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第1部 本

脳&心理&人工知能

脳科学がビジネスを変える―ニューロ・イノベーションへの挑戦(萩原一平)

『脳科学がビジネスを変える―ニューロ・イノベーションへの挑戦』2013/2/19
萩原 一平 (著)


(感想)
 商品開発、マーケティングなど、ビジネスで脳科学の知見を活かしていこうという、脳科学の経営への応用を幅広く紹介した本です。
 農業革命、産業革命、IT革命、そして今は「脳科学」研究が新たな革命を導きつつあります。グーグル、マイクロソフト、IBM、ディズニー、ユニリーバ、フィリップスなど、米欧企業はすでに積極的に研究開発に取り組み始めているそうです。
 例えばマーケティング分野で言えば、現在は、主にアンケートやグループ・インタビューなどで調査を行っているようですが、これらの手法には、「主観的」「感性や価値観の定量化が難しい」「本音と建前が違う」「設問(質問文の文章)で結果が変化する可能性」などの様々な問題があるために、実際の商品の売れ行きには結びつかない場合があります。
 実は、私たちの認知活動の95%は無意識で行われており、意識しているのはわずか5%であるといわれているので、マーケティングのためにアンケートなどで主観的評価(意識部分)を探っても限界があるのかもしれません。
 これに関して、この本ではとても興味深い研究結果を紹介してくれています。27人の男女に、まだ聞いたことのない数十曲を聞かせて、その時のfMRI(脳の状態計測)の記録とアンケートを調査しておき、3年後のその曲の売上数と比較したら、脳の反応量が大きい楽曲ほど売り上げ数も多かったそうです。ちなみに、主観的評価(アンケート)で聴いた楽曲の好みの結果と売上数の方は、相関がなかったとか。やはりfMRIを使って、無意識を知ることの方が、意味があるのかもしれません。
 さて、米欧の企業は、脳科学のビジネスへの応用にかなり注目しているようですが、その研究成果を、そのまま日本人に適用するのには問題があります。というのもアメリカ人の脳と日本人の脳は、その特性が少し違っているという研究結果があるからです。
 例えばこの本では、「日本人とアメリカ人の学生に水槽に魚が泳いでいるアニメーションを見せた研究では、アメリカ人は泳いでいる魚にフォーカスして魚の特徴などを説明する傾向が強く、日本人は水槽全体に何があるかを説明する傾向がある」という研究結果が紹介されています。欧米人とアジア人の価値観や文化の違いが、その行動様式や脳に影響を与えていると考えられ、ビジネス上でも、そのような違いを考慮しなければいけないと思います。
 今後は日本の企業も、より積極的に「脳科学」に注目していくべきなのでしょう。
この本では、脳科学を産業応用する際の課題として、
1)専門性の課題(専門家不足)
2)多様性の課題(異分野との融合が必要)
3)先進性の課題(日進月歩で研究が進んでいる)
4)倫理性の課題(適切な倫理基準を有さない)
5)事業性の課題(応用脳科学研究のアプローチや具体的プロセスが明確にならない
 など5点をあげています。
 その他にも、脳科学の活用をどのように進めていくべきかに関する考慮点や、倫理的な観点についてなど、脳科学をビジネスに適用していく際に、参考になる話も数多く掲載されています。脳科学やビジネスに興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
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 萩原さんは、他にも『ビジネスに活かす脳科学』などの本を出しています。
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 別の作家の本ですが、『なぜ脳は「なんとなく」で買ってしまうのか? ニューロマーケティングで変わる5つの常識』、『なぜ稲盛和夫の経営哲学は、人を動かすのか? ~脳科学でリーダーに必要な力を解き明かす~』、『勝ちつづけるチームをつくる勝負強さの脳科学 「ピットフォール」の壁を破れ!』、『ビジネスで圧勝できる脳科学』、『マインドフル・ワーク―「瞑想の脳科学」があなたの働き方を変える』など、脳科学をビジネスに活かすことに関する本は多数あります。
 なおITや脳科学関連の本は、変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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