つかりにくいハタザオ属植物を利用していたのです。
 またモンシロ(モンシロチョウ)は、温かい環境で生育の早いキャベツを利用することで寄生者から逃げ勝ち。スジグロ(スジグロモンシロチョウ)は、天敵のコマユバチの卵を殺してしまう能力があることと、「繁殖干渉」でエゾとの競争を勝ち抜いたことで、エゾより栄養価の高い食草を選べているのだとか。(なお繁殖干渉とは、二種の近縁腫がいて、これらが異種間で交尾をしてしまって不妊になる、あるいは、生まれた子が不妊ならば、数の多い種が少ない種を排除する、という現象のことだそうです)。モンシロチョウたちは、自分に適した生存戦略をとっていたんですね。
 この他にも、身近なジミ虫たちのさまざまな生態を知ることができて、とても興味深かったです。
 昆虫が好きな方はもちろん、生物が好きな方はぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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