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第1部 本

脳&心理&人工知能

シンギュラリティ:人工知能から超知能へ(シャナハン)

『シンギュラリティ:人工知能から超知能へ』2016/1/29
マレー・シャナハン (著), ドミニク・チェン (監修, 翻訳), ヨーズン・チェン (翻訳), & 1 その他


(感想)
 イギリスの人工知能(AI)研究の第一人者のシャナハンさんが、AIの政治・経済的インパクト、AIと意識の問題、そしてシンギュラリティ問題までを、さまざまな思考実験を通して考察している本です。
「全脳エミュレーション」などの最先端のAI研究も解説されているので、AIへの入門書として読むことも出来ると思いますが、「人工知能搭載ロボット」や「ディープラーニング」等に関する技術的な解説は少ないので、AIの技術に興味がある方にとっては物足りないかもしれません。この本は、AIと意識の問題など、どちらかというと哲学的な内容の方に比重が置かれた本です。
 さて「全脳エミュレーション」とは、「一言で言えば、非生物学的(つまり計算的)な基質の上に、特定の脳の忠実で実用的なコピー(複数の場合もある)を作ること」だそうです。そしてその作業は、マッピング、シミュレーション、身体化という三段階に分けることができるのだとか。
 例えば、ニューロンの電気活動の記録の考えられる方法の一つとしては、「ニューロンが発火する時に蛍光染料を作り出すように遺伝子操作されたマウスを使う」方法があります。このマウスの大脳皮質に光を当てることによって、普通の光学顕微鏡でも脳内のすべてのニューロンの活動を記録することができる……なんだか凄いですね……こんな膨大な記録を考えただけでも眩暈がしそうです(汗)。まだまだ技術的な問題も多く、「全脳エミュレーション」の実現にはほど遠いようですが、それでも着実に実現への道を辿りつつあるようです。
 ご存じのように「シンギュラリティ」とは「人工知能が人間の知能を超える「特異点」のこと」です。そしてシャナハンさんは、「もし人間レベルのAIが実現したなら、超知能のAIもほぼ不可避」と言います。というのも、「生体脳と違い脳のデジタルなエミュレーションは任意に何回でもコピーできる。また、生体脳と違い、デジタル脳は加速できる」から……確かにそうだなと思いました。
 もしもAIが人間を凌駕する知能を持つようになったら、彼らは「人間に働かされる」ことをどう思うのでしょうか? 彼らには、我々人間と同じ法的権利を与えるべきなのでしょうか? そしてAIをうまく使っていくためには、彼らを「痛み」で支配するべきなのか、それとも人間と同じように扱ってあげるべきなのか……この本の中でシャナハンさんは、さまざまな思考実験をしていきます。
「結局のところ、すべてはAIの報酬関数に左右される」
 ……人間がAIの設計を行う時に、報酬関数を適切にデザインしなければ、破滅的な結果を導いてしまうのかもしれません。でも……人間の予測能力には限界があり、AIに「好ましくない挙動を絶対に発生させないような報酬関数を設計するのは極度に困難」なことも確実だと思います。
 そしてシャナハンさんの言うように、AIを暴走させないために彼らに「身体」を与えないようにしたとしても、超知能を獲得したAIは、言葉巧みに周囲の人間を誘導して自分の思う通りの行動をとらせることが出来るでしょう。
 今後、超知能を獲得すると思われるAIと人間がどう付き合っていくべきなのか、深く考えさせられる本でした。ぜひ読んでみてください。
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 別の作家の本ですが、『人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊』など、人工知能との未来を予測する本は多数あります。
 なお脳科学やIT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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