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第1部 本

天文・宇宙・時空

火星ガイドブック(鳫宏道)

『火星ガイドブック』2018/7/20
鳫 宏道 (著)


(感想)
 小さな望遠鏡で観察しスケッチしていた先人の観測から現在の火星に関する知見までを、200余のオールカラーの写真や図表で解説してくれる火星のガイドブックです。火星の四季、砂嵐、地形、火星探査の歴史、生命の存在可能性などを、たっぷり教えてくれます。
 火星には地球と同じように四季の季節変化があるそうです。
「その理由は自転する軸、地軸が公転面に対し、同じような傾きを持っているからだ。地球の地軸は23.4度、火星は25.2度という傾きがある。したがって、地球にあるように火星にも、二至二分、春分、秋分、夏至、冬至が生まれる。」とのこと……ふーん、そうなんですか。
 そして、火星にはすでに意外に多くの探査機が送り込まれているようですが、「火星の石」はいまだ手に出来ていないようです。それなのに実は地球で、「火星から飛んできたとされる隕石が見つかっている。」のだとか。
「地球に落ちた隕石は、その起源は火星の軌道と木星の軌道の間に多くみられる小惑星の一部であると考えられてきた。しかし1970年頃から分化が進んだエイコンドライトと呼ばれる隕石の種類の中に、その隕石が形成された年代が、1億年から20億年前というものが見つかりだした。形成年代が45.5~45.6億年前付近を示す多くの隕石より新しいうえに、玄武岩など地球に似た表面を持つ月や火星の岩が、隕石衝突で砕かれて宇宙空間に弾き飛ばされ、それらの一部が地球に落ちてきた可能性が考えられる。(中略)火星起源と推定される根拠は、隕石中に含まれている気体の成分がバイキング探査機により分析された火星の大気と一致したのだ。(中略)そして、火星の石を直接手に取ることができない今、火星の地質や進化の過程を教えてくれる唯一の物質になっている。」
 ……火星に送り込まれた探査機は、いろんなことを明らかにしているようです。
 この本には、たくさんの火星の写真が掲載されていますが、ちょっと見ただけだと、地球のどこかの砂漠の写真かと思えてしまうほどの高精細! 火星はこんなに写されていたんですね! この貴重な写真をじっくり眺められるだけでも、この本を手に入れる価値は大いにあると感じました。
 火星にはすでにかなりの数の探査機が送り込まれていて、「いままで火星探査は、アメリカ、ソビエト・ロシア、ESA、中国、インド、そして日本が合わせて44回試み、23回の失敗、一部成功が3回、成功は18回、とのことである。」なのだとか。
 なかでもアメリカは、火星を周回する軌道船、人工衛星、バイキングランダーやマーズ・パス・ファインダー、オポチュニティーとスピリットなどの探査機を送り込んでいて、火星の画像を細かく撮影しているだけでなく、水の存在、地表の鉱物の分布、放射線の環境、さらには生命の痕跡を調査しています。残念ながら生命の痕跡は見つけられなかったのですが、どうやら水(氷)はあるようです。
「地球の南極大陸が氷河で覆われているように、火星の北極と南極にも白い水の地形(極冠)が広がっているのが見られる。それぞれ北極冠、南極冠と呼ばれる。火星の極冠の正体については、南北とも氷の本体をドライアイスが覆っている。」
 また、「火星の大気は驚くべきことに薄い大気の主な構成要素の二酸化炭素の約1/3を地表と大気でやり取りしている。つまり大気がいきなり凝固したり昇華したりしているのだ。」のだとか! 地球とはだいぶ環境が違っているんですね! このような火星の環境や地形・地質も、しだいに明らかになってきています。
 さらに、火星を観察する時に利用できるものとしては、(株)アストロアーツの天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータ10」というものもあるそうです。このソフトは、その日、その時の火星の位置、視直径、表面模様、地球から見た火星の表面の中央緯度、経度、火星の黄道における太陽黄経などの情報が得られるのだとか……すごく便利そうですね☆
 火星の貴重な写真や興味深い情報が満載の『火星ガイドブック』でした。ぜひ読んでみてください☆
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 鳫さんは、他にも『木星・土星ガイドブック』などの本を出しています。
 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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