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第1部 本

脳&心理&人工知能

どうすれば「人」を創れるか: アンドロイドになった私(石黒 浩)

『どうすれば「人」を創れるか: アンドロイドになった私 (新潮文庫)』2014/10/28
石黒 浩 (著))


(感想)
 限りなく人間に近いアンドロイドを製作・研究している石黒さんが、アンドロイドと人間の関わり方を通して、人間の本質へ迫る本です。
 ロボット学者の方の本なので、技術的な記述が多いのかと思ったのですが、どちらかというと心理学的な内容で、とても興味深かったです。
 ところで、人間そっくりのアンドロイドとは、日本科学未来館で話したことがありますが、正直言って、ちょっと気持ち悪い感じがしました(汗)。人間そっくりなだけに、なんとなく妙な感じがするのです。見かけが人間そっくりなのに動きがぎこちないと、まるでゾンビのような不気味さが出る「不気味の谷」という問題が発生するそうですが、日本科学未来館のアンドロイドは、かなり洗練されたアンドロイドだったので、ゾンビのような不気味さはなく、薄暗い所にいたら、たぶん本物の人間だと思っただろうと思われるほどだったのですが、「アンドロイド」として展示されていたので、逆に、その「人間そっくり」っぷりに違和感があったというか……(汗)。
 そもそも私は、「ロボットはロボットの良い所、人間は人間の良い所を活かすべき」派なので、「人間そっくりのアンドロイドなど不要」と考えています。ロボットが人間そっくりになる必要などなく、災害救助や介護などでも「機能」優先で開発すべきだと思います。
「人間そっくりのアンドロイド」の場合、その費用対効果があがるほどに活躍する場面というと、犯罪がらみ(犯罪者側、警察側の両方で活躍しそう)とか、兵器関連(兵器そのものとして、あるいは兵隊の精神力訓練のため)などのネガティブな連想がすぐに浮かんでしまうからなのですが……。
 それでもこの本は、とても興味深く読みました。
 自分とそっくりのアンドロイドを開発することは、実は「人間」を研究することにつながるのだなと感じたからです。とくに後半の「人間を“最小限”にデザインする」という研究は、「人間らしさ」とは何かを考えるための新しいアプローチになりそうな気がします。
 またこの本の主軸になっている「自分そっくりのアンドロイド」と「そのモデル」との関係に関するさまざまな考察も、いろんなことを考えさせてくれました。石黒さんは、自分そっくりのアンドロイド(本当にそっくりで驚きます)の経年変化(内部構造の劣化ななど)と、自分の経年変化(太ってきてしまった)の問題に対処するにあたって、モデルの自分の方を修復(整形)したとか(笑)。
 その他、アンドロイドの製作にあたって、自分の内部構造をMRI撮影した経験や、アンドロイドの内部メカとモデルとの関係に関する話も、とても面白かったです。
「自分そっくりのアンドロイド」と「そのモデル」との関係は、「自分そっくりの蝋人形」との関係とどう違うんだろうとか、もし「モデル」が双子だったら、「自分そっくりのアンドロイド」と「双子の片割れ」との関係はどんな感じになるんだろう、とかさまざまな妄想がふくらみました(笑)。
「人間そっくりのアンドロイド」は、正直、あまり増えて欲しくはありませんが(汗)、「人間そっくりのアンドロイド(最大限デザイン)」と「人間のミニマル(最小限)デザイン」の両面からの、「人間」研究には、とても興味を掻き立てられました。今後も注目していきたいと思います。
   *    *    *
 石黒さんは、他にも『アンドロイドは人間になれるか (文春新書)』、『人と芸術とアンドロイド― 私はなぜロボットを作るのか』などの本を出しています。
 なお脳科学やIT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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