ちょき☆ぱたん お気に入り紹介 (chokipatan.com)

第1部 本

しかけ絵本(海外の作家)
 ※日本語の本(翻訳版)もあります

しかけ絵本・バタイユ、シャラット

The Foggy, Foggy Forest(ハードカバー)
 (きりのもりのもりのおく)

『洋書:The Foggy, Foggy Forest(ハードカバー)(英語)』
2008/8
Nick Sharratt (著, イラスト)

『和書:きりのもりのもりのおく』2008/08
ニック シャラット (著), Nick Sharratt (原著), 木坂 涼 (翻訳)


(感想)
 楽しい霧の絵本です。
 ページに厚手の半透明の紙を利用しているので、数ページ先の森の様子が、絶妙なモノクロ・グラデーションで透けて見え、霧深い森の雰囲気がとてもよく醸し出されています。
 奇数ページには、ほとんど黒い影絵だけが使われているので、実際に、ほのぐらい霧の森に浮かび上がってくる影を眺めながら、ゆっくり進んでいく感じがします。
 いちばん手前の影絵の下には、いつも、「きりの もりの もりの おく、そこに いるのは いったい だれ?(What can this be, in the foggy foggy forest?)」という問いが書いてあります。影絵のシルエットを見ながら、想像力を働かせ、記憶を探って答えます。
 ページをめくると……わあ☆妖精さんだった!
 偶数ページでは、さっきの影絵の正体がカラーで明かされます。これが、ニック・シャラットさんらしい、ポップな色使いのユーモラスなイラストの妖精さんや熊、お姫さまたちなので、とっても楽しい☆
 このようにして、ページをめくるたびに、次々と影絵、その正体……と童話の森の奥深くへと足を踏み入れていきます。奥深くに入り込んでいるはずですが、全然怖くはありません。だって影絵の正体は、怖くないものばかりなんですもの(いや、本当は、ちょっと怖いはずのも、いたかな?)。それに、透けて見える影もだんだん少なくなっていくので、神秘の森を覆う霧のベールが剥がれていっているような、森に受け入れられているような気もしてきます。
 そして最後に待っているのは……!
 とても明るくて(?)楽しい霧の絵本です。
 ところで、この本の英語版には「ハードカバー」版と「ペーパーバック」版があるのですが、半透明の用紙が使われているのは、「ハードカバー」版だけですので、購入時には注意してください。「ペーパーバック」には、まったく透けない用紙が使われています。とは言っても「ペーパーバック」版も、印刷で「ハードカバー」版の持つ、森の奥が透けてみえている雰囲気をよく表しています。ハードカバー版では描かれていない数ページ先までの影絵を、ペーパーバック版では、背景に描きこんでいるのです。それで、ページをパッと見た印象は、ほとんど同じに見えます。それどころか「正体」の方のカラーページは、背景の影絵が透けて見えない分、より鮮やかな色でとても美しく見えます。また紙の質も、より丈夫なので、幼い子への読み聞かせに利用するとか、大勢の子供が読む、などの場合には、ペーパーバック版の方が良いのかもしれません。それでもやはり、「ハードカバー」版の、「本当に」半分透けて見える感じや、紙の表面のざらざらした手触りと質感の持つ「珍しさ」が貴重なので、出来れば「ハードカバー」版を購入されることをお勧めします。(以下の商品リンクには、両方を入れてありますので、購入時には間違えないようご注意ください。なお日本語版は、2013年11月現在、半透明用紙を使用したものだけが販売されています)
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 ニック・シャラットさんの他の本、『まじょのキッチン(What's in the Witch's Kitchen?)』、『Once Upon a Time』に関する記事もごらんください。
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 ニック・シャラットさんは、他にも楽しいしかけ絵本を多数出しています。『パクパク、ゴックン、ゴロゴロ、ポットンえほん』は食べ物の商家の仕組みが分かるしかけ絵本。『Shark in the Park』『Shark in the Dark』は、望遠鏡で覗いたらサメに見えたものが実は……という驚きを楽しむ穴あきしかけ絵本です。
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 ところで、『きりのもりのもりのおく(The Foggy, Foggy Forest)』のような半透明の紙を使ったしかけ絵本はとても珍しいのですが、別の作家の本では、ブルーノ・ムナーリさんの代表的な名作絵本『きりのなかのサーカス』『闇の夜に』などがあります。これは芸術性も(価格も)高く、どちらかというと大人向けの、しかけ絵本だと思います。デザインの魔術師の演出する、ページの紙質を生かした遠近感、時間感覚をお楽しみください。

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