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第1部 本

地質・地理・気象・地球環境

地球はなぜ「水の惑星」なのか 水の「起源・分布・循環」から読み解く地球史(唐戸俊一郎)

『地球はなぜ「水の惑星」なのか 水の「起源・分布・循環」から読み解く地球史』2017/3/15
唐戸 俊一郎 (著)


(感想)
 水から地球の歴史が見える……地球の水の「起源・分布・循環」の考察を通して、地球科学を俯瞰している本です。
 宇宙に浮かぶ青い星・地球。美しい天体写真を思い浮かべても、地球はまさに「水の惑星」と呼ぶにふさわしい天体だと思います。ところが、地球の水の「起源・分布・循環」という三つの謎は、いぜんとして大きな未解決問題のままなのだとか。この本は、最新の知見をもとに、その謎に、地球誕生からプレートテクトニクスまでの、さまざまな角度から迫っていきます。
 さて、地球の「水」というと、さっと思い浮かぶのは、広い海洋の海水、山上の湖や高原から流れる川、大気中の雲や水蒸気……ぐらいだったのですが、実は「海水の量は地球の全質量のたった0.023%」しかないそうです。そして「地球内部には海水よりずっと多量の水があることがわかってきた」のだとか。ふーん……地球内部の水っていうと……地下水? と単純に考えてしまいましたが……実は、液体の「水」という形ではない貯蔵されている水が大量にあるようです。
「水は鉱物と反応して、結晶構造の決まった位置が全て水素で占められている鉱物、含水鉱物を作ることがあります。」だそうで、蛇紋岩や黒雲母などの含水鉱物には、多量の水が入っているようです。「例えば、蛇紋岩の重量の約13%は水が占めています。」という話には、ええー! と驚かされました。でも「水が鉱物に溶ける」場合、鉱物に水が分子として溶けているわけではないそうです。「大抵の鉱物の結晶構造の中には、水分子が溶けるのに十分大きな空間はないからです。実際には、水分子は水素イオンと酸素イオンに分解し、それぞれが鉱物中の都合のよい場所に入ります。都合のよい場所とは、あまり鉱物のエネルギーを増やさずに入れる場所のことです。」なのだそうです。ふーん……。
 こんな感じで地中の岩石やマントル、さらには核にまで水が入っているかもしれないようです。「特に、核はおもに鉄からできていて、水素を大量に溶かしうることが知られていますが、今のところ、核の中の水素の量はまったくわかっていません。」なのだとか。
 その他にも、「海水の総量は、プレートテクトニクスにより地球内部から供給される水の量と、海溝からのプレートの沈み込みに伴い地球内部に戻っていく水の量のバランスによって、長期的には変動している可能性がある」とか、「アポロ計画で持ち帰られた月の石を、最新装置を用いて調べ直した結果、これまでの通説に反して、月の内部にもかなりの量の水が存在している可能性が出てきた」とか、興味深い話がいっぱい☆
 しかもすごくスケールの大きな話で、「地球の水の起源・循環を考察するには、他の地球型惑星や衛星の水についての研究も重要です。惑星ごとの結果を比較することにより、地球型惑星がどのようにして水を取り込み、その内部でどのように水が循環しているのか、また、それらの様子は惑星ごとにどの程度違うのか、という理解が進むからです。」と言って、考察は、広く太陽系の惑星にまで及んでいます。
 地球が「水の惑星」であることをさまざまな角度から深く考察しているだけでなく、「地球科学」とはどういう学問で、どのように研究を進めていくのかまで広く教えてくれる本でした。一般向けの「入門書」というには、ちょっと専門的過ぎですが、科学好きの方にとっては興味深い話が満載だと思います。ぜひ読んでみてください☆
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 唐戸さんは、他にも『地球物質のレオロジーとダイナミクス』などの本を出しています。
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 別の作家の本ですが、『地球の歴史 上 - 水惑星の誕生』、『地球の歴史 中 - 生命の登場』、『地球の歴史 下 - 人類の台頭』など、地球の歴史を学べる本は多数あります。
 なお社会や脳科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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