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第1部 本

文学(絵本・児童文学・小説)

絵本・児童書(海外)

あしながおじさん

『あしながおじさん』1954/12/28
ジーン ウェブスター (著), Jean Webster (原著)


(感想)
 孤児院育ちの少女ジルーシャ(ジュディ)が、親切な紳士のおかげで、毎月一回、学業の進捗など生活状況の手紙を送るという条件で大学に進学できることになり、自分の日常の出来事をユーモラスに描いた手紙を送り続けるというお話です。だからこの話は、ほとんどがジュディからの一方通行の手紙です。が、その内容がとても面白くて、物語が発表されたのが1912年だとはとても思えないほど、ジュディの愉快な生活、お茶目な性格が活き活きと伝わってきます。
 世界中で愛されたこの物語は、何度も映画化、舞台化されています。
 この物語が素晴らしいのは、なんといってもジュディの性格が明るくて率直だというところにあるのだと思います。支援してくれることになった紳士は、本名を教えてくれず、「ジョン・スミス」宛てに手紙を書くように言うのですが、なんとジュディは最初の手紙で、「でも、自分のことをジョン・スミスと呼ぶようにおっしゃるかたに、どうやってていねいにしたらいいのでしょうか。なぜもっと個性のある名前になさらなかったのでしょうか。」と言い、いっそのこと「物干し柱さま」に手紙を書く方がましなくらいだ、などと言うのです(笑)。それで彼女は、ジョン・スミスではなく、「あしながおじさま」と呼ぶことに勝手に決めてしまいました。これが本のタイトル『あしながおじさん』になるのです。
(※ここから先は、物語の核心にふれるネタバレを含みますので、結末を知りたくない方は読み飛ばしてください)
 こうして始まるジュディの手紙は、本当に素直で楽しくて、ところどころに描かれるヘンテコなイラストもいい味だしていて……たとえ、つまらない手紙でも、楽しさを演出したかったら「ヘンテコなイラスト」を手紙に書けばいいのだというワザも覚えることが出来ました(笑)。
 こんな手紙を貰い続けたら、その子のことを好きにならないわけがありません。しかもジュディには、すごく良いところがたくさんあるのです。
 例えば、とても素直なこと、真面目に勉強するところ、好き嫌いも正直に打ち明けること、友達と打ち解けて付き合えること、物欲の少ない(我慢できる)ところ、自分の力でなんとかしようと努力し続けるところ……数え上げると切りがないほどです。
 でも……すごく正直者のジュディなのに、親友のサリーにも自分が孤児院育ちだということを最後まで打ち明けないんですよね……。でもこれはしょうがないのだと思います。「孤児」になったのはジュディの責任ではないのですから。だから一読者としては、ジュディの気持ちも分かるし、秘密にしていることも許せますが、もし自分がサリーだったら、隠し事をされていたようで悲しいと思うかもしれません。複雑な気がしました……。
 さて、物語はジュディの大学卒業の後、終わりを迎えます。
 最後の五通の手紙で、事態は急速に展開していきます。
 最初にこの話を読んだ子供の頃は、「あー、手紙が間に合って本当に良かった。間に合わなかったら二人とも不幸になるところだった……」とすごく単純にホッとして読み終えたのですが、大人になって読み返してみて、同じように「間に合って本当に良かった」とは思いましたが、たとえ間に合わなくても、少なくともジュディの方は、結局は幸せな人生を送れたのだろうと思います。だってジュディは自分で言うように「わたくしは、もともと、ふつうの平凡な平和はあまり好きではありませんでした」し、頑張って書いた小説の原稿を出版社から送り返された時にも、すごく悲しい気持ちになったのに、次の日には、すでに新しい小説の筋書きを考えていたのですから(笑)。そして次のように手紙に書きます。
「わたくしを悲観論者だといってせめることは、だれにもできません。もし仮に自分の主人や十二人の子どもたちを地震で一日のうちに地下にのまれてしまったとしても、次の朝には、にこにこしながら元気よく飛び起きて、違う主人と子供の一組をさがしはじめることでしょう」
 ……どんなことがあっても、いつも、この意気でいたいものですね☆
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 ウェブスターさんの『続・あしながおじさん』に関する記事もごらんください。
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 あしながおじさんには、『あしながおじさん (光文社古典新訳文庫)』などの他の翻訳本や、CD付英語シナリオの『あしながおじさん』もあります。

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