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第1部 本

ビジネス・経営

チェンジ・ザ・ルール!(ゴールドラット)

『チェンジ・ザ・ルール!』2002/10/11
エリヤフ・ゴールドラット (著), 三本木 亮 (翻訳)


(感想)
 情報システム投資を利益に結びつける難しさを鋭く描写し、成功に必要なのはシステムそのものではなく、それを活用するためのルール変更だということを小説形式で教えてくれる本。ベストセラー『ザ・ゴール』の第3弾です。
 さて今度の舞台は、ERPソフトを開発して急成長中のBGソフト社。同社の共同設立者であるスコットとレニー、営業部長のゲイル、関連システム・インテグレータKPIソリューションズCEOのマギーが物語の中心人物です。
 BGソフト社は大企業中心の営業をしてきましたが、その市場の拡大はみこめず、販売してきたシステムは機能が多くなりすぎてサポートの負担が過大になりつつあるという、IT企業にありがちな困った状況にあります(汗)。
 そんな時、大手の顧客であるピエルコ社のCEOのクレイグから、新たな問題が持ち込まれました。「業務の見通しがよくなる」といったあいまいなメリットではなく、導入したシステムがどう「利益」に結びつくのかを説明して欲しいと取締役会で要請があったというのです。マギーたちがこれを調査した結果、驚くべきことに、導入したシステムには、利益面でのメリットがほとんどなかったという厳しい事実に直面することになってしまいました……。
「システムが複雑になり過ぎたんだ。(中略)モジュールを一つでもいいから表裏すべてわかっている奴は一人もいないと思うよ。あまりに巨大化して複雑になってしまったんだ。(中略)組んだプログラムは複雑極まりないから、バグを全部見つけ出してチェックするのはほとんど不可能に近い。」
「クライアントの言葉ではなく、自分たちにしか分からないコンピュータシステムの専門用語を使って顧客と話をしている。」
 BGソフト社のレニーたちの言葉は、IT企業の現実を鋭くえぐります(汗)。読んでいて、うんうん、そういうのあるある……と何度も苦笑させられました。
 でも、もちろんBGソフト社の幹部社員たちはくじけません。
「どうしようもない問題にぶちあたった場合でも、必ずシンプルでパワフルな解決策があることを学んできた。しかし、そのためには視野を大きくもたなければいけない。問題をもっと広い視野から見ることで、初めて解決策が見えてくるのだ。」
 彼らは「顧客にとっていちばん重要なことは何か」を考え、「単にテクノロジーを販売するという考え方から、バリューを販売するという考え方への切り替え」を行いました。
 そしてピエルコ社とともに、情報システムの改善とともに、そのシステムを真に活かすための意識改革を実行していきました。「テクノロジーによって限界は取り払われたのに、古いルールは残したままだと問題が生じる」からです。それでも「改善することで新たな問題が生じる」など、前作と同じように困った展開もあるので、「ああ、そうか。じゃあ、どうしたら……」と考えさせられ、それが自然に問題解決思考の演習にもなったような気がします。
 この物語は、「いかにルールを変化させていくことが組織の改善にとって重要か」をじっくり教えてくれます。まさにタイトルの『チェンジ・ザ・ルール!』が本書の主眼です。
 組織というのは、「変わりたがらない」という性質を持つ者なので、「ルールを変える」ことはもちろん容易ではありません。それをいかに説得するか……この本の中では、「大芝居」を通して幹部社員たちを説得するのですが、こういうプレゼンテーションのやり方があるのか、と感心させられました。『ザ・ゴール2』で紹介された「移行ツリー」の形の一つなのでしょう(笑)。
 いろいろな面で参考になる小説でした。ぜひ読んでみてください。
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 ゴールドラットさんの他の本、『ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か』、『ザ・ゴール 2 ― 思考プロセス』、『クリティカルチェーン―なぜ、プロジェクトは予定どおりに進まないのか?』、『ザ・チョイス―複雑さに惑わされるな!』に関する記事もごらんください。
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 別の作家の本ですが、『「よかれ」の思い込みが、会社をダメにする―飛躍的成長を実現する全体最適のマネジメント』、『ザ・会社改造 340人からグローバル1万人企業へ』など、経営改革の参考になる本は多数あります。

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