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第1部 本

防犯防災&アウトドア

防災

地震との戦い: なぜ橋は地震に弱かったのか(川島一彦)

『地震との戦い: なぜ橋は地震に弱かったのか』2014/12/3
川島 一彦 (著)


(感想)
 1995年の兵庫県南部地震から20年。横倒しになった阪神高速道路の高架橋が倒壊した映像をTV画面で見た時の衝撃は、いまだに忘れられません。普段なにげなく通っている高速道路が、大地震でこんなにもろく崩れるとは!
 この本は、耐震工学を専門とする川島さんが、建築現場で行われてきた地震との戦い(主に橋の建設)について、写真とともに技術的な解説をしてくれる本です。学術的な専門書ではありますが、直感的に分かるような図が多用されていますので、とても分かりやすくて参考になりました(たまに背筋が凍りましたが……)。
 大震災でもまったく壊れない橋を作るのは、技術的にも経済的にもとても困難ですが、大震災に耐えられる橋を作るには、壊したくない部分と、壊れてもいい(塑性ヒンジ)部分に分け、地震の時は塑性ヒンジ部分だけに塑性化が起こり、それ以外の部分には塑性化が起きないようにすることだそうで、予期した損傷モードに収めるような設計を行うのも一つの方法だそうです。
 なるほどなー、と思いました。
 震災後の橋の検査では、クラックが発見しにくいことがあったようですが、この技術を応用すれば、ある方向からの揺れで損傷する塑性ヒンジ部分をわざと作りこんでおくことで、どの方向からどのような揺れを受けたかの判断がしやすくなるとか、トラックなどの走行による日常的な揺れによる損傷も見やすくなるとか、センサー的な働きを示してくれて橋の維持管理をしやすくなるのでは……とも考えました。素人考えですが……(汗)。
 そして、この本の中で、特に興味深かったのは、2011年東北地方太平洋沖地震と、1978年宮城県沖地震の二度の震災を経験した橋に関する事例の紹介。2011年の震災の時は、前回を上回る規模の地震だったにもかかわらず、1978年の地震の後の新しい耐震基準で設計された橋や耐震補強された橋では、被害が少なかったのです。……これを読んで希望を感じました☆
 日本は昔から地震が多い国で、他国に比べ耐震技術は進んでいるとはいえ、まれにしか発生しない大地震で、すべての橋を倒壊させないということは、少なくとも当面の間は不可能なのだと思います。それでも一歩ずつ着実に耐震技術を向上させ、大震災でも持ちこたえられる橋の建設を進めていただきたいと願います。
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 川島さんは、他にも『工業378 土木構造設計 文部科学省検定教科書』などの本を出しています。
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 別の作家の本ですが、橋の耐震や維持管理に関する本には、他にも『続・実務に役立つ耐震設計入門(実践編)』、『老朽橋探偵と学ぶ 謎解き! 橋の維持・補修』、『橋の改修・改良図鑑』『100年橋梁―100年を生き続けた橋の歴史と物語』など多数あります。

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