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第1部 本

社会

キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる(佐々木俊尚)

『キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる』2011/2/9
佐々木 俊尚 (著)


(感想)
 テレビ、新聞、出版、広告などのマスメディアだけを情報源とする人は激減し、いまや人々は、ツイッター、フェイスブックなど、人と人の「つながり」を介して情報をやりとりするようになっています。だれもが自ら情報を選んで、意味づけし、みんなと共有する「一億総キュレーション」の時代へと変化している……それを考察している情報社会論です。
「キュレーション」というのは、「無数の情報の海の中から、自分の価値観や世界観に基づいて情報を拾い上げ、そこに新たな意味を与え、そして多くの人と共有すること」だそうです。
 この本は「プロローグ ジョセフ・ヨアキムの物語」から始まります。ヨアキムさんは七十歳を過ぎてから独学で絵を描き始め、自分の家の窓にそれを掛けていたのですが、ホップグッドさんというカフェ経営者がそれに価値を見出して購入し、自分のカフェで個展を開くように持ちかけたところ、しだいに世の中の人々にも価値を認められるようになり、死後に遺作展がニューヨークのホイットニー美術館で開催されるほどの名声を得ることになったそうです。
 これについて佐々木さんは、「ヨアキムの作品というアートは、ヨアキムだけでなく、彼を見出したホップグッドとの「共同制作」だったともいえるでしょう。」と言います。「つくる人と、それを見出す人」二人の共同制作だったのだと……。
 なるほど、と思いました。
「これからの世界は、そうやって「つくる人」と「見いだす人」がお互いに認め合いながら、ひとつの場を一緒につくるようにして共同作業をしていく。」のだそうです。この本は、そういう新しい関係が私たちの社会を変えていくということを考察しています。
 そして大勢の「キュレーション」活動を行っている人々や、その方法を紹介してくれるのですが、その中ですごく参考になったのが、音楽プロモーターの田村直子さんが「ジスモンチ」というミュージシャンを日本に呼んだ時の活動の仕方。同じような音楽性を持っている歌姫マリーザ・モンチのコンサートに集まる人々にジスモンチの来日情報を撒くとか、ネットでギター愛好者の集まるコミュを探して情報を投げ込んでいくとか、来日公演のチケットを本当に購入してくれそうな人々に、ピンポイントで情報を与えていくのです。これ、すごく費用対効果が高い広告方法だなと思いました。
 また、共感できたのは、「情報の真贋なんてだれにもみきわめられない」という意見。1995年にインターネットが社会に普及し始めると、「これからは情報の真贋をみきわめるのが、重要なメディアリテラシーになる」とさかんに言われたそうです。でも……そんなことはほとんど不可能ですよね?
 そして佐々木さんは、「事実の真贋を見極めることは難しいけれども、人の信頼度を見極めることの方ははるかに容易だ」と言います。なぜなら「ネットは人の過去の言動を透明にする」から。「(これからの人々は、)自分の過去の行動履歴で信頼度を高める努力をするしかない。そういう時代に進みつつあるのです。」のだそうです。
 確かにそうだと思います。そして私自身も、そのように心がけています(汗)。
 情報社会の過去から現在を知ることが出来るだけでなく、これからの情報社会のあり方を考える上でも、すごく参考になる本でした。読んでみてください。
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 佐々木さんは、他にも『21世紀の自由論 「優しいリアリズム」の時代へ』、『いつもの献立がごちそうになる! 新・家めしスタイル』などの本を出しています。
 なお社会や脳科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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