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第1部 本

脳&心理&人工知能

21世紀の脳科学 人生を豊かにする3つの「脳力」(リーバーマン)

『21世紀の脳科学 人生を豊かにする3つの「脳力」』2015/5/21
マシュー・リーバーマン (著), 江口 泰子 (翻訳)


(感想)
「つながる」「心を読む」「調和する」、この3つの脳力こそが人類発展のカギであり、私たちがより良くくらすためのヒントとなることを、社会認知神経科学のリーバーマンさんが、脳研究の最前線の紹介とともに語ってくれる本です。
 社会認知神経科学とは、社会心理学が扱う分野に認知神経科学の手法を用いてアプローチする学際的な分野で「21世紀の脳科学」だとリーバーマンさんは言います。
 その研究や実験結果を通じて、私たちは意外にも(?)利他主義で、他者の幸せこそが自分の幸せと心の底から考えていることが明らかにされていきます。これを知って、すごく暖かい気持ちになりました。
 人間はもともと、「社会的なつながり」を強く求める生き物なのだそうです。なぜなら、人間の赤ちゃんは自分一人では食べ物を手に入れることが出来ず、食料も安全も他者に頼らなければ生きのびることが出来ないから……。このように「つながり」は、私たちが生き残る上で最も基本的な欲求と深く結びついているのです。
 この本では、fMRIを利用した実験で、人間の脳の性格を調べたいろいろな結果が紹介されます。
 例えば、身体的苦痛と社会的苦痛の両方で、脳の同じ領域が活性化するということが分かったそうです。薬局で買える鎮痛薬は、からだの痛みだけでなく社会的な苦痛も和らげてくれるのだとか。
 また、「自制のエネルギー量には限りがあるらしい。人間は基本的に、一度に一種類の自制心しか働かせられない。同時にふたつのものごとをコントロールしようとしても、そのどちらか一方しか、あるいは両方ともうまくいかない」という話にも説得力を感じました。「どんな種類の自制も、脳の同じプロセスを共有している」ということが研究で明らかにされてきたそうで、やはり過度なストレスは脳にとって負担になるのですね。
 さらにこれらの研究を通して明らかになった知見を活かして、リーバーマンさんは、「もっと賢く、もっと幸せに、もっと充実した毎日を」得るためのヒントも教えてくれます。
 なかでも特に共感したのは、「中学1~2年生は、「つながり脳」を鍛えるエクササイズを一日に20分、授業で行う。感情や衝動を抑える訓練は、なるべく早いうちに始めたほうがいいからだ」という意見。相手を思いやる気持ちや、自制心を鍛えられるエクササイズは、みんなの人生(自分も含めて)を幸福にするのにすごく役に立つので、ぜひ実現してほしいと思います。もしもそのことで「いじめ」を少しでも減らすことが出来るなら、本当に素晴らしいことです。
 21世紀の脳科学を、今後の私たちのより良い生活のために活かしていけると良いなと思いました。
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 別の作家の本ですが、『意識はいつ生まれるのか――脳の謎に挑む統合情報理論』など脳科学関連の本は多数あります。
 なお脳科学やIT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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