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第1部 本

天文・宇宙・時空

私たちは時空を超えられるか(松原隆彦)

『私たちは時空を超えられるか 最新理論が導く宇宙の果て、未来と過去への旅 (サイエンス・アイ新書)』2018/10/16
松原 隆彦 (著)


(感想)
 タイムマシン、あるいは究極の宇宙船のしくみは? 宇宙の果て、時空を超えたところにあるものとは? フルカラーのイラストや写真を使って、時間や空間を旅する方法などを解説してくれる本です。
 未来や過去という時間、星々が輝く宇宙空間をどこまでも自由に旅していくことができたら……これは、物理学的見地によれば、ありえないことではないそうです。
「この(相対性)理論によれば、動いている物体は止まっているものから見て、時間の流れが遅くなる。だが、私たちが日常的に経験するような速さでは、その時間の違いは小さすぎて実感することはできない。時間の流れが体感できるほどに遅くなるのは、動く速さが光速に近づいた場合だ。これは相対性理論の「ウラシマ効果」として知られる現象である。」
 そして「2 未来へ向かう」では、1G で加速する宇宙船での旅行を例に、その「ウラシマ効果」を計算して説明してくれるのです。
「宇宙船を1Gで加速すると、地球の重力と同じ力が働くので、快適に過ごせる」
「宇宙船の加速度を1Gに保ちながら1年間も続けて進めば、かなり光の速さに近づくことができる。」
「1年後には31万km/sほどになる。光速は30万km/sだから、光の速さを超えている。だが、相対性理論では、光速に近づけば近づくほど加速しにくくなり、光の速度に到達するには無限の力を必要とする、したがって実際には、光の速さを超えることは決してない。相対性理論の効果を正しく取り入れて計算すると、地球から見た1年後のこの宇宙船の速さは光速の72%ほどになる。これだけ速いと、ウラシマ効果が発揮されてくる。こうして、地球の重力加速度で年単位の宇宙旅行を続ければ、けっこう未来へ行くことができるのだ。」
「この宇宙旅行の間、宇宙船内にいつも1Gがかかるようにするためには、目的地までの中間地点で加速から減速に切り替えればよい。つまり、目的地に止まっていた宇宙船を1Gで加速しながら目的地に向けて進み、中間地点で最大の速さになった後、そこから目的地までは減速し続ける。こうして宇宙旅行の間ずっと地球上と同じ重力が働くような、快適な環境を作り出すことができる。」
「このような往復旅行を行えば、相対性理論のウラシマ効果がきいて、未来の地球に降り立つイことが出来る。」
 つまり、なんと「1G宇宙船で往復すると、未来の地球へ行ける」のです! 計算によると、往復所要時間1年の場合では地球の経過時間は1年4日、5年の場合は6年6か月、10年だと25年になるのだとか☆ 楽しく遠くの宇宙まで観光旅行に行って、地球に戻ってくると他の人たちより若くなっている……なんか嬉しいような気もしますが、10年の旅行だと15年も差がついてしまうから……話がまったく合わなくなってしまいそうですね(汗)。
 でもこういう「光速で進む宇宙船」は、推進力に莫大なエネルギーを必要とするだけでなく、砂粒大のものと衝突しただけで破壊的な衝撃を受けてしまうとか、宇宙背景放射で非常に高温になるとか、技術的な問題がたくさんあるそうです。
 現実的に考えると、実現不可能なように思える「1G宇宙船」ですが、現在、私たちが普通に使っているスマホだって、100年前の人たちから見れば「魔法のような機械」なのですから、もしかしたら実現可能なのかも……?
 遠い宇宙への旅行が、なんだか身近なもののように案内してくれる本でした。宇宙や時間・空間に興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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