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第1部 本

ユーモア

「弱くても勝てます」: 開成高校野球部のセオリー(高橋秀実)

『「弱くても勝てます」: 開成高校野球部のセオリー』2014/2/28
高橋 秀実 (著)


(感想)
 超進学校の少年たちの、賢くてトホホな部活生活を描いたスポーツ・ノンフィクションです(笑)。
 甲子園も夢じゃない? 平成17年夏、東大合格者数日本一で有名な開成高校の野球部が、なんと東東京予選ベスト16に勝ち進みました。グラウンドでの練習は週1日、エラーでも空振りでもかまわない、勝負にこだわりドサクサに紛れて勝つ。監督の独創的なセオリーと、下手を自覚しながら生真面目に野球に取り組む選手たち……あまりに面白くて、読みながら、くすくす笑いが止まりませんでした。
 だって「あの」開成高校ですよ? 頭がいいのは折り紙つきなのに、甲子園にまで出ようとか、そんなの都合よすぎない? と多少のヒガミもありつつ読み始めたのに……スポ根感がまるでなし! ごくごく普通の、やる気があるのか、ないのかも分からないような進学校の部活状態なのでした(笑)。
 それでも「あわや甲子園?」の期待が持てるのは何故か? そこには、野球というスポーツならではの秘密があったのです(笑)。
 個人的に、野球は好きではないスポーツの一つで、甲子園にもほとんど興味がなかったのですが、野球にはそんな特徴があったのか! さすが東大出身の青木監督に率いられた開成高校生たちは戦い方が違うな! と感心させられました。(ちなみに個人的に野球が好きではない理由は、スポーツとしてやる場合、野球は待ち時間が長すぎて運動効率が悪すぎるから。それで学生時代は他の運動系部活をやっていたのですが、野球部が校庭を広く独占してしまう上に、球が当たると痛いではないかチクショウメというわけで、野球は好きではなかったのです)。
 えーと、さて、その秘密とは、まさに「弱くても勝てます」そのもの。秘訣は「ドサクサに紛れる」ことだそうです。超一流選手でも「3割しか打てない」という野球の難しさ。そして幼い頃から甲子園を目指す少年たちの日々の真摯な努力……ある意味、これを逆利用した戦略で攻め勝つのです。
 試合中に「野球しようとするな」と叫ぶとか、僅差で勝った試合の後、「これじゃまるで強いチームじゃないか」と怒るとか、まるで常識はずれの青木監督。複雑なサインだって楽々覚えられるんだろうなーと思われる開成高校生なのに、なんとサインすらありません。
「サインを出して、その通りに動くというのは練習が必要です。ウチはそんな練習をやらせてあげる時間もないし、選手たちも器用じゃありませんから。」
 ……な、なるほど……(苦笑)。だからサインはなしで、試合中の選手は各自の判断で動くそうです。
 守備力の鍛え方も、「とれそうなものを取る」のに集中。難しいボールは取らなくていいんです。なぜなら来る確率が低いものまで取れるようにするには、長時間の練習が必要になるから(笑)。甲子園を目指している真面目な他の球児たちとは、練習内容がまったく違っています。だから、守備力を高めるよりも攻撃力を高めることに特化。その攻撃力も、とにかく大振りして長打を狙う。強打者が勢いをつけて、相手が「ええ?」と動揺したドサクサに紛れて勝つのがセオリーなのです。
 こんな勝ち方があるんだ……笑いながらも「目からウロコ」がぼろぼろと。この戦略、もしかしたら小規模企業の経営にも活かせるかも……?
 すごく面白いスポーツ・ドキュメンタリー(?)でした。野球をあまり知らない一般人でも、とにかく笑えるだけでなく、いろいろ考えさせられ、何かしらヒントを掴めるような気すらしてしまいました。
 野球などスポーツに打ち込んできた人にとっては、未知の戦略を知ることが出来て、すごく新鮮なのではないでしょうか(ただし、この戦略は「邪道」なので、本気でスポーツに打ち込む方は、「正攻法」で行った方が絶対にいいと思います。この戦略はギャンブル的に勝てる「可能性」があるだけで、実力が出てしまう長期戦では絶対に通用しません)。
 まあ、とにかく読んでみてください。いつの間にか肩の力が抜けていく感じがするので、お勧めです☆
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