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第1部 本

天文・宇宙・時空

重力で宇宙を見る(二間瀬敏史)

『重力で宇宙を見る』2017/10/19
二間瀬敏史 (著)


(感想)
 アインシュタインによって予言された「重力波」と「重力レンズ」は、21世紀の新たな宇宙論の扉をどのように開いたのか……「重力波」と「重力レンズ」をキーワードに、「時空」の歪み、宇宙誕生の謎、そして宇宙の真の姿に迫っていく本です。
「重力波」という、あまり聞きなれない言葉がニュースになって驚かされたのは2016年2月。アインシュタインが相対性理論を元にして「重力波」の存在を予言してから、ちょうど100年後に、ついに重力波が検出されたことが発表されたのです。そして2017年9月、ノーベル物理学賞を「重力波検出」が受賞しました。
 この当時、TVでさかんに紹介されていた「重力波」の検出方法、すごく興味津々で見ていたのですが、肝心の「重力波」については、分かったような分からないような感じのまま「流して」しまっていました(汗)。この本は、その「重力波」と「重力レンズ」の凄さを、分かりやすく説明してくれます。
 重力波は、ブラックホールのような非常に強い重力を持つ天体が衝突・合体する時などに生じるエネルギーの波だそうです。
「検出された重力波GW150914を作った正体は、ブラックホールなのです。それも太陽質量の36倍程度と29倍程度の質量の2つのブラックホールで、それらが衝突・合体して、太陽質量の62倍の質量をもったブラックホールができたのです。この一連の現象から出てきた重力波がGW150914です。」
「合体する前の2つのブラックホールの質量は太陽質量の36倍と29倍でした。それらを足すと65倍になります。一方、合体して出来たブラックホールの質量は、太陽質量の62倍です。このことは、太陽3個分の質量が「消えた」ことを意味しています。衝突から合体、そして1つのブラックホールに落ち着くまでの時間が0.2秒。その間に太陽3個分の質量が消えたのです。消えた質量は、いったいどこへ行ったのでしょうか。実は消えた質量こそが、1000億個分の銀河が出すエネルギーになったのであり、そのエネルギーを伝えたのが重力波でした。」
 ものすごくスケールの大きな話に、SFを読んでいるみたいに、わくわくしてしまいました。なるほど……今から13億年もの昔、宇宙のかなたで起きたブラックホールの衝突による「重力波」が、2015年9月に検出されたってことだったんですね! なんだか夢みたい……。
 この「重力波」検出には、すごい意義があるそうです。
「今後は、重力波を観測することで、光ではけっして見えない天体や宇宙の現象を「見る」ことができます。たとえば、宇宙誕生直後に生まれた「原始重力波」を観測すれば、私たちは今から約138億年前に生まれた超ミクロの宇宙の様子を知り、宇宙創成の謎に迫れるのです。」
 同じように「重力レンズ」の活用も期待されているそうです。銀河など非常に重い天体の重力が、レンズのような役割をして、背後の天体からの光の進路を曲げるために、天体の像が複数に見えたり、像が明るくなったりするのが「重力レンズ」。この現象を応用すると、たとえば、宇宙の構成要素の95%を占める「暗黒物質」と「暗黒エネルギー」という謎の物質やエネルギーの分布や性質を調べ、その正体に迫れると期待されているのだとか。
 この本は、「重力波」と「重力レンズ」の基本知識から最先端の研究動向までを、一般人向けに分かりやすく紹介してくれるので、すごく興味深かったです。「銀河団による重力レンズを利用した天然の「重力レンズ望遠鏡」」なんていう、本当にSFみたいなフレーズに心が躍りました(笑)。
「強い重力レンズに限らず、重力レンズは大小様々な天体の質量分布を直接観測できます。そのため、X線、可視光、赤外線、電波などの観測と組み合わせることで、これまで経験的にしかわからなかった天体の質量と明るさの関係など、天体の性質をより正確に、より詳細に解明することができるのです。」と言われているように、「重力波」や「重力レンズ」によって天文学(観測)が飛躍的に発展し、宇宙の成り立ちがどんどん解明されていくのかもしれません。今後も、期待して注目したいと思います☆
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 二間瀬さんは、他にも『宇宙の謎 暗黒物質と巨大ブラックホール』などの本を出しています。
 なお社会や脳科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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