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第1部 本

文学(絵本・児童文学・小説)

絵本・児童書(日本)

ごんぎつね

『ごんぎつね』1986/10/1
新美 南吉 (著), 黒井 健 (イラスト)


(感想)
 貧しい男(兵十)がとったウナギを、いたずら心から奪ってしまった狐のごんの物語。新美南吉さんの代表作の一つなので、子供の頃に読んだ方も多いと思います。
 (※ここから先は、物語の核心にふれるネタバレを含みますので、結末を知りたくない方は読み飛ばしてください)
 子供の頃、このお話を初めて読んだとき、「ああ、しまった!」と思いました。貧しい兵十が病気の母親のためにとったウナギを、狐のごんが、つい、いたずら心から奪ってしまい、その後、母親は病気で亡くなってしまうのですが、ラストシーンで、涙がぽろぽろ零れ落ち、あまりにも悲しすぎて、「どうして、こんな本を読んでしまったんだろう……」と、ひどく悔やんでしまったほどです。
 それから何度も、「いったい、ごんは、どうするべきだったんだろう?」と考えましたが、いまだに答えを見いだせずにいます。「いたずらをすべきでなかった」と言うのは簡単ですが、子供はいたずらをするものですし、いたずらしながら成長していくものです。いたずらをまったくさせないようにして成長させるのは、むしろ精神的によくないような気がします。それに、ごんには、それほど悪気はなかったのです……。
 子供の頃は、悲しすぎて、「どうしてこんな物語を書く人がいるんだろう」と憎らしくさえ感じてしまっていたのですが、大人になって、ようやくこの物語の珠玉の価値を理解できるようになりました。
 この物語は、子供の心に、かけがえのない経験をさせてくれます。
 悪気のない、いたずらが、とんでもない結果を生んでしまうことがあること。
 良かれと思ってやったことでも、相手を逆に傷つけてしまうことがあること。
 口に出せずにいると、相手に誠意や思いが伝わらないこと。
 思い違いをしたまま報復すると、取り返しのつかないことになることがあること――。
 これらのことは、普段の生活では、幸いにも、なかなか経験できないことですが、「世の中には、こういうこともあるんだ」と子供の頃に知っておくことは、その後の精神的成長を、より健全な方向へ導いてくれるような気がします。
 ここで紹介するために、しばらくぶりに読み直したのですが、兵十の母親の葬儀で、ごんが考えた内容のところで、また涙がでました。誰に咎められたわけでもなく、それどころか示唆さえされていないのに、ごんは自ら兵十の気持ちを推し量って、反省していたのです。
 そして、火縄銃から青い煙が細く出ている印象的なラストシーン。子供の頃は、ごんがひたすらかわいそうでなりませんでしたが、今読み直すと、ごんは実は救われていたんだなあ、と感じます。
 それから、できれば兵十もまた、救われてくれれば良いなと思います。この後、兵十にお嫁さんが来て子供が出来て、その子に「ごん」の物語を聞かせてあげて欲しい。この物語を聞いて育った子には、きっと「思いやり」の心が根づくことでしょう。
   *   *   *
 ごんぎつねは、どの本で読んでも、心に深く刺さりますが、『ごんぎつね (日本の童話名作選)』は、黒井さんの優しいイラストもすばらしくて、一生の宝物になる本だと思います(子供の頃は、悲しいだけの本かもしれませんが……)。
 『手ぶくろを買いに』は、『ごんぎつね』の後に続けて読んで、その優しさにほっとした本です。このお話のおかげで、新美南吉さんを嫌いにならずに済み、『ごんぎつね』の真の価値にも気づくことが出来たような気がします。ぜひ、一緒に読んでください。いもと ようこさんの可愛いイラストの『てぶくろをかいに』もあります。
 新美南吉さんには他にも、『でんでんむしのかなしみ』、『新美南吉童話集―心に残るロングセラー名作10話』、『新美南吉童話集 (岩波文庫)』、『新美南吉童話集 (ハルキ文庫)』などの本があります。
 また『おじいさんのランプ』を教材にした『読書力がラクラク身につく名作ドリル『おじいさんのランプ』(新美南吉)』で、国語力の向上を図ることもできます。このドリルシリーズには、『読書力がラクラク身につく名作ドリル『トロッコ』『蜘蛛の糸』芥川龍之介』などもあります。

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