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第1部 本

科学

COSMOS コスモス いくつもの世界(ドルーヤン)

『COSMOS コスモス いくつもの世界』2020/5/15
アン・ドルーヤン (著), 臼田-佐藤 功美子 (監修),


(感想)
 宇宙と地球の過去と未来、進化と地球環境、さらには量子論や原子爆弾、人類の歴史まで……地球と人類の「いくつもの世界」を、ナショナル・ジオグラフィックならではの美しい写真やイラストとともに旅する珠玉の科学ドキュメンタリー。米国の科学者カール・セーガンさんとアン・ドルーヤンさんによって作られ、40年前に科学ブームを巻き起こした「COSMOS」シリーズの最新作です☆
 セーガン少年を魅了したニューヨーク万国博覧会(1939)。この本は万国博覧会のいくつものパビリオンを巡っていくような感じで、1章ごとに違った科学のテーマが新しい世界を見せてくれます。宇宙や量子論などのちょっと難しいテーマも、とても分かりやすい「詩的」な美しい文章で語られ、それを彩るのがナショナル・ジオグラフィックらしい美しい高精細写真やイラストという、素敵な「COSMOS」の万国博覧会。科学に詳しい人にとっては、リラックスして楽しみながら科学の総復習ができる読み物として、科学に詳しくない人にとっては、美しくて、わくわくさせられる博物館巡りのような感じで読み進められるのではないでしょうか。

 個人的には、「2. ハビタブルゾーンのはかない恩寵」の人類移住の話が興味津々でした。太陽は今から50~60億年後には、中心部にある燃料の水素を使い果たしてしまうので、人類が生き残るためには、どこかへ移住する必要があるようです。とりあえずは火星へ(太陽が中年期の終わりに差し掛かる10~20億年後の火星は、数億年程度ハビタブルゾーンになるそうです)。その後は木星の衛星、海王星も衛星トリトンなどが移住先の候補になるのだとか。
 そして移住先を探すためや、移動するための技術についても、いろいろ知ることが出来ました。重力レンズ望遠鏡という望遠鏡が考案されているようです。
「重力レンズ望遠鏡の仕組みはどうなっているのか。はるかかなたから飛び込んでくる光を検出器が集めて地球に信号を送るのだが、この検出器が接眼レンズ(アイピース)、空でいちばん明るい星である太陽が対物レンズとなる。全体としては、銀の環と黄色いダイヤモンドを中央に配した1個の宝飾品のように見えるだろう。透明でもない星をどうやってレンズにするのだろう。遠い惑星からの反射光が太陽のすぐ近くを通ると、太陽の重力でわずかに曲がる。光が収束する所は焦点と呼ばれ、対象がくっきり見える。長さ800億キロメートルの重力レンズ望遠鏡を使えば、見られないものはない。(中略)はるか遠くにある惑星の成分を分析して、生命の兆候があるかの判定もできる。分子は特定の色(波長)が目印になっているので、光を色ごとに分解してくれる分光器を使って、大気を構成する分子を特定できるのだ。もし酸素やメタンがあれば、生命の存在が期待できる。重力レンズ望遠鏡は遠く離れた惑星の表面全体を映し出すことも可能だ。重力レンズ望遠鏡は、可視光線をとらえる光学望遠鏡だけでなく、電波望遠鏡にもなる。つまり、光だけでなく、電波信号も1000億倍拡大できる。」
 また他の惑星への移動についても、次のようなアイデアがあるのだとか。
「マストが数キロメートルにもなる巨大帆船で船団を構成する。船は極薄の巨大な帆に光子を受ける。真空の宇宙空間では、光子がぶつかったわずかな力でも推進力となり、光の速度の数分の一ぐらいまで加速するだろう。太陽がはるか遠くになったら、強力なレーザー装置をブイのように船外に放出する。船体は揺れるが、原子力エンジンを使って安定させる。そこから発射されるレーザー光線は、一直線に帆を目指すだろう。宇宙空間の光のショーだ。恒星から距離が離れて光が弱くなったら、レーザー光の出番だ。この方法なら、プロキシマ・ケンタウリまでは20年で着く。」
「アルクビエレ・ドライブ方式の宇宙船はつまるところ重力波発生装置だ。宇宙船自体は静止しているように見えるが、前方の時空を圧縮させて波立たせ、後方では膨張させる。銀河を疾走するジェットスキーが、100光年をひとっ飛びするのだ。」
 ……太陽が終わってしまうのは確実なようなので、遠い未来には、本当にそんな船団が出来るといいですね。
 でも……その前に地球人自体が終わってしまうかも。「12. 人新世の成熟期」には、環境汚染や地球温暖化など、人類自身が及ぼしている悪影響のことも書いてありました。そして、それから地球を、人類の未来を守っていくのは、私たち自身だということも。
「もちろん、まだ手遅れではない。そうではない未来、別の世界の可能性は残っている。人新世は人類の目覚めの時代にもなり得る。新たに獲得した力に危険があることに警告を発し、地球規模で自然と調和しながら科学とテクノロジーを使っていくのだ。意識のある人びとは世界中にいて、インターネットで連携を強めている。未来はまだ選べる。ならばともに選択しようではないか。」
 地球の現在・過去・未来を考えさせてくれる素晴らしい科学ドキュメンタリーだと思います。ぜひ読んでみてください。
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 COSMOSシリーズの他の本『COSMOS』に関する記事もごらんください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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