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第1部 本

 IT

仮想戦争の終わり サイバー戦争とセキュリティ

『角川インターネット講座 (13) 仮想戦争の終わり サイバー戦争とセキュリティ』2014/12/23
土屋 大洋 (監修)


(感想)
 サイバー戦争とセキュリティについて概観した本です。
 この本のタイトル『仮想戦争の終わり』は、ネットの仮想戦争が終わって平和になった、という意味ではありません。サイバー戦争は小説や映画の中の仮想戦争ではなく、もはや現実の戦争となっている(!)という意味のようです。
 二部構成となっていて、「第一部 変容するサイバーセキュリティ」は、サイバーセキュリティがもはや単に技術的な問題ではなく、犯罪や経済システムの根幹に影響を与える社会的インパクトを持つ問題になっていることを論じています。また「第二部 サイバーセキュリティの国際安全保障」では、国際問題化しつつあるサイバーセキュリティをどう理解し、物理的な紛争へのエスカレーションをどう止めるかを検討しています。
 なお、この本は「角川インターネット講座13」という位置づけですが、サイバー戦争とセキュリティの概要紹介という内容なので、これ以前の12冊を読んでいなくても、一般的なコンピュータ、ネットに関する知識があれば、たいたい理解できると思います。
 さて、私たちはインターネットを通じて、のんびりと情報検索や買い物を何気なく行っていますが、この世界は決して平和ではありません。毎日のように迷惑メールが届き、その中には偽の銀行サイトに誘導しようとするものや、「あなたの情報が流出しています」と不安をあおって、怪しげなセキュリティ対策(?)を実行させようとするものもあります。インターネットでは、気が付かないうちに、昼夜分かたず国籍不明のサイバー攻撃が仕掛けられているのです。怖いですね……。
 この本では、個人情報から国際社会の安全保障まで、インターネットに潜むリスクを広範囲に解説してくれます。
 特に、「1 サイバー攻撃と防御の基礎」(サイバー攻撃の歴史、実際の手法、今後の動向と対策)や、「3 サイバー攻撃の主体とサイバー防衛のための人材育成のあり方」は、セキュリティ対策や人材育成など、各企業でも必要とされるような情報を簡潔にまとめてあるので、参考になるのではないかと思います。
 ただしこの本は、「概要紹介」という感じの本ですので、実際にセキュリティ対策を行う場合や、人材育成を行う場合に、この本だけで終わらせるわけにはいかないと思います。なにしろサイバー戦争からセキュリティまでを一冊にまとめているので、各章には、それほど深い内容はないのです(汗)。セキュリティの専門家向けというよりは、サイバー戦争やセキュリティの現状を概観したい一般の方に向けた本だと思います。
 それでも、セキュリティに関して、かなり広範囲に各部門の専門家が分担して書いているので、「5 サイバーセキュリティと通信の秘密」(ネットワーク監視の法的課題、通信の秘密をめぐる問題)など、セキュリティ専門書では、あまり論じられない問題まで網羅されていて、広い視野から、サイバー戦争やセキュリティを眺めることが出来ると思います。
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 角川インターネット講座の他の本、『コンピューターがネットと出会ったら』に関する記事もごらんください。
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 別の作家の本ですが、サイバー戦争や情報セキュリティ関連の本には、『「第5の戦場」 サイバー戦の脅威』、『情報立国・日本の戦争 大国の暗闘、テロリストの陰謀』、『国家も個人も狙われるサイバーテロの全貌 (別冊宝島 2070)』や、米政府がNSAを使って秘密裏に個人情報をネット上で監視・収集していたことを暴露し、全世界に衝撃を与えたスノーデン事件関連の『スノーデンファイル 地球上で最も追われている男の真実』、『暴露:スノーデンが私に託したファイル』など多数あります。
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 また角川インターネット講座は、この他にも多数の本がありますが、ここではスペースの都合上、最初の数冊(『角川インターネット講座 (1) インターネットの基礎情報革命を支えるインフラストラクチャー』、『角川インターネット講座 (2) ネットを支えるオープンソース ソフトウェアの進化』、『角川インターネット講座 (3) デジタル時代の知識創造 変容する著作権』)だけを紹介します。

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